写真は椿(港の華)。
「港の華」とは、どこか異国情緒の漂う椿ですね。
この椿の名を口にするとき、野口雨情作詞、本居長世作曲の童謡「赤い靴」を思い出して仕方がないのです。
「♪横浜の波止場から 船に乗って異人さんに連れられて行っちゃった」
「横浜の波止場」の言葉に染みつく異国を思う感覚は、子供の頃からありましたね。
何故か船員帽を斜めに被った、横縞シャツの船乗りが、パイプを咥えて
頭陀袋を肩に担ぎ、見送りの人に急かされて渋々別れのテープを一本握り、銅鑼の音を聞く。
洟垂れ小僧の時分、かような船乗りに憧れましたよ。
でもね、もう銅鑼が鳴っているのですよ。
頭陀袋担いで斜に構えて波止場に立っている場合じゃないって。
「赤い靴」の女の子は、異人さんに連れられて行っちゃった。
この歌詞の「異人さん」は「いいジイさん」と思っていましたがね。
さて、椿「港の華」について。
薄紅色の極小輪の香り椿であります。
各枝に「貧乏性」の愚老など、勿体ないと思うほど咲きます。
椿は「日本固有の種」とは誰(た)が言うた。
この椿の親は「ロゼフローラ」という,中国原産の椿です。
その小輪椿の「ロゼフローラ」の実生木が「港の華」で、比較的新しい椿になります。
前記致しましたように、港の華は香り椿。
かなり強い香りを発します。
我が陋屋には、「港の華」と「香り姫」の二本が香りを放ちますね。
好き好きはあろうかと思いますが、愚老はこの香りをあまり好みません。というより苦手なのです。
金木犀、沈丁花、山梔子など,香りを放つ花は多けれど、椿と百合の香がどうにも嬉しくないのです。
夏目漱石の「それから」の最終場面は、高等遊民の代助氏が百合の香を嗅いで、狂いそうになる頭を抱えて家を出る、と描写されていたと思います。
愚老など、下等賤民でありますが、百合の香は苦手ですな。
畏れ多くも、椿の香も同様。
駄句5句と愚歌1首。
春麗ら香り椿の咽せるほど
懐かしの浜の波止場の椿の名
きらきらと新しきかな椿の名
椿の香嗅ぐやたちまち昔の人
椿の香袖の香ぞすることもあり
新椿港の華とふ名ぞゆかし香り加わり雅やかなり