人間の味覚には個人差があるにしろ、曖昧な部分が多い。舌の4ヶ所でそれぞれ甘み、苦味、辛さなど感じとるように出来てはいるが、初めて口にする食材などは一度食べただけでは覚えきれるものではない。何回か食べてその味覚が脳にインプットされる。今回起こった「豚肉混入ミンチ」は消費者の持つ味覚の隙間をついた事件であると言える。
わたしはそれほど食通でもないし、詳しくもないから、この牛肉と豚肉が混ざった物を食べて、豚か、牛かと問われても自信を持って答えることは出来ない。
消費者は安い物を好む。いつだったか「県庁の星」と言う映画を見たが、地方のスーパーマーケットの舞台裏をリアルに描いたドラマだった。実にポイントを抑えた映画作りだと感心して見ていた。
食品加工会社に関わらず、食を提供する業者に運命のように定められた、消費期限、賞味期限。倉庫に行けばいつ届いたかも解らない在庫の山。廃棄するには忍びないので、加工してごまかし、商品として出荷する。少しでも売り上げにつなげようととする業者の苦肉の作。
そんな事など知らない消費者は本日のお買い得として、夕食の材料やお弁当の具として買い込んで行く。スーパーの店頭に並んだ食品を見て、貴方は果たして疑問を持つだろうか?
わたしが15歳の時、半年ほど豚の飼育を経験したことがある。豚はデリケートで実に臆病で、綺麗好きである。豚の面倒を見るとなれば、それなりの愛着がなくては続かない。暫く豚の観察をし、豚の行動をノートに書き移す。人間が食べ遺した残飯を大きな釜に入れ大きな板でかき回し、ドロドロのお粥状態になるまで沸騰させ熱を覚ました後、餌として与える。現代ではそんな効率の上がらない作業をする事はないだろうが、豚の身体を束子で擦り綺麗に掃除をしてあげると、豚が嬉しそうな顔をしてなついて来るのである。
夏場は特に注意が必要。食中毒で死ぬ場合があるからだ。実際、早朝に豚小屋へ行った時、2匹の豚が舌をだらりとだして死んでいた姿が今でも忘れられない。死因は食中毒だった。おそらく与えた餌が腐っていたものと思われる。
見た目だけで判断すると、見えない大切な部分を見逃している事が多々在る事に気付く。食材の命は新鮮であるが、それは冷凍庫などがなかった時代の話。食材ほど誤魔化し安いものはなく、この混入ミンチ偽装工作も氷山の一角でしかいない。