侍タイムスリッパ―(通常版・デラックス版)(ネタバレ) | 三角絞めでつかまえて2

侍タイムスリッパ―(通常版・デラックス版)(ネタバレ)

※今回の感想は、本作が好きな人は不快になる可能性が高いので、読まない方が良いです。

※今回の感想には、「ライド・オン」のネタバレにも少し触れているので、知りたくない方は気をつけて!

 

 

 

 

侍タイムスリッパ―

 

2024/日本 上映時間131分

監督・脚本・撮影・編集:安田淳一

照明:土居欣也、はのひろし

音声:岩瀬航、江原三郎、松野泉

床山:川田政史

特効:前田智広、佃光

時代衣装:古賀博隆、片山郁江

美術協力:辻野大、田宮美咲、岡崎眞理

殺陣:清家一斗

助監督:高垣博也、沙倉ゆうの

制作:清水正子

出演:山口馬木也、冨家ノリマサ、沙倉ゆうの、峰蘭太郎、庄野﨑謙、紅萬子、福田善晴、井上肇、安藤彰則、田村ツトム、多賀勝一、吹上タツヒロ、佐渡山順久、Rene、柴田善行、きらく尚賢、ムラサトシ、神原弘之、五馬さとし、田井克幸、徳丸新作、泉原豊、岸原柊、戸田都康、矢口恭平、吉永真也、楠瀬アキ、佐波太郎、高寺裕司、江村修平、山本拓平、西村裕慶、谷垣宏尚、篠崎雅美、夏守陽平、橋本裕也、大野洋史、山内良、宮崎恵美子、岩澤俊治、雨音テン、水瀬望、石川典佳、結月舞、鈴木ただし、皷美佳、吉村栄義

パンフレット:★★★(1200円/監督の生々しく凄まじい苦労話が読めるので、本作が好きな方は必読!)

(あらすじ)
幕末の京都。会津藩士の高坂新左衛門は家老から長州藩士を討つよう密命を受けるが、標的の男と刃を交えた瞬間、落雷によって気を失ってしまう。目を覚ますと、そこは現代の時代劇撮影所だった。新左衛門は行く先々で騒動を起こしながら、江戸幕府が140年前に滅んだことを知り、がく然とする。一度は死を覚悟する新左衛門だったが、心優しい人たちに助けられ、生きる気力を取り戻していく。やがて彼は磨き上げた剣の腕だけを頼りに撮影所の門を叩き、斬られ役として生きていくことを決意する。(以上、映画.comより)


予告編はこんな感じ↓

 

 

 

70点

 

 

本作は、安田淳一監督が自費を投入して作った自主映画なんですけど、そこら辺の苦労話は各自検索していただくとして(手抜き)「侍がタイムスリップして現代にやってくる」なんて話は星の数ほど観てきた気がするものの、あの「拳銃と目玉焼」の監督が撮ったということで、それなりに期待してましてね(微笑)。公開週の8月21日(水)=シネマ・ロサの水曜サービスデーを利用して鑑賞したんですが…。とても面白かったものの、正直、まったく乗れない展開があったのです (´・ω・`) ウーン

 

 

8月21日のgif。この頃はまだパンフが作られてなかったという。

 

 

とはいえ、本作の評判はすこぶる良くて。「カメラを止めるな!」の時のように、シネマ・ロサ発で全国拡大公開されている中、そんな奇跡的な盛り上がりに水を差したくない私もいましてね…。有料noteの方にヒッソリと自分の葛藤を書き残して、とりあえず良しとしていたんですけれども。愛聴しているラジオ番組「アフター6ジャンクション2」の週刊映画時評コーナー「ムービーウォッチメン」の課題映画に選ばれたということで、ううむ、やっぱり私なりの感想をブログの方にも残しておこうと思い直しまして。10月9日(水)、仕事帰りに川崎のチネチッタにて、チネチッタデーを利用して、「サユリ」を観てから「デラックス版」をハシゴ鑑賞してきました。やっぱり、「面白いんだけどなぁ… (´Д`;) アァン」と思ったり。

 

 

10月10日のgif。チネチッタには展示コーナーがありましたよ。

 

 

いや、本当に良い映画ではあるんですよ。まず、脚本が面白い。監督本人は「オーソドックス」と評してますが(パンフ参照)「現代にタイムスリップした幕末の侍が時代劇の斬られ役になる」というのは気が利いてるし、「主人公・高坂新左衛門の前に、彼が討とうとしていた長州藩士・山形彦九郎がすでにタイムスリップしていて、同じように斬られ役から成り上がって"風見恭一郎”というスターになっていた」という展開は、私は1ミリも予想していなくて、ビックリいたしました(ラスト、第三の男がタイムスリップしてくるオチも上手いと思った)。それに、「人の心が通っている」というか。例えば「高坂新左衛門が現代で初めてケーキを食べて、日本が豊かな国になったことを知って涙するシーン」とか、演技の見事さもあいまって、もらい泣きしちゃいましたよ。

