その後はたいした会話もなく、私と怜一さんはバーを後にした。



・・・・・・・・いよいよ、本当にここで別れることになるのね・・・


何度も、淡い期待をしては、怜一さんに冷たくあしらわれて、私の心はズタズタだった


それでも、まだ、『一緒にいよう』って言われることを、期待している

怜一さんがそんなこと言うはずがないのに・・・本当にバカよね・・・


怜一「・・・なあ、かなで」


かなで「は、はい。何でしょう?怜一さん」


怜一「かなでは、まだ、俺達を恋人同士だと思い込んでいるか?」


ぽつりと、つぶやいた怜一さんの言葉が、ずしんと私の中で響く・・・


私は、そう思いたい。だけど怜一さんはきっと・・・


突然の質問に、私はどう答えたらいいか分からず、何も言えなかった


怜一「・・・だとしたら、見せたいものがある。・・・家に来い」


怜一さんの言葉は、あまりに唐突で、私は、その意図をはかりかねる


だけど、ひょっとして・・・まだ、怜一さんの方も別れを迷っているのかもしれない


ほんの少しの可能性にすがるように、私は、彼の言葉にうなずいた




バーを出てから、私の頭の中にはずっと怜一さんの言葉がぐるぐると回り続けていた


あれだけ冷たく突き放したのに恋人だと思うか?・・・なんて。

怜一さんは何を考えているの?


怜一「・・・・・・危ない!」


かなで「・・・えっ!?」


エンジン音を轟かせた自動車が、すぐそばを走り抜けていく

俯きながら考え事をしていた私は、前から猛スピードで走ってくる車など全く目に入ってなかった

それよりも・・・今は、私の身体を包み込むようにしてかばってくれた、怜一さんの瞳しか見えない


怜一「大丈夫か?・・・ったく、ボーッとするんじゃない」


私の視線に気づいたからか、怜一さんはすぐに私の体に回していた手を戻そうとしてしまう


もっと・・・触れていたいのに・・・でも、怜一さんを困らせたくない

私・・・どうしたいの?



選択肢

・思わず手を掴んでしまう←これを選択してみました

・少しだけ手に触れる

・すぐに離れる


だめ・・・!私、まだ怜一さんに触れていたい・・・!

私は半ば無意識に手を伸ばして、戻ろうとする怜一さんの手をぎゅっと掴んでしまった


怜一「・・・かなで?」


かなで「ご、ごめんなさい。私・・・やっぱり、怜一さんと・・・」


怜一「・・・っ!かなで・・・」


一瞬、怜一さんは苦しんでいるような表情を浮かべて私の指先を握ったけど

ゆっくりと私の手を解いてしまう


怜一さん・・・


怜一「・・・行くぞ。時間がない」


優しくて温かかった手とは裏腹に、冷たく言い放つ怜一さん

先に歩く彼の背中を私はただ見つめた


・・・私、やっぱりまだ怜一さんのことが、好きです・・・


私達は再び離れながら、黙々と怜一さんの家を目指している

私も何て言っていいか分からなくて口をつぐんだまま、ただ怜一さんの背中を見つめる

正直、怜一さんが私を家に呼んだ意図が分からない

別れると怜一さんが決めてから私に冷たい言葉ばかりを投げかけるけど、まだ望みはあるの・・・?

そんな淡い希望を抱くけど、もし期待してダメだったら・・・私はまた落ち込んでしまう


それでも・・・少しでも近くにいれば、怜一さんの気持ちが分かるかも知れない・・・?


選択肢

・そっと怜一さんに寄り添う

・隣を歩く←これを選択

・やっぱり距離を置く


後ろからついて行ってばかりだから暗い気持ちになるのかも知れない

私は少し足を速めて、怜一さんの隣を歩いてみることにした


怜一「・・・珍しいな、お前がそんなに早く歩くのは」


隣にやってきた私を見て、怜一さんが久しぶりに口を開いた


かなで「怜一さんの歩調に合わせてますから。自然と早くなりますよ」


怜一「・・・無理に合わせなくていいぞ。隣を歩かなくても、置いていったりしない」


かなで「・・・ついて行くだけじゃ、見えないものもあると思うんです

怜一さんの隣を歩いていたら、あなたを少しは理解出来るかも・・・と思って」


怜一「・・・勝手にしろ」


怜一さんは、表情を変えずに冷たく言い放った

だけど、私は気付いている


怜一さん、少しだけどゆっくり歩いてくれてる

これって、私の気持ちも考えてくれてるってこと?


私は、たくさんの絶望と、ほんの少しの希望を胸に、怜一さんの部屋に入る


荷物がだいぶ片付いている

あちこち段ボールだらけ・・・本当に行ってしまうんだ


それまで、怜一さんの話だけで絵空ごとのように思えた海外転勤が急に現実味を帯びて感じられた


怜一「がらんとしるだろ?こうしてみると、生活なんてあっけないもんだな」