写真は段菊(だんぎく)。
「菊」と付いてもキクにあらず。
「段」と付いてもカイダンに非ず。
ほんにおヌシは何者だ。
「段菊」は仮の名、「団菊」が真なり。
さすれば我は歌舞伎役者じゃわいのう。
さようさよう汝は傾奇者(かぶきもの)。
なあんて言う人があったかどうかは知らないけれど、段菊は床しい花ですね。
「菊」と付いてもキク科の花ではない。
クマツヅラ科の多年草です。
切れ込みのある葉の形がキクに似ていて、お供え餅のように段々に咲くことから「段菊」と名がついたのですね。
夏から秋の初めまで、紫色の花が端正な花を咲かせます。
秋の季語にありそうですが、記載はありません。
「段菊」の名を聞くと、どうしても歌舞伎興行の「団菊祭」を連想するのです。
「団菊祭」とは、もともと明治時代に活躍した九代目市川団十郎と五代目尾上菊五郎を讃えるために始まった興行で、例年五月に歌舞伎座で行われていましたが、「団菊祭」も季語ではありません。
「団菊祭」の演目であったのか、通常の歌舞伎座の出し物であったのか曖昧になっていますが、12代目団十郎と7代目菊五郎の共演を観たことがあります。
「浜松屋の場」から「稲瀬川勢揃いの場」まででありましたが、まことに脳裏に残る芝居でした。
さて、先日来愚老は段菊の鉢植えを矯めつ眇めつ見ておりますが、
段菊が片肌脱ぎになって、
「知らざあ言って聞かせやしょう」
と、大音声上げるような気がしてならないのです。
「音羽屋っ!」「成田屋っ!」
駄句5句と愚歌1首。
段菊の一段ごとに秋深し
段菊は秋空めがけ見得を切る
段菊の行く秋惜しみ見得を切る
秋茜すいと止まりたる段の菊
赤蜻蛉段菊の辺でとんぼきる
段菊の花竿に差し秋茜舞ひ飛ぶものを捕らへんとなり