父の日は空からやって来る。 | プールサイドの人魚姫

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うつ病回復のきっかけとなった詩集出版、うつ病、不登校、いじめ、引きこもり、虐待などを経験した著者が
迷える人達に心のメッセージを贈る、言葉のかけらを拾い集めてください。


父の日 昨日の記事に沢山の励ましのコメントありがとうございました。余りにも急なことだった為、珍しく混乱してしまいましたが、皆様のコメント或いは訪問して下さった人たちに勇気を頂いた気がします。わたしには幸運の女神がついているようで、まだまだ死ぬ訳にはいきません。やりたい事の半分も終わっていない状況では死に切れませんから。
母の日ほど、父の日は存在感が薄いような気がしますが、父の働く姿を子どもはあまり見かけるチャンスがないので、父親が外でどんな仕事をしているのか、それは日常の会話の中でしか知ることは出来ないでしょう。プレゼントももちろん大切ですが、それ以上に会話は重要です。
父の日のプレゼントとしてお酒を上げた人も多いかと思います。わたしと父に関しては過去に何度か書き綴って来ましたので、想像は付くと思いますがこれから話す内容についてはわたし自身もつい最近知ったばかりです。
わたしと父が一緒に生活した時間は非常に短かいものでした。その中心は小学生時代に凝縮されています。アルコール依存症で酒が切れると手が振るえ、字をかくと本当のミミズ状態でした。最初に届いた葉書が府中刑務所の壁の向こうからでしたが、その葉書にはお酒を止め、一生懸命働き、美味しい物を沢山食べさせてやると書いてありました。もちろんわたしはそれが本当だったらどんなに幸福だったろうと思っていました。
父は酔うと人格が変わってしまい、鬼のような形相になり襲いかかってきます。それもわたしだけに対してでした。よそ様には絶対手を出したことがないのです。わたしの喧嘩相手は一番身近な父でしたが、狂った父をとり抑えることなど子どもには到底無理。殴られ蹴られしますが、わたしなりに抵抗はしました。
酔っている時の自分を父は何も覚えていません。顔に痣を作って学校へ行くと、当然クラスメートや先生が尋ねてきます。「神戸君その傷どうしたの?」わたしは正直に答えず「転んだ」と答えます。常にその繰り返しでしたが、いずれ父の行動は学校中に知れ渡ることとなりました。そんなわたしを不憫に思った担任の先生が養子に欲しいと相談があった時はかなり驚きましたが、わたしはきっぱりと断りました。何故ならわたしには父親がいるからです。わたしの心臓病が悪化したのも責任は父親にありました。もっと早く医者に診せていればそれほど酷くはならなかったでしょう。酒を飲んでいない時の父は非常に優しく、またお人よしでした。人からの頼まれ事は断ったことがありません。その為、不本意な結果を招き手錠を掛けられたりと、父自身もまた波乱の人生を送り33年前、42歳の若さでこの世を去りました。
人は死ぬと生前一番慕っていた人の所に魂となって現れることがあると言います。わたしは一回目の手術を19歳で受けました。父が亡くなって一年が経とうとしていた時です。かなり以前に短編小説「冬の蛍」をアップしましたが、覚えている方もいると思います。あの作品は半分ノンフィクションです。重病の心臓病を抱えた少年と父親の物語ですが、少年に付き添っていた父は既にこの世の者ではなかった…。少年が一番欲しがっていた「蛍」をプレゼントしてあの世に帰っていく父。そして奇蹟が少年の身に起こる。
手術の支度を一人で整え、大き目のペーパーバックに必要な物を詰め込んで静岡市立病院の門をくぐりました。春の穏やかな日差しに包まれた病室が、静かにわたしを迎え入れてくれます。6人部屋の一番窓際のベッドがわたしの仮の宿。しばらくここで過ごす事への恐怖感はまったくありませんでした。心臓の手術を受ける少年にしては妙に落ち着いて見えたことでしょう。
そして検査に追われる日々が続きました。そしてこの時、故郷の藤枝である事件が起こっていたのです。亡き父が生前わたしに親らしいことをひとつもしなかった事は誰もが知ることでしたが、そんな父の愛情が実は非常に力強いものだったと知ったのです。
藤枝に住む親戚の伯母さんにある夜異変が起こりました。何と父の亡霊が現れ、その伯母さんに「俊樹が心臓の手術を受けるため入院しているか早く行ってやってくれ」と伯母さんに頼んだのです。それは毎晩続き、そして日ごとに布団の上に覆い被さって来、伯母さんは金縛りに合い、身動きが取れない状態でした。あまりにもしつこいので「そんなに何回も出てくるなら行ってやらないよ」と父に向かって怒鳴ったそうです。するとその次の晩から父は現れなくなったそうです。この話しを聞いたのは2年前の事。それまでわたしは父がわたしを本当に愛していたのか心の奥では不信が募っていましたが、この話しでわたしは鳥肌がたち、父の愛情が死しても別な形で現れたのだと知った時、大きな愛に包まれている自分を知ったのです。窮地に立たされているわたしをきっと父はこの広い空のどこかで見守ってくれていることでしょう。
父の日に何もプレゼントが出来なかったわたしですが、わたしを活かしてくれた父はやはりどんな言われ方をしても私にとっては偉大な存在であるのです。ありがとう、親父。天国の酒は美味しいですか。天使を追い掛け回す父の姿が見えてくるようです。