「見たくない数字」を見せる仕組みである会計帳簿 ~「プロスペクト理論」から考える適時・正確な記帳 | 東京府中の税理士、金成祐行の日々の気づき

東京府中の税理士、金成祐行の日々の気づき

東京府中の税理士法人かなり&パートナーズの経営や、強度行動障害の状態にある自閉症の息子との生活など悪戦苦闘ですが、日々気づいたことを書いております。

◇行動経済学から説明する適時・正確な記帳の効果


私はこれまで、
会社自らが、適時・正確な記帳をすることが

会社を強くする理由について、
心理学や制御理論の観点から書いてきました。

 

 

 

さらに調べてみると、
”行動経済学”にも、
大変興味深い理論がありました。

それが、

👉「プロスペクト理論」

です。



◇人は「損失」を見ることが苦手

プロスペクト理論は、
ノーベル経済学賞を受賞した、

心理学者ダニエル・カーネマン(Daniel Kahneman)

らが提唱した理論です。

この理論では、

👉人は利益を得る喜びよりも、
損失を被る苦痛を、より強く感じる


ことが明らかになっています。


つまり、人は無意識に、

 

👉損失を直視することを避けたくなる

 

のです。



◇ダチョウ効果という現象

この心理を説明するものとして、

👉「オーストリッチ効果(ダチョウ効果)」

という現象があります。


名前の由来は、
危険を感じたダチョウが、

砂に頭を突っ込んで現実から逃げる、

という言い伝えです。

※実際のダチョウの行動とは異なりますが、

この心理現象の比喩として定着しています。


例えば、
 

株価が大きく下落すると、
証券口座を見るのが嫌になる。

健康診断で体重が増えていると思うと、
体重計に乗らなくなる。

使いすぎたと思えば
クレジットカードの明細書を、
開封したくなくなる。

こうした経験は、
皆さんにもあるのではないでしょうか?
 

 

これは、
不都合な現実を見たくないという、
人間に共通する心理なのです。



◇会社経営でも同じことが起こる

会社経営も、
例外ではありません。

業績が悪くなってくると、
試算表を見るのが嫌になる。
数字を確認しなくなる。

そして、
気づいた時には、
資金繰りが深刻な状況になっていた。

残念ながら、
このようなケースは、

決して珍しいことではありません。


倒産は、
ある日突然起こるものではありません。
小さな異変を見逃し続けた結果として、
起こることが多いのです。



◇適時・正確な記帳は「早期警戒システム」

だからこそ、私は、

👉適時・正確な記帳を、会社自らが行うこと

が大切なのだと思っています。


日々、自分の会社自ら、

会計帳簿を記帳する。
そこから導かれる数字を見る。

そして、
会社の現在地を確認する。
利益はどうか。
資金繰りはどうか。
粗利益率はどうか。

自分の会社に、

会計帳簿があることで、

社長や経理担当者が、
”数字”という事実に向き合うことができ、
小さな異変に気づき、
早い段階で軌道修正ができます。


適時・正確な記帳は、
単なる面倒な、

”事務作業”ではありません。

会社にとっての

 

👉「早期警戒システム」

なのです。



◇会計アウトソーシングで失われるもの

最近では、記帳業務を、

すべて外部へ委託するサービスも増えています。

面倒な「事務作業」である会計を、

”まるっと”外部に委託してしまうのです。


しかし、
会社から記帳業務が無くなると、
社長や社員さんが、

数字に触れなくなってしまいます。

 

その結果、社長は、

業績があまりよくないと感じていれば、

 

多くの場合…

 

数カ月遅れで、ようやく、

アウトソース会社から送られてきた試算表は、

 

「オーストリッチ効果」(「ダチョウ効果」により、

 

👉あえて見ない

 

と言うことになることが多いのではないでしょうか?


つまり、


👉「見たくない現実」から距離を置いてしまう

 

危険性があるのです。


つまり、

アウトソースにより、
会社から失われるのは、
単なる”事務作業”ではありません。

経営者として、
現実と向き合う力である、

「早期警戒システム」

なのです。



◇現実を仕組みが、会社を守る

心理学ではセルフモニタリング。
制御理論ではサイバネティクス。

そして、

行動経済学ではプロスペクト理論。

異なる学問分野が、
学際的に、

共通して教えてくれることがあります。

それは、

自分で会計帳簿を記帳することにより、

👉「現実をタイムリーに把握し、

必要な修正を続ける人や組織ほど、

安定して成果を上げる」


会社自らが、

適時・正確に会計帳簿をつけることは、
会社を倒産から守るための、
最も重要な経営習慣の一つです。

 

先日も、

ある知り合いが、業績向上に伴い、

「税理士に”まるっと”経理代行を依頼した」

という話を聞き、

ちょっと落ち込んだところですえーん

 

 

それでもあきらめることなく、

当法人では、

地道に、会社に会計の仕組みを、

根付かせる努力を続けてまいります。