空の青辛夷の花を包みたり | 牛久の小盆栽 ながちゃんのブログ

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伝統的な盆栽愛好者の姿は、培養歴6年で樹齢150年、200万円の五葉松を出入りの業者に任せる旦那でした。「なんとか盆栽展示会」にその蔵者が得意げ写真におさまる、とか。私は貧乏なので全て実生、挿し木の小盆栽です。


辛夷

写真は辛夷(こぶし)。

写真のコブシは雑木林の中でクヌギに押され、コナラに挟まれ這々の体で何とか空間を探して空に伸びています。
弥生も半ばになると、一斉に開花し、春到来を告げるのです。

「名もなく、貧しく、美しく」
という言葉がありますが、このコブシは、
「名は辛夷、別名田打ち桜。さほど貧しくもなく、開花のはじめは美しい」
となります。

同じモクレン科の白木蓮が、行いすました高徳の僧のように、端然と咲くのに対して、コブシはやや気儘に右向き左向き、やんちゃ坊主の始末で開花します。

昔ムカシ、農家の人々はコブシの賑やかな開花を見て、田起こしに取りかかったのでしょう。
田に水が張られ、きらきら光る中で早苗が植えわたされ、様々な生命の讃歌が溢れることになります。

ところで、写真のコブシは特別に霜に弱いようであります。
晴天の中に白花を賑やかに飾っていたものを、ある朝突然の降霜で、一瞬のうちにしょげかえり、黄変します。
まさにコブシは「躁鬱」の様。

さて、コブシの開花で我が家も「田起こし」
700鉢の植え替えを始めたものの、「日暮れてなお道遠し」
いつ終わるものやら果てるものやら。

駄句5句と愚歌1首。


辛夷咲き山家の郷の春を知る
遅霜に辛夷の花は黄変す
辛夷咲き空一杯に青と白
空の青辛夷の花を包みたり
黄変の辛夷の花見て霜を知る

空の青辛夷の白と映えあひて山家の郷に春は来にけり