写真は皐月(品種名は山の光)。
この写真は2枚で1セットです。
もともとは樹高70㎝ほどの盆栽でありました。
怠け爺の手抜き管理のせいで、根際の部分を除いて上部が全て枯れてしまったのです。
爺は泣き泣き枯れた部分を切り捨て、拳ほどの根回りだけを残しておきました。
爺の手から悪魔の手から逃れた皐月「山の光」は、やがて芽を出し足を出し、ベロまで出して辛うじて息ををしておりましたが、梅雨の声を聞く頃に一輪だけ開花致したのです。
全体を一枚の写真におさめるのはもちろん可能ですが、拳の根回りから一本だけひょろひょろ伸びた枝の先にへばり付くような一輪の花と、本体を一枚の写真におさめて何が面白かろう。
「木に竹を接ぐ」ようなもので、不釣り合いの典型であります。
この珍妙な取り合わせは、昔ムカシ焼酎醸造工場に見られた、一本の煙突に縋り付く煙突掃除人の風情ではないですか。
かろうじて枝に縋り付く一輪の花など、風が吹けばあらら塵芥のように見るも無惨に吹き飛ばされる定めでありましょう。
風に吹き散らされた一輪の花が、やっとの思いで踏みとどまっても6代目菊五郎の「見得」にはまるで及びませんよ。
「知らざあ言って聞かせやしょう。たまに咲いた皐月とボケ爺が写真に残せし一輪の花は尽きねえ筑波山麓、名せえゆかりの煙突小僧煤之助たあ~、俺がことだぁ」
ってね。これじゃあ締まりませんぜ。
よって、今日の皐月の写真は花と根と2枚でばらばら。
ばらばら写真を、当地は筑波山麓のことなれば「陣中膏ガマの油」を塗って上下をピタリ繋いでご覧頂きたい。
駄句6句と愚歌1首。
色変へて紫陽花雨を花で受く
梅雨空に沢紫陽花の遠近(おちこち)に
五月雨をトレモロと聞く雨宿り
姫薔薇は驟雨にはっと目を瞠り
驟雨過ぎ断腸花ふと思ふやう
驟雨去り濡れたる薔薇は肩脱ぎに
五月雨をトレモロと聞く夕べかな軒借り楽し知る人の住まゐ