私が金沢21世紀美術館に嵌まった理由❹ミュージアム・クルーズ・プロジェクト | 市民が見つける金沢再発見

私が金沢21世紀美術館に嵌まった理由❹ミュージアム・クルーズ・プロジェクト

【金沢(金沢21世紀美術館)】

平成16年(2004)10月9日にオープンした金沢21世紀美術館では、翌月の11月2日(火)より翌年の3月4日(金)までの約4ヶ月(実施日数57日間)「まるびぃとの遭遇」と銘打ち市内の小中学生4万人を招待するという前代未聞のプロジェクトが開催されました。翌年から4年生に限定し続けられた企画で、現在も市民ボランティア(クルーズ・クルー)が集められ開催されています。

 

市民ボランティア(クルーズ・クルー)は、初回は112名、2回目からは40名~80名が参加し、その都度公募で集められますが、1回目は、平成16年度文化芸術拠点形事業の採択事業になり、それなりの協賛もつき有償(半日1000円・全日3000円)となりますが、2回目からは、協賛が付かず、アゴ足なしの全くの無償で、市民ボランティア(クルーズ・クルー)の善意と暇つぶし、そして勉強好きが頼りです。

 

この条件で一定の人数を集めなければならない美術館の教育担当者の執念と下向きの努力に頭が下がります。最近、嬉しく思うのは、10数年前に招待された当時の小中学生の中から市民ボランティア(クルーズ・クルー)に加わるようになっています。 

 

 

(1回目の市民ボランティア(クルーズ・クルー)の人員構成は、40代~50代が60%で、次が30代の14%、男女比は女性91%、男性は9%、主に転勤族の主婦が目立ち、他は地元の主婦を含めると66%多く、登録人数は135人、参加人数は112人で、プロジェクトに参加して大変有意義だったと答えた人は78%でした。)

 

 

2004年度地域創造レター1月号-No.117

石川県金沢市 金沢21世紀美術館 「ミュージアム・クルーズ・プロジェクト」

https://www.jafra.or.jp/library/letter/backnumber/2004/117/5/1.html

 

 

クルーズ研修は、金沢21世紀美術館や記念展の概要、作品見学や鑑賞活動の目標や鑑賞方法と覚える事も多く、後に知る事になる対話型の鑑賞「作品の解説ではなく、子ども達との共感と共有を目的としたコミュニケーションが目的で、元々私は解説が志望で、現役の観光ボランティアガイドです。当然、作品の意図や作家の経歴まで知ろうと勝手に勉強したりしていて、子ども達との意思疎通をする方法を学んでいなかったのに気付いたのが、プロジェクトスタートの11月2日ギリギリで、何をして良いのか分からず、その日は見学と決め、美術館に行くと大阪から来たという同年齢の看護師さんだったか保母さんだった忘れてしまいましたが、子ども達と手を繋いだり、普段の言葉で接しているのにビックリしたのが思い出されます。

 

クルーズの研修期間は、平成16年(2004)10月9日、美術館OPEN前10月4日(月)~10月7日(木)の4日間続けて行なわれ、美術館OPEN後の10月18日から11月15日の月曜日に行われ、翌年の1月11日(火)に開催されています。)

 

 

子ども達の鑑賞には、当時は参加した市民ボランテイア(クルーズ・クルー)は誰も知らない対話型鑑賞法が用意され、1回目では、市民ボランティア(クルーズ・クルー)が各展示室で待機する「待ち受け型」が採用され、2回目より市民ボランティア(クルーズ・クルー) 進行役になり、10人前後の班(グループ)に分けられた児童を各展示室に案内するギャラリーツアー型がコロナ禍になる前まで10数年続けられ、ここ2年間は「待ち受け型」に改められています。

 

対話型鑑賞法とは、従来の作品を作者の経歴や美術史的考察で価値づけ、既存の美術作品解釈知識鑑賞者一方的に解説するのではなく、鑑賞者グループ作品を観た時の感想を重視し想像力を喚起しながらグループの仲間とのコミュニケーションをすることで、グループ内の対話交流により作品と鑑賞者コミュニケーションを通じた鑑賞法です。対話型鑑賞法は、金沢21世紀美術館では開館オープン時に、市内の小中学校の生徒を全員招待し、この方式を取り入れ、美術館の教育担当者と市民ボランティアにより実施され、翌年より小学校4年生を対象のミュージアム・クルーズとして継続され、以来、現在までの18年間、金沢21世紀美術館コレクション展を市内の小学4生を対象に実施されています。)

 

 

拙ブロブ

秋のクルーズクルーが始まります。

https://ameblo.jp/kanazawa-saihakken/entry-11633702957.html

 