 

そして、役者さんたちが素晴らしい。恥ずかしながら私は意識したことがなかったんですが(汗)、高坂新左衛門役の山口馬木也さんはとにかくカッコ良くて、渋くて、愛らしくて、観客の多くがファンになったのではないでしょうか。風見恭一郎役の冨家ノリマサさんも貫禄のあるお芝居が見事だったし(真剣の提案を聞いて、涙を浮かべるシーンとか)、脇を固める役者さんたちも良かった。本作のギャグ自体は結構ベタベタなんですけど(「落ちたとかすべるとか言うなよ」とか、さすがに「ザ・昭和」すぎると思った)、登場人物たちはちゃんと真剣な演技だから、わかってても笑っちゃうんですよねぇ…(特に高坂新左衛門がイイ!)「初めて斬られ役として死ぬ直前、走馬燈を見るシーン」は爆笑しました (´∀`) ヨカッタワー

 

ちなみに「デラックス版」の方は「沙倉ゆうのさん演じる助監督・山本優子の妄想チャンバラシーン」などが足されていて、確かに冗長に感じなくはないものの、とはいえ、彼女の殺陣もなかなか良かったし、そもそも沙倉ゆうのさんが可愛くて、こっちの方が好みでしたヨ (〃∇〃) ウフフ つーか、妄想シーンでのガンマンvs侍といい、ポスタービジュアルといい、安田監督は岡本喜八監督の「EAST MEETS WEST」が好きなんですかね。で、それ以外のチャンバラシーンもそりゃあ良くて。特にクライマックス、ケジメをつけるための「真剣での戦い」はしっかりと「それまでの殺陣」と違っていて、迫力があって…と、褒めたいところなんですが、しかし。ごめんなさい、私はこの「真剣で戦う」という展開自体がまったく飲み込めなかったのです。

 

 

「EAST MEETS WEST」の主演は真田広之さん。前はそれほど好きではなかったけど、今観直したら面白いのかしら。

EAST MEETS WEST

 

 

いや、助監督は何度も止めようとするし、周囲の認識は「真剣は使うけど”殺陣”」だったし(撮影中、殺陣が違うことに気付きつつも、まさか殺し合っているとは思ってないだろうし)、最後は助監督が高坂新左衛門をビンタしてるし、安田監督も「やっちゃダメなこと」として描いてはいるんですよ(年齢的に「座頭市」の事故とかご存知でしょうし)。でも、それでもケジメとして「高坂新左衛門は山形彦九郎=自分の時代との決着をつけたい」という展開なんでしょうけど…。ごめんなさい、私には「時代劇賛歌」のような作品の割には、ここにきて殺陣を軽く扱っているように感じました。だってさ、極端に書くと、本作は「真剣で殺し合った方が殺陣よりも迫力があって素晴らしいシーンになる」って着地なんですよ? 「真剣勝負のつまらなさ」がわかっている現在、バカバカしくないですかね?


長年培った技術(カメラワークなども含む)によって、誰も傷つけず安全に「真剣での殺し合い」を表現できるのが、時代劇や殺陣のスゴさなんじゃないの? もちろん「本作では真剣勝負を殺陣で表現した=殺陣のスゴさを伝えている」と逆説的に考えることもできなくはないし、「クライマックスに真剣勝負のような殺陣を見せたい」という監督の気持ちはわかりますが(パンフに載ってた)、それにしても劇中であれを「良いシーン」としちゃったのはダメだと思う。せめて「映画制作とは関係ない場所で果たし合いをする」とか「迫力はあったけど、映像的には全然使えない(「そのために殺陣がある」的な)といったオチだったら飲み込めたと思いますがー。

 

その他、「あんな追加脚本がある?」とか「高坂は会津藩がどうなったか、それまで気にならなかったの?」といったツッコミはどうでも良いとして(と言いながら書くアタシ)。何はともあれ、監督的には私が書いたようなことは百も承知ながらも、エンターテインメントとしてそういう展開を優先したんだろうし、現時点で多くの観客が満足していて、基本的には世間の評価も高いんだから、まぁ、いいんじゃないカナー (´∀`;) エヘヘ 私的にはどうしても譲れない不満点はありますけど、とはいえ、他の部分は本当に楽しかったし、監督や本作に関わった人たちが身を削って作った自主制作作品→成功してほしいので、もしこの記事を読んでいるアナタが未見なら、ぜひ劇場に足を運んでみてくださいな。

 

 

 

 

安田淳一監督の長編自主映画デビュー作。私の感想はこんな感じ。

 

 

今年公開されたジャッキー・チェン主演作。「映画制作は安全第一」という着地、素晴らしかったです。