写真は椿(品種名は黒侘助)
黒侘助の別名は永楽(えいらく)と言います。
さて、まことに奇妙なことに、黒侘助は侘助椿ではない、と言う。
侘助と言い、侘助と呼ばれる椿が侘助椿ではない?
まことに面妖で、奇々怪々。
愚老なども秀才と呼ばれ、天才と言われるが,これは聞き間違い、事実は醜歳で天災。
まことに面妖で、奇々怪々。
まあまあ、面倒なことはさておき、拙老は黒侘助が好きなのです。
黒みがかった鮮紅一重咲きで、花姿は凛として気高さを覚えます。
よく似た椿で、黒椿という椿もありますが、こちらは別種。八重咲きの花です。
九州の山間の町の中学校では、男子生徒がヤブ椿の実を集める習慣がありました。
誤解なきよう。
敗戦後の食糧不足の折とはいえ、我ら中学生は椿の実を食うために集めた訳じゃありませんぞ。
椿の実をつぶして椿油を取るのです。
これも誤解なきよう。
「椿油」を瓶詰めにしてご婦人方の歓心を買おうとした訳でもござらん。
集めた椿油で、せっせと学帽のツバを磨くのです。
学帽のツバが光れば光るほど、喧嘩の際には相手にニラミが効いたのであります。
かような帽子を田舎の言葉で「武者ん良かあ」と言いましたね。
学帽のツバはぴかぴか、靴のかかとは踏みつぶし、ニキビも揉みつぶし「わりゃ何か文句のあっとか?よかぞ相手になるったい。河原で待っとれ!」
などと威嚇したものです。
椿の実のなる晩秋の頃、河原は寒くて誰も行かなかったのですがね。
駄句5句と愚歌1首。
春麗(うらら)黒侘助の凛として
侘助の黒き花見て落ち居たり
高らかに黒侘助の春謳ふ
赤椿紺侘助と呼ぶ不思議
伸びやかに牡丹の芽空を指す
気高さの黒侘助の花を見て冷酒やめてぬる燗舐める