悪は存在しない(ネタバレ) | 三角絞めでつかまえて2

悪は存在しない(ネタバレ)

悪は存在しない

 


2023/日本 上映時間106分

監督・脚本・企画・編集:濱口竜介

企画・音楽:石橋英子

プロデューサー:高田聡

エグゼクティブプロデューサー:原田将、徳山勝巳

撮影:北川喜雄

録音・整音:松野泉

美術:布部雅人

編集:山崎梓

カラリスト:小林亮太

助監督:遠藤薫

制作:石井智久

出演:大美賀均、西川玲、小坂竜士、渋谷采郁、菊池葉月、三浦博之、鳥井雄人、山村崇子、長尾卓磨、宮田佳典、田村泰二郎

パンフレット:★★★(1200円/石橋英子さんの7インチ付き特装版(2200円)が売り切れてたので、仕方なく通常版を購入。インタビューやら対談やらがそれなりに載ってました)

(あらすじ)
自然豊かな高原に位置する長野県水挽町は、東京からも近いため近年移住者が増加傾向にあり、ごく緩やかに発展している。代々その地に暮らす巧は、娘の花とともに自然のサイクルに合わせた慎ましい生活を送っているが、ある時、家の近くでグランピング場の設営計画が持ち上がる。それは、コロナ禍のあおりで経営難に陥った芸能事務所が、政府からの補助金を得て計画したものだった。しかし、彼らが町の水源に汚水を流そうとしていることがわかったことから町内に動揺が広がり、巧たちの静かな生活にも思わぬ余波が及ぶことになる。(以上、映画.comより)


予告編はこんな感じ↓

 

85点

 

 

近年はなかなかブログを更新できなくなったのもあって、なんと濱口竜介監督の作品は1本も感想を書いてないんですけど、一応、「ドライブ・マイ・カー」「偶然と想像」は劇場で鑑賞してまして。「偶然と想像」の方は「2021年のベスト10」に入れようかと迷ったぐらいには好きな映画ではあったんですよ(まどろっこしい表現)。だから、本作も観たいと思っていたんですが、ちょうど愛聴しているラジオ番組「アフター6ジャンクション」の週刊映画時評コーナー「ムービーウォッチメン」の課題映画に選ばれたので、GW中の5月4日(土)、あつぎのえいがかんkikiにて、古来より言い伝えられている秘儀「ミニシアター全回制覇」を決行。「エルガルド・モルターラ ある少年の数奇な運命」「無名」「コール・ジェーン 女性たちの秘密の電話」「ゴールド・ボーイ」を観てから鑑賞いたしました。「答えは③!m9`Д´) ビシッ」と思ったり。

 

 

5月4日のgif。どれも面白かったけど、「ゴールド・ボーイ」は“白々しい岡田将生さん”が堪能できて最高でした…。

 

 

最初に雑なあらすじを書いておきますと。経営難の芸能事務所「プレイモード」が補助金を目当てに、自然が豊かな長野県水挽町でグランピング場を作ろうとしてまして。社員の高橋啓介(小坂竜士)と黛ゆう子(渋谷采郁)が説明会を開くんですけど、町の水源やら地元住民やらにまったく配慮がない杜撰なプランだったので、この町に暮らす“開拓三世の便利屋”安村巧(大美賀均)をはじめとする説明会に出席した町民全員が2人を吊し上げる…とまではならず。「一度、会社に持ち帰って、また話しましょう ( ´_ゝ`)」ってなそこそこ穏便な雰囲気で終了しましてね。高橋と黛も「地元の人のご指摘もごもっともだな… (`Δ´;(`Δ´;し シカタナシ」と反省して会社に戻るも、社長とコンサルは聞く耳ナッシング。2人は再度、水挽町を訪れるのです。

 

そして、高橋ったら、朴訥ながら自然を熟知する巧に対して、弟子になりたい勢いでLOVEずっきゅん。いろいろと教えてもらおうとしていたところ、巧の一人娘の花が行方不明になったから、さぁ大変!(´Д`;) タイヘーン 町の人たちが総出で捜索する中、巧と高橋は林の奥に広がる原っぱで“人を襲う可能性がある”とされる手負いの鹿 with 子鹿と相対する花を発見しまして。高橋が彼女のところへ向かおうとしたところ、巧がいきなり高橋を引き倒してスリーパーで締め落とすから、観客一同の脳裏に吹き荒れるなぜ?の嵐 (°д°;) ナゼ!? すでに鹿たちは去っているも、倒れている花は呼吸をしてないっぽいので、彼女を担いで巧は林に入っていき、息を吹き返した高橋は立ち上がって少し歩くもまた倒れてしまうのでしたーー。

 

 

ということで聴いてください、吉沢秋絵さん「なぜ?の嵐」

 

 

