見終わりました | かんちくログ

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1発屋どころか、まだ1発も打ち上がってませんが。勝負は、これから。

見終わりました。あまちゃん全156話。よかった。面白かった。朝ドラ全部見たの、初めてかもしれない。規則正しい生活と無縁だからなあ…。

東北大震災を描いているということは風のうわさで知っていて、どう描いたのか気になりながら見ていて、その回が来るのが恐かったのだけど、誰も死ななかった(少なくとも画面に登場した人物は)ので、ほっとした。ほっとしたと同時にこれでよかったのかどうか、ちょっと悩んだ。現実はもっと大変だったはずだから。でもずっと「彼ら」を見ていたわたしは、誰も死なないでって願ってたし、フィクションではその願いをかなえることができる。そういう選択だ。現実の重さに立ち向かうのはきっとまた別の作品の役割なんだと思った。

いろいろ思い出したな。あのときわたしは家で一人で、ウェブ連載小説の第二稿を直していて、揺れて、なんだこれ?と思って、ツイッターでじわじわと状況が分かってきて、ネットとテレビにかじりついて、動揺して、精神状態が普通じゃなくなって、関西はほとんど被害がなかったけど、東京は大変そうで、きっと連載はしばらくストップだろうと思ってたらアップするという知らせが来て、アップされるということは、次を書かないといけなくて、こんな大変なときに小説なんか書いていていいのだろうかと悩みながら、でも仕事だから書いた。

それは、ずっと片思いだった主人公が、好きだった人に必死で告白して思いが成就するシーンだった。もちろんそれをそのとき書くことは前から決めていて、そうなるように話を積み上げてきたから偶然なのだけど、こんなときに、このタイミングで、そのシーンを書いていたことは一生忘れないと思う。まだまだ混乱が続く中、連載がアップされた。読んだ友達から「震災後初めて幸せな気持ちになれた、ありがとう」と言われたとき、わたしは何か大きなことができるわけじゃないけれど、何もできないわけじゃないんだ、と思った。

あまちゃんにも出てきた「震災婚」。ドラマ「最高の離婚」でも出てきたよね。わたしの周りにも、別にずっと独身でもいいやって言ってたのに、震災を機に結婚したくなったっていう子が何人かいたな。わたしもこれやっちゃったんだよなーって思い出した。

連載の中で、ですけどね。告白して両想いになって、一週間後くらいに、いきなり主人公、プロポーズされるんですけれども。あれのおかげで、作者、その後の展開どれだけ苦労したことか…!自業自得ですけどさ。そのときはそれがベストな解だと思ったんだけど。その判断がなんかもう。

でもあれはあれでいいんだ。それが連載というものだから。

震災後、しばらく書かない宣言をした作家もいた。わたしは連載中だったからそういうことを言ってられなくて必死で書こうとした。書けなくて書けなくて、全然さだまらなくて、ぶれぶれで、形にならなくて、心を使う職業のあやうさを思い知らされた。

この先も、こんなことがあるだろう。悲しかったりつらかったりするけれど、書き続けないといけない日が来るんだろう。少なくとも、わたしはこの先、父と母の死に出会うだろう。順序が逆だと、父と母を悲しませるから、それが理想の、幸せな、順番だ。わたしもやがて老いて苦しむんだろう。何十年後かもしれないし、明日かもしれない。大切な人ともたくさん別れて行くんだろう。たくさんの永遠の別れがあることも、この世界が桃源郷でないことも、自然が命を奪う恐ろしい相手であることも、ちゃんと分かっていれば、そのときがきても書き続けられるだろうか。来てみないと分からないけれど。来てみたら、そんな覚悟なんて、あっさり吹き飛ばされるんだろうけれど。

少なくとも次は、小説なんか書いても役に立たないし意味がないんじゃないだろうか、とは思わない。それってたぶん、わたしなんか生きてても役に立たないし意味がないんじゃないだろうか、というのと同じだ。

どれだけ危険な目にあっても、元の仕事を続けたくて、元の家に戻りたい人たちのことが最初は理解できなかった。わたしは住むところなんてどこでもいいって思ってたから、身軽になってさっさと安全な場所に移ればいいのにって思ってた。

でも、小説に置き換えたとたんに、分かった。危険だから小説書くのやめなさい、って言われても、書くだろうな。もっと安全な仕事紹介してあげるよって言われても、書いても売れないし意味ないよって言われても、書くだろうな。

もうすぐ3年が経ちますね。自分にできることをわたしのやりかたでやっていこうと思います。


さて、ドラマ全話見たし、廃人脱出して、働きますか。