鰯雲空の青を刻みたり | 牛久の小盆栽 ながちゃんのブログ

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伝統的な盆栽愛好者の姿は、培養歴6年で樹齢150年、200万円の五葉松を出入りの業者に任せる旦那でした。「なんとか盆栽展示会」にその蔵者が得意げ写真におさまる、とか。私は貧乏なので全て実生、挿し木の小盆栽です。


デクノボウ

写真は黒文字(くろもじ)。

写真はクスノキ科のクロモジです。
樹皮を削ると、なにやら床しい香りが立ち上ります。
何時の頃からか、この木を削って楊枝が作られました。
まあ、楊枝と申しても、居酒屋帰りのオヤジが口に咥えて歯の掃除をなさるツマヨウジとは似て非なるものです。

あ、もちろんクロモジ楊枝の君を咥えて、歯の掃除をなさるのはあながち過ちではございません。
でもね、クロモジ楊枝の君をタコ焼きの腹に突き刺し、息吹きかけて端から順に成敗致し、食後には紙にくるんでポイでは、クロモジ楊枝の君があまりにも可哀想。

あれは一本一本手作りなのですよ。
高級和菓子などに添えられた、クロモジ楊枝の君の誇らしげな佇まいを御覧。
どこか気高い風情が伝わりませんか?
あれで水羊羹などを上品に切り、そっと口に運ぶ、至福の時じゃああ~りませんか。

なんてね、
愚老、菓子を食べるにあたって、さようなお手前を演ずる訳ではないですよ。
和菓子も洋菓子も、孫娘のミイちゃん、サーちゃんに見つからぬよう、ワシツカミの口押し込み。

かかる日常の反省から一念発起、クロモジ楊枝の君を作ってみん、と思い立った次第。
昨日秋の爽やかな陽を浴びつつ、小刀片手に削り始めたのです。
鉢植えの「黒文字」を小脇に引き据え、作業に取りかかったのですが、黒文字も声こそ出さね、痛いのでありましょう、身を捩り小刀を避けようと藻掻く。
愚老、弾みで我が手をほんのちょっと削り、作業は中止。
黒文字は御覧の通り丸坊主のデクノボウとなったのであります。

アホな沙汰を見ておりましたネコジャラシは大笑い。
彼岸花は呆れて、以下の独白。
「間抜け爺め!お彼岸の最中ではないか。お彼岸はご先祖の供養のときなるぞ。愚図愚図怠けているとお前が供養されてしまうぞ」

駄句7句と愚歌1首。


久方の秋空高く澄み渡る
鰯雲空の青を刻みたり
月見むと芒を鉢に植えてみる
黒文字を月見の楊枝作りおく
黒文字を削りてその香秋空へ
彼岸花彼岸の中日に聳えたり
彼岸花ブロック塀に映えて居り

彼岸花庭に眺むる人もあり縁起次第も時代の流れ