写真は椿烏丸と春の台。
爺の子供時分に、ツバキと言えば赤一重の藪椿でした。
赤藪椿の中に、まれに白花も混じる程度だったような塩梅(あんばい)だったかな。
椿愛好家の方々の、気の遠くなるような品種改良研究の結果、今日様々な品種が種類が作り出されたのですね。
かつては「夢の色」とされた黄色椿も、青色椿も現実の椿になりました。
写真の椿は対照的な色合いの2種です。
① 薄紅八重は春の台(はるのうてな)。
② 赤一重は烏丸(かすまる、からすま)。
①について。
台(うてな)とは仏像の乗る蓮台(蓮の花をかたどった台)のこと。
この椿はまだ五分咲きですが、まもなく美しい八重の花びらが展開します。
この花を蓮の花に見立て、仏像の台座と見なしたのでしょう。
春の台、なんだか敬虔(けいけん)な祈りが聞こえそうな椿ではありませんか。
②について。
以前にも申し上げた通り、烏丸は普通に「からすまる」と読む方と、京風に「からすま」と読まれる方があります。
読みはどうでもいいのですが、この花の端正な面差しと、深紅の色がいいなと爺めは見ています。
これから開花を楽しみにしている椿は、
1に「楼蘭」2に「香妃」3,4がなくて5に「村下」です。
蛇足ながら5の「村下」は「むらげと読みます。
出雲地方では古く「砂鉄鍛冶職人」のことを「村下」と言った、とか。
雑俳5句。
烏天狗の憑(つ)きたるや赤椿
赤椿烏憑きたるや烏丸
紅椿春の台(うてな)に佛座す
佛座す春の台は紅椿
佛座す春の台は椿なり
腰折れ1首。
深紅花きりりと咲くや烏丸都の名を負ふ椿なりけり