いや〜、面白かったです! ちょっと思いだしたのが、RHYMESTERの名曲「POP LIFE」「あるいは立場を交換すると ヤツにさえかすかに共感する (▼∀▼)」という歌詞でしてね。実は、私が書いたあらすじは結構大事な部分を省略してまして。映画序盤はとにかく自然と暮らす巧や町の人たちの「(いろいろな意味で)豊かな暮らし」を映し出すんですよ。そんな中、いかにも心のなさそうな芸能事務所の奴らがきて、町やその周囲の自然環境を無視したような提案を堂々としてくるから、説明会の最前列に座っている金髪メガネの青年・立樹(鳥井雄人)の「おめえら、補助金がほしいだけだろうが!( ゚д゚) カエレ!」といった発言に感情移入しまくっていたんですが、しかし。とはいえ、巧たちがちゃんと言葉を選んで話をすると、会社側の高橋と黛もちゃんとその話を受け止めていくから、「思ってたより、良い人たちなのかな?(・ε・)」と。

 

しかもその後、高橋と黛が置かれた「世知辛い状況」を見せられると、「かすかに共感する」どころか、高橋はオレだぁぁぁっ!ヽ(TДT)ノ ウワァァァン! そうなのよ、「住民相手に説明会を開く」のはやったことないですけど、自分でもアホみたいだなと思う嫌なことをやらされたりって、人間ならば大なり小なり経験するじゃないですか(特に生活を人質にとられた仕事絡みで)。そうなると、あの“ノリが軽い芸能事務所の社長”についても、ちょっと考えちゃう。だって、私もかつて経営側にいたことがありますが(汗)「社員のお給料をちゃんと保証しなくちゃいけない」って至極当たり前のことだけど、本当に大変なんですよね…。町の人からすれば「ふざけんな!(`Δ´)」って話でしかありませんが、なんかあの社長の苦しい立場もわからないでもないなぁって。


というか、ちょっとamazonを覗いてみれば、パンフの「特装版」が15060円という高値で販売されてましてね2024年5月9日現在)。劇場で入手できなかった私は、八つ当たり&悔し紛れに「こんな転売屋は悪だから、身元を突き止めて即・斬を!ヽ(`Д´)ノ キィィィィッ!」なんて勝手な憎悪を燃やしがちだったりするのですけれども。とはいえ、「石橋英子さんの音楽が大好きだから頑張って買ったけど、子どもの給食代が払えないから、泣く泣く手放そう… (ノω・、) ナクナク」という切ない事情だったのなら!? 自分の勝手な想像ではあるものの、そう考えてしまうと少し涙ぐんでしまったりするので今の私の精神状態はちょっと危険な可能性がありますが、他者に対する想像力は大事だし、こういうメッセージを説教臭くなくサラリと伝えてくるのが素晴らしい映画だなぁと。「悪」なんて存在しないのかもしれませんな…(すぐ影響を受けやすい51歳)

 

 

「特装版」、ほしかったけど、さすがに1万オーバーはキツいです。

 

 

ということで聴いてください、RHYMESTER「POP LIFE」

 

 

まぁ、本作で起きること自体はなかなか地味ではあります。この日、本作を観る前に私は4本の映画を観ていて。カトリックに誘拐された子どもを巡る話だったり、上海を舞台にしたスパイモノだったり、堕胎が禁じられている1960年代のアメリカで主婦が奮闘する物語だったり、岡田将生が白々しく人を殺しまくるジュブナイルだったりした中、(終盤の展開を除けば)本作が一番「大したことは起きない」んですよ。でも、例えば「高橋が薪を割るシーン」を1カット長回し撮っているんですが、ただそれだけのシーンで笑えるし、高橋に好感すら抱かせたりと、本当に上手くて。「本読み」を徹底しておこなうという「濱口メソッド」のおかげなのか、主演の巧を演じた大美賀均さん(なんとスタッフから抜擢されたそうですが、ちょっとドロッセルマイヤーズの渡辺範明さんに似てると思ったり)をはじめ、役者さんたちの演技には独特なリアルさと不思議な面白さがあって、「一般人の自然な会話の妙」を堪能している気分になれるんですよね。濱口監督、たいしたもの、ですな(偉そうに)

 

 

なんとなく貼っておきますね。

 

それにしても、何に驚かされたってラストの展開ですよ。高橋にスリーパーをかける巧を見て、私を含む多くの人が「えぇっ!? Σ(゚д゚;)」とビックリしたんじゃないでしょうか。まぁ、本作はいわゆる「オープンエンディング」というか、「解釈は人それぞれデスヨ (´∀`) デスヨ」といったムードなので、ここで「これが答えだ!m9`Д´) ビシッ」といった押しつけ感のある文章を書くのは野暮というものでしょう。とはいえ、自分なりに思ったことはあるワケで、私なりの解釈を残しておきますと。タイトルで「悪は存在しない」と言っているので、いきなり高橋にスリーパーをかけた巧は「悪ではない」んですよ。でも、じゃあ、なぜ巧は高橋にスリーパーをかけたのか? そしてなぜ「悪ではない」のか? その理由を3つほど考えてみました。

 

----------------------------------------

<① カッとなった。>

巧はあまり話さない人→それゆえ何を考えているかわからないワケで。実は高橋には相当ムカついていたのです。

 

( ゚д゚)

そりゃあ「飯を食べに行こう」と誘ったのはオレだけど、

こっちはオマエらに付き合わされてるんだから、飯代は払うのが普通じゃね?

