日本列島の約半分が梅雨前線に覆われ、本格的な雨のシーズンに入った。
雨の嫌いな人にとっては憂鬱な季節でもある。特に主婦を悩ますのが洗濯物。湿気が多いので中々乾かない。
乾燥機付き洗濯機があれば別だが、雨の日が続けば家の中に干さなくてはならない。しかし洗濯物はやはり太陽の光で乾かすのが一番だ。
太陽光には弊害もあるが、それ以上に生活する上で必要な栄養素が多く含まれている。
最近ではあまり見かけない?相合傘の絵。小・中校時代はかなり流行ったと思う。教室の黒板に誰かが冷やかしで相合傘のカップルを描く。
それを見た本人たちは顔を真っ赤にしながら、必死で否定したものだ。
こんな経験を持った人も多いだろうと思う。わたしも数回描かれたことがあったが、意中の人ではなかったのでかなり憤慨した記憶がある。
小学1年生の時の思い出に今でも克明に覚えている雨の日の情景がある。わたしの家には子ども用の傘と長靴がなかった。
だから雨の日は大人用の傘を指し、大きな黒い長靴を履いて登校したが、大人用の傘は幼い子どもにとっては重すぎた。
長靴も同じで、重く歩き辛かった。下駄箱には赤や黄色など色とりどりの長靴が並んでいる。傘も同じように花壇の花のように見えた。
そんな中、わたしの長靴と傘だけが黒くとても汚れて見えた。
7歳になったばかりの子どもたちの目には、まだ人の持ち物などにはあまり関心を示さなかったのだろう。特に何か言われることもなかった。
その日は午前中晴れ間が覗いていた。1年生の授業が終わるのは早い。何の勉強をしたのか理解もしない内に帰りの時間になる。
教室の窓から外を見ると雨が降っていた。傘を指さないとかなり濡れてしまうほどだ。
クラスの子たちも当然傘を持って来なかっただろう。しかし誰も慌てる様子はない。親が迎えに来てくれることを知っているからだ。
わたしは誰も迎えに来ないことを既に知っていたので、濡れて帰ることを覚悟していた。
校門に次々と迎えに来る母親たちの姿が見える。子どもたちは親から傘を受け取り、家路に着く。
「雨雨降れ降れ母さんが 蛇の目でお迎え嬉しいな…」この歌が嫌いだった。
小雨になるまでもう少し待っていようか、それとも思い切って走って帰ろうかと悩んでいた。
そんな時だった。「神戸君、一緒に帰ろう」後ろから声がした。
同じクラスで同じ町内に住む畳屋の浩子ちゃんだった。
黄色い傘をすっと差し出し微笑んだ。
その横にいた母親を見上げると、ふくよかな顔をさらに丸くして頷いていた。
わたしが初めて経験する相合傘だった。
大きなランドセルは幼い子どもの背中をすっぽりと隠し、赤と黒が隣同士隙間のないほど寄り添って、6月の雨の中に消えて行った。