リンの「皇帝になる」という覚悟 | 風紋

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鋼の錬金術師ファンの雑文ブログ



  リンとランファンに愛が偏っています

先日のssでうっかりリンに「皇帝になる」と口にさせてしまいましたが、
リンは果たして本当に皇帝になりたいのか?というのは私は未だに疑問です。
ヤオ族の安寧さえ保てるなら別に皇帝の地位なんかにはキョーミないよ、
ってな感じが一番リンらしいのではないかと思っているからです。


リンの素性が本人によって明らかにされるのがやっと11巻。
フーさんは登場後すぐの8巻のラッシュバレーの攻防時にまるで水戸黄門
の助さんのように「このお方をなんと心得る!」とでも言い出しそうな
様子だったのに、ここまで明かされなかったのはリンの意向でしょうね。
それまで、当の本人は皇子ということを特に言い出す気はなかった
わけです。
「俺の頭ひとつなら安いもんだろー」という言葉からも、リンは自分の
立場とか地位にはそれほどこだわっていないのでしょう。
ただ、「俺の背負っているもの」=「ヤオ族50万人の命運」の重さは
十分に感じているのはよくわかります。
そのために賢者の石を求めるリンの「皇帝」という地位に関する意識は
時間を経るごとに変化していることがわかります。


まず11巻。ホテルの部屋でアルとウィンリイ相手に話している時。
この時点では「不老不死の法らしきもの」を持ち帰って皇帝に取り入り、
ヤオ族の地位を引き上げてもらうことが目的、と明言しています。
その後、自力で玉座をぶんどる、と。
つまりこの時点ではリンの意識のなかでは「皇帝になる」ことに関しては
未確定の未来の話であるわけです。


次に13巻。グラトニーの腹の中で
「バカ皇子!」と呼ぶエドに対して「一国の皇子になんたる言い草ダ。」
「俺が皇帝になったら『皇帝に靴を食わせた男』としてシンの歴史書に
口汚く書いてやル。」
14巻「一国の皇子が一般人に情けをかけられるとはまいったネ。」
ここいらへんは、ともすれば過酷な状況にマイナスの方向に気が向かわな
いように気合を入れる為の景気づけのハッタリに聞こえます。


そして14巻賢者の石を体に入れられる時になって初めて
「俺を誰だと思ってんダ。シンの皇帝になる男リン・ヤオ」と言っている。
これはハッタリでしょうか?
いえ、ここで初めてリンは覚悟を決めたのでしょう。
「俺が皇帝にならねばならない。」と。


リンは「お父様」の中身に恐怖していました。「ありえない」と。
あの本当のエンヴィーの姿だって相当なもんですが、それをはるかに凌駕
するえげつないものが、気が読めるリンには見えたんでしょう。
こんな人を超えたモノがこの国のトップ(ブラッドレイ)を使っている!
「こんなモノに勝てるわけがない」と思いつつ、なんとか死地を脱しよう
と戦っていたと思います。
そこに奴と同じ、とまではいかなくても似たような強大な力を持つモノ
として「賢者の石」を見せられたら・・・。


ここでリンは決意したに違いありません。
力を手に入れなければアメストリスだけじゃなくシンもきっとやられる!
ならば人造人間になってでも生き延び、ヤオ族を、シンを守らねばと。
「民なくして王は在りえない。しかし王が居なくては民は行き場を失います」
ランファンは腕を落とす前に、未だ王ではないリンにそう言いました。
その言葉を拠りどころとしてリンは「皇帝になる」と決意したのでしょう。
無数の魂をその身に受け入れ、強大な力を求めて。


リンの覚悟はあまりにも土壇場で発揮されて遅すぎたようにも思われます。
ファンとしては「これでいいのかよ!」と叫びたくなります。
最近は出番すらないので、彼が何を考えてるかは全くわかりません。
「皇帝になる」という決意はまだ生きているんでしょうか?
皇帝になるには強欲のままのほうが絶対成功すると思いますが、ランファン
のことを考えるとリンには元にもどってほしいです。
というか、元に戻ったら皇帝にはならないだろうと思います。物語の力学上。
皇帝にはならず、でもランファンをはじめとするヤオ族が平和に暮らせる
には、どうなるのがいいんでしょうね?