写真は貝母百合(ばいもゆり)別名編笠百合。
遠目にはフウセンカズラに似た提灯型の花をつけます。
次第に開いていって編笠に見えるところから編笠百合の別名があります。
まことに地味な花で、弥生の声を聞くと静かに咲き始めます。
「静かに」?
そりゃあ、他のどんな花も「静かに」咲くに決まっているけれど、貝母百合は花も葉も地味で、庭の隅にどこか申し訳なさそうに咲くのです。
我が家の庭で咲き誇っている花はクリスマスローズですが、この花は実に賑やかです。
「クリスマスに咲こうが、いつ咲こうが俺の勝手だろう」
とばかりに、池の端でどんちゃん騒ぎ、の風情で地を占めているのです。
拙老、貝母百合をツワブキの隣に植えているのですが、葉色といい花といい、この両者は対照的であります。
2尺ほどに伸びた貝母百合の淡い、切ない色の葉をツワブキは呵責のない眼差しで見上げ、
「おめえも生きているんだろう。そんな辛気くさい顔をしていないで、ちったあ騒いだらどうだ。え?シラフじゃ歌も歌えないって?この家の金欠ジジイの酒を盗んだらいいだろう?」
と言う。
「あのね、あたいは酒なんか嫌い。あれは気違い水。この家のジジイをご覧。アホな面してるでしょ」
「この家のジジイがアホなのは間違いない。見ろ、今も涙ぐんで鉢植えの植え替えをしているだろう.植え替えで泣くんだったら鉢植えなんか捨てちまえ」
などと貝母百合とツワブキは好対照の凸凹コンビで、ジジイ論に夢中であります。
これで貝母百合が晩秋のツワブキの花を見たら驚くでしょうね。
その頃貝母百合は深い眠りの中。
駄句5句と愚歌1首。
編笠を貝母の花は被りけり
花咲けど貝母はぢつと下がりをり
是ぞ我貝母の花は隅に咲く
虎杖(いたどり)を根を捌(さば)きて植え替えぬ
溢(こぼ)るほど霜の合間に辛夷(こぶし)咲く
白蓮の行儀良さは知らぬ顔辛夷の花の彼方此方(あちこち)向けり