スギたるは及ばざるが如し | 牛久の小盆栽 ながちゃんのブログ

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伝統的な盆栽愛好者の姿は、培養歴6年で樹齢150年、200万円の五葉松を出入りの業者に任せる旦那でした。「なんとか盆栽展示会」にその蔵者が得意げ写真におさまる、とか。私は貧乏なので全て実生、挿し木の小盆栽です。


捩杉

写真は捩杉(よれすぎ)。

「捩杉」は園芸品種の一つですが、大変珍しいスギです。
枝の先々まで葉が絡み、細身の葉巻を思わせる優しい曲を作っています。

ずいぶん以前から陋宅に居座っているのですが、伸びもせず、まして縮みも致さず、豆鉢の中に鎮座しています。
ボケ爺ゆえ、実はこの木の名前を忘れていたのです。
遙か以前に、「○○スギ」のラベルがあったことはうっすら記憶の隅にあったのですが、杖とも柱とも電柱とも頼みにしていたラベルは何処へやら。

家人に打ち明けると、蔑みの笑いに打ち捨てられるだろう、と切ない我慢、愚老長い間コッソリ「樹木図鑑」などを老眼にかすむ目をこすりこすり眺めておりました。
老残の身で、物事を忘れるなどと、もはや救いがありませんな。

小生陋宅の書斎(書斎と申しても実態は物置、納戸の隅)で図鑑を見ておりますと、孫娘のサーちゃんは、爺が善行に目覚めて「読み聞かせ」でも始めた、と思うのか、「アンパンマン」やら「ドラえもん」やらを持ってきて、「キミキミこの本読みたまえ」と勧告なさるのです。

「スギの園芸種一覧と有用植物の育樹について」
を眉間にシワを刻んで眺める爺に「アンパンマン」がナニ嬉しかろう。
「ナニナニ?アンパンマン?爺はあんぱんは食べぬぞよ。あっちへ行ってテレビをごらん」
テレビの方角を指し示すのですが、サーちゃんは不承知。
ついには「シンデレラ」「プリキュア」の漫画が山積みとなるのです。

隙を見てコタ・ユタの乱暴組が間のふすまを開けて乱入、必殺剣を振るい、爺の脳天にウチ下ろす。
爺の評価は「善行爺」から「呪いの悪魔」へ急転凋落致すのです。
かくなってはボケ爺も応戦せざるを得ませんな。
キミが必殺剣なら爺は二天一流、または北斗の剣。
いざ尋常に勝負ショウブ。

さて、スギはどうなった?
スギは図鑑の中に「別れの一本杉」。
「これこれ杉の子起きなさい」と呼ぼうが叫ぼうが霧の彼方へ。 
爺は疲れ果てましたな。
もうヨレヨレですよ。

さて奇跡!
ヨレヨレ爺に記憶が戻った!
「ヨレヨレ爺」→「ヨレヨレ杉」→「捩杉(よれすぎ)」ですよ。
忘れたものは剣戟で思い出せ!
でもね、スギたるは及ばざるが如し。

駄句6句と愚歌1首。


捩杉は寒き手足も背も丸め
捩杉は実の珍しき育ちなり
捩杉の小枝の先も葉の寒し
枝に巻く葉は皆寒し縒(よ)れの杉
行く秋に背を丸むるや縒れの杉
捩杉は秋空高く巻葉かな

捩杉は杖にならねど我も生く枝の先々葉は丸けれど