雪はズンズン、風はヒューヒュー | 牛久の小盆栽 ながちゃんのブログ

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伝統的な盆栽愛好者の姿は、培養歴6年で樹齢150年、200万円の五葉松を出入りの業者に任せる旦那でした。「なんとか盆栽展示会」にその蔵者が得意げ写真におさまる、とか。私は貧乏なので全て実生、挿し木の小盆栽です。


14/2/4雪の棚場

写真は雪の棚場(うえきおきば)。

「この冬第一級の寒波襲来。関東地方も大雪の恐れあり。十分注意をするように」
という天気予報を、恐る恐る聞いたのは3日前のことでした。

幸いにも、冬の雨はかなり降り続きましたが、深い降雪には至りませんでした。
我が家の孫の衆の内、武闘派のコタ、ユタ両君は「雪遊び」をずいぶん期待もしていた模様ですが、雪はうっすらと積もっただけで、朝の陽に溶けてしまいました。
雪模様の舞台景色は、歌舞伎なら一幕見でおしまいと相成りました。

かかる予期せぬ事態に出会うと、彼らは傍らで、ぼんやり茶を飲む爺に、苦情を述べるのです。
「なんだ、積もらないじゃないか。爺は大雪だって言ったはずだぞ。雪が降ったら、耳なし芳一の続きを話すと言ったよね」
「え?耳なし芳一?ワシは耳なし難聴だ。呆一だよ」

爺も意地悪で話を逸らす訳ではございません。
夕べ雪がシンシンと降り積もり、車の排気音も人声もなければ、そりゃ爺も興に乗って語りますがな。
「雪女郎」をたっぷり小一時間語り、怯えて逃げんとするミイちゃん、サーちゃんの乙女衆を膝前に引き据え、「耳なし芳一」を、マクラからサゲまで、のみならず壇ノ浦の波音までリアルに再現いたし、語りますとも。

でもね、雪がないのですよ。
雪があればね、語りますって。
横笛や大太鼓はないので、BGMは口演で。
「ヒューヒュー。ドロンドロン。村の畑も林も風に乗った雪で真っ白。灯りの消えたどの家の周りも一面の雪。お母さんを亡くした与兵衛どんの子供たちは冷たい布団に固まって震えていたのさ。雪がドサッと落ちる音が怖くて、子供たちが耳を澄ますと、かすかに雪を踏み、我が家に近づく足音が」
まで語り、「足音が」はひと声張り上げ、床を叩くのです。

ミイちゃん、サーちゃんは爺の膝に倒れ込みますね。
さすれば爺は乙女子らに慈愛に満ちた眼差しを向けながら、励ましの「頭ナデナデ」致しますよ。
武闘派は如何に?
知りません。
彼らは「足音が」のサビの部分で「ドスンドスン」「バタバタ」などと勝手なチャチャを入れ、話の腰を折るのです。
爺は「一つ目大入道」をかたっているのでもなく、「相撲稽古風景」中継のつもりでもありません。
もののあわれと人の情の切なさを、心を込めて語っているのに、「ドスンドスン」の合いの手はなかろう。ニックキ奴ばらめ。

雪がなければ「雪女郎」も「雪女」も出ようがありませんよ。
「耳なし芳一」だとて、武闘派の出任せのオノマトペの中で、爺がしんみり語れますか。
ここははぐらかしの一手ですね。

駄句5句。
冠雪(かむりゆき)ほんのり化粧一幕見 
早寝せし子らには夢の雪遊び
降ればとてさて用もなし雪の朝
達磨には痩せたる姿雪僅か
儚くも雪消えたれど隠し酒

腰折れ1首。
盆景の小楢の林雪まだら野兎隠れ達磨に足りず