こっちの時間を奪っといてなんだよ…。せめて財布出すフリぐらいしろよ。

なんかまだ自然とか舐めてるっぽいし、そもそもこいつらがこなかったら、

娘だってちゃんと迎えに行けたんだしさぁ。

考えれば考えるほど、ムカムカしてくる。

しかも、娘が鹿と相対している時、鹿を刺激しそうになったから、

「伏せろ」とか言うのも面倒くさくて、ついカッとなってやった。今は反省している。

 

そんなワケで、巧はカッとなってやったけど、反省しているので悪ではない。

 

----------------------------------------

<② 動転した。>

巧はあまり話さない人→それゆえ何を考えているかわからないワケで。実は巧なりにあわてていたのです。

 

(´Д`;)

娘と手負いの鹿を見つけた時、「刺激したらヤバい」とドキドキした。

そしたら高橋が娘の方に向かおうとしたから、ビックリして。

静かにさせようと思ったんだけど、咄嗟に言葉が出なくて、

ついスリーパーをかけちゃった。

娘のことしか頭になくて、その後も原っぱに放置しちゃったけど、

高橋には悪いことをしたな…。今は反省している。

 

そんなワケで、巧は動転しただけだし、反省しているので悪ではない。

 

----------------------------------------

<③ 高橋を試した。>

巧はあまり話さない人→それゆえ何を考えているかわからないワケで。実は巧は高橋を試していたのです。

 

( ̄ー ̄)

オレを慕ってくれる高橋のことは結構気に入ってて。

ちょっと教えただけで薪割りができてさ、なかなかスジがいい。

蕎麦屋で「温まりました」って感想を言って、店長に怒られたのも面白かった。

娘がいなくなった時も捜索を手伝ってくれてさ、イイ奴だなって。

ただ、オレから「いろいろと学びたい」というなら、今のままじゃダメだ。

一度、自然の厳しさをしっかり教えなくちゃいけない。

娘と手負いの鹿を見つけた時、高橋が娘の方に向かおうとしたから、

とりあえず伏せさせようとしたんだけど、ちょっと考えたら良い機会だなと。

オレが6歳の時、父親に原っぱに放り出されて単独でのサバイバルを強いられたように、

高橋もここから1人で帰るぐらいの根性がなければダメだと思って、

つい締め落としてみたけど、やりすぎだったかな…。今は反省している。

 

そんなワケで、巧は好意から締め落としただけだし、反省しているので悪ではない。

----------------------------------------

 

 

ううむ、自分で勝手に考えた<3つの理由>を並べてみましたが…。やっぱり「① カッとなった」と「② 動転した」は違う気がします(マッチポンプ的な文章)。というのは、どう見てもあの時の巧は冷静かつ理性的だったと思うんですよね…。わざわざ「スリーパー」という「技」を使っているワケだし、殺したかったのならちゃんととどめを刺すでしょうし、あの場であえて「落としただけ」というのは、やはり高橋のサバイバル耐性を試したのではないか。ということで、私の答えは③!m9`Д´) ビシッ

 

 

すみません、単にこの画像を貼りたいだけでした「ジョジョ第3部」第14巻より)。

 

 

その他、「陸ワサビで蕎麦を食べてみたい…」とか「『ドライブ・マイ・カー』のサントラを担当したことで監督と意気投合して、本作が作られるキッカケとなった石橋英子さんの『GIFT』が現時点では観られないのが残念(ライブ用サイレント映画版の「悪は存在しない」とのこと)」とか「とはいえ、悪は存在するよね…」とかとかとか、思うところはありますが、長くなるので割愛! 何はともあれ、いろいろと不要な駄文を垂れ流してしまうほどに、私はとても楽しめましたヨ (´∀`) ヨカッタワー 濱口監督、さすがのクオリティじゃないでしょうか。そりゃあ次回作も期待しちゃうし、未見の監督作もチェックしようかなぁと思っております。おしまい。

 

 

 

 

今まで観た3本の中で一番好きな濱口竜介監督作はこれですかね。

 

 

濱口監督を世界的に有名にした1本。心のない感じの岡田将生さんの演技が好きです。

 

 

とにかく評判が高い濱口監督作。いろいろあった作品ですが、観なくちゃなぁ。

 

 

これまた公開時から評判が良かった濱口監督作。観たいんですけど、上映時間が長いんですよね…(317分)。

 

 

ラストの余韻とか、少し思いだした映画。人間は自然には勝てんのじゃ…(ババさま風に)。