モグラに乾杯! | プールサイドの人魚姫

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うつ病回復のきっかけとなった詩集出版、うつ病、不登校、いじめ、引きこもり、虐待などを経験した著者が
迷える人達に心のメッセージを贈る、言葉のかけらを拾い集めてください。


プールサイドの人魚姫-モグラ

 チリ鉱山で起きた落盤事故で、地下700mに閉じ込められていた作業員33人の救出作業が無事終了した。

 前回の記事でも書いた通り、事故発生当初は救出に2ヶ月以上かかるのではないかと言われており、現地では作業員たちの身体と精神面での耐久力等が懸念されていた。彼らをあらゆる面からフォローする為に、地上では作業員たちの家族や友人、関係者などが集まり夜を明かしての掘削作業を祈る思いで見つめていた。

 この落盤事故をドキュメンタリー映画とするために、多くの映像機器まで持ち込まれたが、ラストシーンが歓喜と喝采のハッピーエンドで終わったことで監督も胸を撫で下ろしていることだろう。

 しかし、喜びでかき消されてしまいがちな落盤事故そのもの(真実)を忘れてはならない。この事故の背景に隠されているチリの経済事情、貧困問題などがある。

 チリの経済はその殆どが日本とは正反対に輸出で賄われている。事故の起きたチリ北部の主要産業は鉱山である。地下資源に恵まれ、金属鉱物が最も豊富であり採掘量は世界トップクラス。

 そのような中にありながらも、現場で働く作業員たちを取り巻く労働環境は決して恵まれているとは言い難い。

 地下深く穴を掘って行く作業には当然ながら危険が伴う。落盤事故がいつ起こっても不思議ではないような環境下で、最も重視しなければならない作業員たちの「安全」は果たして充分なのだろうか。

表面に現れる彼ら作業員たちの口からは不満そのものは伝わっては来ない。家族を養うためには選択肢が他にはないこの国の労働者たちの悲鳴にも似た叫びが、わたしには聞こえて来てしまうのだが。