この対話型鑑賞法は、従来の作家の制作意図を解説するのと違い、観る側が様々な受取り方を話し合う鑑賞法で、子どもの思考能力、対話能力向上を目的に実施される美術作品鑑賞法で、子ども達は、この対話型鑑賞法により、対話することで新たな発見や気付きがあり、また、友人でも興味の持ち方考え方違い気付かされます。

 

対話型鑑賞は従来のギャラリー・トークとは違って、進行役の重要な役割は、知識や情報の提供ではなくて、鑑賞者の発言を引き出したり、その発言を他の鑑賞者の発言につなげたりして、鑑賞者のコミュニケーションの輪を拡げたり深めたりすることです。そのため進行役は基本的に知識や情報の提供はしません。)

 

 

もともと、この「対話型鑑賞」は、1980年代の後半からアメリカのニューヨーク近代美術館(MoMA )で開発されたもので、それが日本に導入され川村記念美術館や水戸芸術館などで様々な形に変容しながら「対話型鑑賞」が、各地の美術館、学校教育機関等で実践されていますが、金沢21世紀美術館では、オープン以来18年間、毎年、試行錯誤をしながら進めています。

 

 

金沢21世紀美術館では、美術館(教育担当者)の指導の下、進行役(クルーズ・クルー)鑑賞者(子ども達)に、配布されるガイドマップに、以下の記述があり、探検(クルーズと館内を巡る)前に再度確認し、探検中の会話進行役に任されています。

 

 

《出発したら

作品の色 形 材料

 じっくり見よう!

 感じたこと考えたことを

みんなで話そう!

《3つの約束》 

 1,歩いて行動しよう

 2,作品にさわらないで見よう

 3,声の大きさに気を付けよう

 走らない・作品に触らない・大声を出さない

 

一般的な対話型鑑賞法では、質問は下記の3つとされています。

1.この絵の中で、どんなことがおこっていますか? 

2.あなたは、何を見てそう言っているのですか?   

3.もっと発見はありますか?

(この3つの問いかけは、「学力をのばす美術鑑賞 ヴィジュアル・シンキング・ストラテジーズ」によれば、この鑑賞法の共同開発者である認知心理学者のアビゲイル・ハウゼンの研究をもとに、様々な試行錯誤の末に到達した究極に絞り込んだ形の質問だとされています。)

 

 

私と子ども達とのファーストコンタクトは≫

私は、ミュージアム・クルーズ・プロジェクトでやってくる子ども達と初対面の時、「美術は算数や国語のように答えは1つではないがや、そやからみんな違った意見があっても良いがやぞ、学校と違ごうて、間違えたらどうするがや!なんて考えなくてもいいぞ、今日は、思った通り、感じたままに発言してもいいぞ!!」といいます。

(どうも子ども達は「感じたこと」が言葉にならないようで、熱いとか冷たい、好きや嫌いや、カッコいいとかダサい、など例を上げ話すと、笑いも出てなごみ打ち解けています。)

 

 

学校の勉強から頭を切り替えると、4年生は、素直な子も多く、嬉々として発言します。とは言っても「現代アート」を理解している分けではなく、聞けば!!作家の意図とは殆ど違いますが、子ども達は自分が感じたままを言ってくれます。もっとも、大人でも、学芸員でも、よっぽど経験が深く、勘の良い人でない限り、予備知識も無く、始めて見ただけで作家の意図するところが分かるはずもありませんが・・・。

 

参考youtube

教えない授業➀対話型鑑賞法とは(1~3)

https://www.youtube.com/watch?v=9sfdVhy677A

 

(子ども達は、頭が固まっていなので、固定観念も余りなく、美術館で、“自由にしゃべっていい”と云うと、平生、発言をしない子も活き活きして発言する様になります。大人では“この様”には行きません。“現代アートの一部には、人間の理性を否定し、既成の秩序や常識に対する否定、攻撃、破壊を大きな特徴だ””現代アートは価値観が多様でそれぞれ理屈があり自分には共感できないもの“という潜在意識もあり、面倒臭さも手伝って抵抗する人、また、分かったような顔をしたりする人もいますが、こんな事は知らなくても生きていけるとばかり、分からん!!理解出きん!!と云って”逃げている人、開き直る人“と様々で、自分が分からんからと言って、子ども達や観光客にも面倒臭さいから、「金沢21世紀美術館は“分からんから行くな”」という、観光ガイドもいるらしい・・・。)

 

 

5年後の社会教育実践研究センター事例報告より

事例名:子どもたちとともに、成長する金沢 21 世紀美術館

https://www.nier.go.jp/jissen/chosa/rejime/2008/08_kankou/05_chapter2-3.pdf

 

つづく

 

参考資料:金沢21世紀美術館のHP・ 金沢21世紀美術館パンフ・2007年から私が書いたり集めた資料・フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』など