それでも、一緒にいたいと願う自分は・・・本当にバカなんだと自分でも思う


スタスタとカフェを出た怜一さん

私は俯いたまま怜一さんの後を追うように歩いていた


取材も終わってしまって、怜一さんとの繋がりももう少しでなくなってしまう

絶望に打ちひしがれながら歩いていたら、いつの間にか公園の前に来ていた


かなで「・・・・・・・・・・・・・・」


自然と、その場に立ち止まってしまった


ここは、初めて私達が本当の意味で、心を通わせた場所

私と、怜一さんの思い出の場所・・・

そう思っていたけど、もう怜一さんにとっては、意味のない場所なのかも知れない・・・


怜一「・・・おい、どうしたんだ。早くいくぞ」


先を行ってしまったと思っていた怜一さんが、私のすぐそばに立っていた


かなで「怜一さん・・・」


この場所に、もう少しだけいたい・・・


許されないかもしれない

怒られるかもしれない

でも、私はこの場所を噛み締めたかった

・・・怜一さんとの思い出を噛み締めたかった


かなで「あの、本当に・・・本当に少しでいいんです。ここで、話しませんか・・・?」


私はすがるようにして、怜一さんの顔を見上げた


怜一「・・・・・・・・・・・・・・・」


かなで「怜一さん・・・?」


問いかけに、暫く黙っていた怜一さんは私の手を取ると、ベンチに向かって歩き出す


怜一「・・・立ち話より、座った方がいいだろ?」


ここは、あの日・・・ヤケになっていた私のもとに怜一さんが来てくれた場所


かなで「・・・ありがとうございます」


怜一「・・・・・・・・・・・・・・」


かなで「・・・・・・・・・・・・・・」


何か話さなくちゃと思うほど言葉が胸につかえて何も出ない


せっかく、怜一さんがいてくれているのに・・・


怜一「かなで・・・」


かなで「え・・・?」


先に口を開いたのは、怜一さんだった

顔を向けるとシャープな怜一さんの瞳がこちらを見ていた


怜一「・・・寒く、ないか?」


かなで「・・・そう言われると、寒い・・・ですね」


怜一「そうか・・・」


かなで「あ・・・」


怜一さんの長い指先がそっと私の手に触れて、優しく握り締めてくれる


怜一「勘違いするなよ。これは・・・俺も寒いからだ。・・・他に意味はない」


表情を変えずにそう言い放つ怜一さんだけど、その手の温もりは本当に優しくて・・・


期待しちゃいけないって分かっているけど、もしかして・・・もしかして怜一さんも私と同じ気持ちなの・・・?


でも、声に出して確かめることは出来なかった

怜一さんが答えてくれる自信が今の私にはなかったからだ


怜一「・・・・・・・・・・・」


かなで「・・・・・・・・・・・・」


手と手を握り合ったまま、私達はまた、無言


どれくらいの時間が経過したかわからなかった


怜一「・・・そろそろ行くぞ」


かなで「はい・・・」


2人で立ち上がる

その時、握った手が離れてしまった

怜一さんはポケットに手を入れ、スタスタと歩き始めた

私は1人、両手を握り締める


握り合った手から、私の気持ちが届けばよかったのに


両手は自然と、祈るような形になっていた




マスター「・・・えっ!滝さん、海外に行かれるんですか?!」


怜一「ああ。しばらくこっちには戻ってこないつもりだ。

今日で最後になるから、マスターには挨拶しようと思ってな」


マスター「じゃあ、彼女は・・・」


怜一「もう、別れた。・・・正確にいえば、今日限りで会うことはない」