写真は国光林檎を見上げるムクドリ。
棚場に1個だけ残ったリンゴ姫を、あのムクドリ親爺がむしゃむしゃ!
お姫様危うし!
「義を見てせざるは勇なきなり」
愚老、この光景を見るや、粗末な頭に血が逆流、足はぶるぶる手はわなわな、なんて程ではござらんが、これが見捨てておかりょうか、即座に窓を開け、怒声もって鳥に報いんと思ったのですが、まて暫し。
落葉林檎にぽつんと残るリンゴ。このリンゴをつつく空腹のムクドリ。
鳥は見上げ、リンゴは見下ろす。
こりゃ、一幅の俳画じゃありませんか。
「色香過ぎたるとも、あちきは国光林檎じゃわいの。汝は路頭に迷うたかが一羽も乞食鳥。下がれ下郎!」
「姐さん、さように仰ってはミもフタもござんせん。リンゴ一口だけでもいただけりゃあ、あっしはミもフタも閉ざしましょう。どれどれ、むしゃむしゃ」
窓外には、かかる緊張感漲る「無言劇」が展開しているのであります。
「しめしめ」
愚老、そっと携帯のカメラを構えましたな。
でもね、俳画の主人公は二者とも遙か彼方。ごそごそ音を立てたり、不用意に窓を開けたりすれば、いかに敏捷さに欠けるムクドリ親爺だとて「立つ鳥跡を濁して」飛び立つでありましょう。
愚老=市川雷蔵は「忍びの者」の構え、急ぎシャッターを切ったのです。
駄句5句。
国光(こっこう)の一つ残りて木守(きもり)かな
椋鳥(むくどり)のそっとつつくは木守ゆえ
食ひたげに椋鳥(むく)の見詰める姫林檎
椋鳥(むくどり)の目つき鋭き早き朝
椋鳥も生計(たつき)に迷ふ日暮れかな
腰折れ1首。
ギュルギュルと椋鳥なきて空覆ふ竿もて追ふも大群の舞ひ