優しい光に包まれて。 | プールサイドの人魚姫

プールサイドの人魚姫

うつ病回復のきっかけとなった詩集出版、うつ病、不登校、いじめ、引きこもり、虐待などを経験した著者が
迷える人達に心のメッセージを贈る、言葉のかけらを拾い集めてください。

 

 

 

 このポートレートは昨年10月下旬、浜離宮恩賜庭園へコスモスを撮影に行った際に撮ったもの。この時期と言えば心臓の3回目の手術も無事に終わり、退院後自宅に戻ってリハビリを続ける毎日を送っていた頃であったが、なんとしても秋桜を撮りたいという溢れ出る撮影意欲を抑える事が出来ず、無茶を承知で撮影に出掛けた。
 この時、5回目の入院がその先に待っている事など到底考えもしなかったが、正直なところ、退院1週間が過ぎた辺りから身体に異変が生じ始めていた。それはこれまで経験した事の無いような酷い息切れであった。安静にしていれば問題なかったが、ほんの少し歩いただけで今にも心臓が破裂するのではないかと思うほどの呼吸困難…。いま思えば、それは救急車を呼び緊急入院するレベルだった。
 それでも、手術は成功しているのに何故こんなに苦しいのか疑問ばかりが頭を過り、もう少し時間が経てば心臓も落ち着くだろうと、入院の事など一切考えていなかった。そんな状態の中、重いカメラを持って撮影に出掛けたのであるが、それはまさに自殺行為に等しかった。撮影中気を失って倒れなかった事が不思議なくらいである。
 都営大江戸線の築地市場駅から庭園まで普通なら徒歩で僅か7分ほどの距離であるが、数m歩いては休みとそれを繰り返しながらだったため、20分も掛かってしまった。撮影の前に呼吸を整えるため何度も深呼吸をして心臓を落ち着かせた。この時、私の心臓は重篤な心不全状態だったのは言うまでもない。心機能は20%まで落ち込み呼吸が止まる寸前だったのである。そんな身体で写真を撮ろうなどと、私はとうとう「写真バカ」になってしまったようだ。命が尽きたら大好きな写真はもう撮れなくなる…。こんな当たり前な事も重々承知で出掛けたのだから何が起こっても全ては自己責任。そしてこれは最も反省しなけければならない私の大きな欠点でもある、つまりは『わがまま』の境地。だから入院する度に看護師や担当医に酷く叱咤され、まるで幼い子供である…。
 庭園には夏の名残りがそよ吹く風に乗って花々の隙間を駆け巡っており、天気も上々で花を撮るには絶好の機会であった。こちらの眼鏡を掛けた品の良さそうなお嬢さんの前方にはおそらく彼氏さんと思われる方が一眼レフを構えてパシャパシャとシャッターを切っていた。横顔からでもはっきりと見て取れるその少しはにかんだ様な笑顔がとても素敵だったので、ピンクの花を全面に入れて私もパシャッと1枚。
 コスモスは兎も角として、普段滅多に撮る機会に恵まれない人物写真が撮れたので、息苦しさも忘れてその日は無事に帰宅。そしてその数日後に既に記事にした通り、5回目の入院となった訳である。この時の事を深く反省し、今はかなり慎重になり撮影回数も激減している。