パンダより愛を込めて。 | プールサイドの人魚姫

プールサイドの人魚姫

うつ病回復のきっかけとなった詩集出版、うつ病、不登校、いじめ、引きこもり、虐待などを経験した著者が
迷える人達に心のメッセージを贈る、言葉のかけらを拾い集めてください。


パンダ わたしが初めてパンダを見たのは18歳の時。職場の先輩が東京、上野美術館で開かれている「安井賞展」を見に行くと言うので同行させて貰った時。安井賞を分かり易く説明すると、画壇の芥川賞と言っておこう。洋画家の登竜門であった。昭和32年に発足したこの賞も平成8年第40回を最後に幕を閉じた。洋画の愛好家であればその存在がいかに輝かしいものであったかはご存知の筈。静岡駅を出発した時小雨が降っており、あいにくの天気ではあったが、生まれて二度目の東京という事もあり心は曇った空とは裏腹にすっきりと晴れ渡っていた。一度目の東京は小学4年だった、それも父の出所を迎えに行くという、まるでドラマのシーンを演じているような錯覚に満ちたものだった。昼頃東京駅に着くと、春の嵐が聳え立つビル群の合間でわたし達を迎えてくれた。地下鉄を乗り継いで上野まで数分。美術館は上野の森公園の中にあり、そこえ辿り着くまで結構歩いたと記憶している。飛び跳ねる雨水でスニーカーやジーンズはびしょ濡れだった。初めて見るその「安井賞」に入選した絵画の群れ。その頃のわたしにそれらの絵(安井賞)に入選した作品がどれだけ凄いのか想像がつく筈もなかった。ただ、先輩は長い間油絵を描いており、静岡市で開催されるコンテストに何度も入選、大賞を取っているので日頃から芸術について、特に絵画についてはよく話しを聞かせてくれた。100号を超えるキャンパスがぎっしりと並び、どの絵も特長があり圧倒される作品ばかりであったが、その中で最も注目したのが「放課後」と題されたモノクロ作品であった。美術館を後にして次に向かった場所は上野動物園。雨だったので園内には殆ど人影が見えず、のんびりそれぞれの動物をじっくり観察する事が出来た。ニュースではパンダが大人気で、「立ち止まらずに見てください」というアナウンスがしきりに流れていたが、全く人の気配がない動物園には時折鳥の鳴き声が雨音に混じって聞こえるだけだった。ガラス越しにパンダを見る。目と鼻の先、一メートルも離れていない距離に実に奇妙な生き物が横たわっている。まさにぬいぐるみだった。地球には人間がまだ知らない生物がきっと何処かで息を潜めて生息しているのかも知れない。パンダの動作があまりにも人間の赤ん坊に似ているため、もしかすると人間の祖先はパンダでは?などと思ったりした。生態系が破壊され、絶滅寸前の動物たちが今この地球上で悲鳴を上げている。それを救うのも人間次第。パンダを愛するように全ての生き物に優しい環境を作って行くのがこれからの人間の使命だろう。