武士と花魁と椿の花 | 牛久の小盆栽 ながちゃんのブログ

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伝統的な盆栽愛好者の姿は、培養歴6年で樹齢150年、200万円の五葉松を出入りの業者に任せる旦那でした。「なんとか盆栽展示会」にその蔵者が得意げ写真におさまる、とか。私は貧乏なので全て実生、挿し木の小盆栽です。


椿白八朔

写真は椿白八朔(しろはっさく)。

「関東地方に大雪」の予報が、今朝は氷雨となって降っています。
庭の椿棚では、早咲きの椿、白八朔が夕べからの冷たい雨に濡れそぼって て佇んでおります。

椿の名は「白八朔」。
大ぶりな夏の蜜柑とはずいぶん様子の異なる、冬の椿が秘めやかに咲いています。

八朔=八月一日。
この日は昔ムカシ、徳川家康公が江戸入りされた日、とされます。
徳川家にとっては大変重要な式日であったようで、大名諸侯、旗本衆も皆「白無垢姿」に大小を差して、総登城させられたのです。

将軍家にはいかに大事な日であろうと、衣装整えての総登城を強いられることには、内心不満であったのでしょう。長い幕府の歴史の中で、いつか総登城の習慣はなくなったようです。

ところが、この「白無垢姿」の妙な習慣は、江戸吉原に引き継がれるのですね。
吉原では、花魁(おいらんから禿(かむろ)にいたるまで、八朔の日は白装束の慣わしが定着したとされます。

さて、この吉原の花魁の白装束は何かに似ておりませんか?
さよう、これぞ、今朝の写真の雨に泣き濡れる「白八朔」の椿花ではありませんか。

後は、想像するだけなのですが、冬咲きの「白八朔」の椿花を見た人が、花の純白可憐さに心惹かれ、真夏の花魁装束を彷彿したのではないでしょうか。
椿「白八朔」は冬から春の花。「八朔=八月一日」と名付けたのはかような理由ではないか、と愚老勝手に想像するのです。


駄句5句。
出もやらず燗酒欲しき雨夜なり
茅屋の寒の一灯雨の中
寒の雨果ての気配さらになし
霙(みぞれ)交ぜ雨音募る夜半かな
扱いも邪険となる冬の雨

腰折れ1首。
寒の雨そぼ降る夜半の一灯は老老住まふ表札照らす