描ききれなかった兵たち | 風紋

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鋼の錬金術師ファンの雑文ブログ



  リンとランファンに愛が偏っています

鋼の錬金術師という作品において、これだけ緻密に伏線や設定を考えられ
ている作品なのだからきっと描かれるはず!と思っていたことが実は描か
れないまま終わってたことというのが案外多くあると思います。
風呂敷を畳むのに、家族の絆という縦の辺・世界との関わりという横の辺
はきちんと畳めたけれど、それ以外のこぼれてしまったものたち。


私は以前3年半ほど前ホークアイ中尉の持つ銃のことを調べたときに
『鋼の錬金術師には軍人はいても兵はいない。』と書いているサイトさん
の文章を読んだことがありました。
それぞれ大佐・中尉・少尉・准尉・軍曹と階級はあっても、彼らたちだけ
が動いていて、この階級なら当然いるはずの部下の一般兵たちの姿は殆ど
見かけない。彼らの命令に従って動いているはずの名もなき兵たちの姿が
見当たらないと。


確かにそうだと思いました。
スカーの死体捜索にハボックの隊が駆り出されてるところぐらいしか、
彼らが兵たちを預かる上官だということが描かれていませんでした。
しかし15巻でイシュバール戦を描くうえで戦争体験者の話を聞くことを
した荒川弘は、名もなき兵たちの姿を実感したはずです。
その後16巻以降でブリッグズ兵たちが濃密に描かれたのは、そんな深化の
表れだろうと思っていました。
「お父様」を攻撃する名もなき兵たちの姿は、錬金術師や人造人間たちの
戦う姿よりも、より私たちに近いがゆえに胸があつくなるものでした。


しかし、終わってみれば彼らのゆくえは放っておかれたように見えてしま
います。
「バッカニア大尉が他数名と共に大総統との戦闘において死亡しました。」
というセリフに
「他数名かよ。雑魚兵はどうでもいい扱いしかしてない。」
という感想を書かれてたのを読んだときには、
「指揮をとる大尉を失ったことは最重要事項。戦場での報告は重要なこと
だけ簡潔に、だから他数名が誰かの確認があとまわしなのは当然。」
と内心反論できました。
しかし、最終回に彼らブリッグズ兵たちがどんな行方をたどったのか写真
一枚セリフひとつも描かれなかったのは、もう残念で仕方ありません。


名もなき一市民でしかない私が勝手に、名もなき兵に思い入れしてるだけ
ですが、そんな点からも外伝・軍部編は絶対に必要だと思っています。