春麗ら香り椿の咽せるほど | 牛久の小盆栽 ながちゃんのブログ

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伝統的な盆栽愛好者の姿は、培養歴6年で樹齢150年、200万円の五葉松を出入りの業者に任せる旦那でした。「なんとか盆栽展示会」にその蔵者が得意げ写真におさまる、とか。私は貧乏なので全て実生、挿し木の小盆栽です。


港の華

写真は椿(港の華)。

「港の華」とは、どこか異国情緒の漂う椿ですね。

この椿の名を口にするとき、野口雨情作詞、本居長世作曲の童謡「赤い靴」を思い出して仕方がないのです。
「♪横浜の波止場から 船に乗って異人さんに連れられて行っちゃった」

「横浜の波止場」の言葉に染みつく異国を思う感覚は、子供の頃からありましたね。
何故か船員帽を斜めに被った、横縞シャツの船乗りが、パイプを咥えて
頭陀袋を肩に担ぎ、見送りの人に急かされて渋々別れのテープを一本握り、銅鑼の音を聞く。

洟垂れ小僧の時分、かような船乗りに憧れましたよ。
でもね、もう銅鑼が鳴っているのですよ。
頭陀袋担いで斜に構えて波止場に立っている場合じゃないって。

「赤い靴」の女の子は、異人さんに連れられて行っちゃった。
この歌詞の「異人さん」は「いいジイさん」と思っていましたがね。

さて、椿「港の華」について。
薄紅色の極小輪の香り椿であります。
各枝に「貧乏性」の愚老など、勿体ないと思うほど咲きます。

椿は「日本固有の種」とは誰(た)が言うた。
この椿の親は「ロゼフローラ」という,中国原産の椿です。
その小輪椿の「ロゼフローラ」の実生木が「港の華」で、比較的新しい椿になります。

前記致しましたように、港の華は香り椿。
かなり強い香りを発します。
我が陋屋には、「港の華」と「香り姫」の二本が香りを放ちますね。
好き好きはあろうかと思いますが、愚老はこの香りをあまり好みません。というより苦手なのです。
金木犀、沈丁花、山梔子など,香りを放つ花は多けれど、椿と百合の香がどうにも嬉しくないのです。
夏目漱石の「それから」の最終場面は、高等遊民の代助氏が百合の香を嗅いで、狂いそうになる頭を抱えて家を出る、と描写されていたと思います。
愚老など、下等賤民でありますが、百合の香は苦手ですな。
畏れ多くも、椿の香も同様。

駄句5句と愚歌1首。


春麗ら香り椿の咽せるほど
懐かしの浜の波止場の椿の名
きらきらと新しきかな椿の名
椿の香嗅ぐやたちまち昔の人
椿の香袖の香ぞすることもあり

新椿港の華とふ名ぞゆかし香り加わり雅やかなり