24時間眠らない街、新宿。東洋一の歓楽街と呼ばれる歌舞伎町のネオンサインも魅力的ではあるが、お酒を殆ど飲まない私にはあまり縁のない場所。それでも煌めくネオン街を撮りたくて何度か歌舞伎町界隈を歩いた事はある。そう言えばふっと懐かしい記憶を思い出した。20代前半の頃、歌舞伎町の映画館で、深夜に『地獄の黙示録』を観た。一人ではなく誰かと一緒だったがその相手までは思い出せないが何処かの店で飲んだ後、終電に間に合わなかったため、映画館で一夜を過ごす事となったのだと思う。映画は2本立てだったと思うがもう一つの作品は全く思い出せないので多分眠ってしまったのかも知れない。
翌朝5時頃に映画館を出るとそこら中に空き缶や紙切れなどのゴミが散乱し、烏が数羽ごみ溜めに集まり餌を漁っていた。眠気が強く残る足元は酔いの影響もあってふら付きながら駅へと向かった。建ち並ぶ高層ビルの合間を縫って風が「ゴオッ」と音を立てて吹き抜けて行った。
この薄明りのような淡い思い出が私の歌舞伎町(新宿)初体験である。東京のような大都会の魅力と言えばやはり超高層ビル群だ。日中はあまり気にならない風景も陽が落ちて辺りが暗闇に包まれるとその景観が一変する。街全体がまるでライトアップされたかのように煌々と光り輝く異世界へと変貌する。三脚にカメラを固定し、この壮大な世界を撮る為だけに用意した超広角レンズの出番である。夜景を撮る際に愛用しているレンズはLAOWA14mmの単焦点レンズ。電子接点がないため、ピントも絞りも全てマニュアル。そして何より気に入っているのは絞り羽5枚という点だ。
夜景の醍醐味と言えば自然の光と人工の光が織りなす『非日常の世界』である。その神秘的・幻想的でもある雰囲気は肉眼では決して見る事の出来ない光のアート。10本の光芒(光条)が槍先のように鋭く伸びる様は圧巻の美しさである。私が夜景撮影に憑りつかれたのもこの光芒の存在だ。都心であればそこら中に高層ビルが建ち並んでいるけれど私のお気に入りは都庁のある西新宿界隈。自分の最も好きな場所でお気に入りの被写体をカメラに収める時、至高の時間を味わう事が出来る。



