2010世界バレー、32年振りのメダルを手中にした全日本女子バレーチームが世界と肩を並べた瞬間だった。
世界の頂点に立つブラジルとの一戦で、フルセットまでブラジルを追い込みながらも、決勝戦への夢は費えてしまったが、3位決定戦の対アメリカ戦ではその悔しさをボールとネットにぶつけた執念の勝利だったが、世界ランク2位のアメリカにも意地があり、追いつき追い越す連続は、アメリカの根負けを象徴するような試合内容だった。
全日本の選手たちは先日のブラジル戦で精魂果てるほどの激闘を演じている。連続2セットを奪取し、勢い付く日本に大金星が現実となる予感がコートを駆け巡った。ブラジルの選手たちに焦りの色が濃くなり始めたのは、3セット辺りからだろう。
ブラジルチームも王者のプライドをかなぐり捨ててボールに喰らい付く執念を見せた。足でレシーブするほど、彼女たちも追い込まれていたのである。
王者ブラジルとフルセットを闘い抜くことは、全日本が大きく成長していることを物語っていた。試合の行方を最も左右するのがミスである。ミスの連続だけは避けなくてならないし、選手自身もそれは充分心得ている。しかし百戦錬磨の選手であってもミスを犯す。
先のプロ野球日本シリーズで、ペナントレースでは3位のロッテに中日が激闘の末敗れたのも、やはりミスがきっかけだった。ベテランの和田が送球したボールがコースを大きく外れてしまい、ランナー進塁を許してしまう。
緊張の糸が張り詰めていたピッチャーのリズムが狂い始めたのは、その直後の事だった。今日負けても明日がある、という余裕のない短期決戦では、土壇場での力が大きく影響し、試合を決めてしまう事は多々ある。
しかし、全日本のチームはミスをフォローする抜群のコンビネーションと、ミスを引き摺らない精神力、そしてミスの次にはチャンスを得点へと確実に活かすチームワーク。選手個々が自分自身の役割を確実に果たして行く責任感。
これらがバランス良く保たれて完成されたバレーボールを生み出して行くのであろう。厭世観が蔓延する日本に元気をもたらしてくれるもの、これこそがスポーツの力であり、役に立たたず、当てにならない政治家などより頼もしいアスリートの活躍が、日本の栄養源になることは間違い。
さあ、世界の頂点が見えて来たではないか、次は世界一を目指す。ロシア、ブラジルの選手たちが最も恐れる東洋の魔女がここに復活したのである。銅メダルが金に変わる日、それが現実となる日も近いことだろう。