ようこそ、革命シネマへ(ネタバレ) | 三角絞めでつかまえて2

ようこそ、革命シネマへ(ネタバレ)

ようこそ、革命シネマへ

 


原題:Talking About Trees
2019/フランス、スーダン、ドイツ、チャド、カタール 上映時間97分
監督・脚本・撮影:スハイブ・ガスメルバリ
製作:マリー・バルドゥッキ
編集:ネリー・ケティエ、グラディス・ジュジュ

出演:イブラヒム・シャダッド、スレイマン・イブラヒム、エルタイブ・マフディ、マナル・アルヒロ、ハナ・アブデルラーマン・スレイマン

パンフレット:★★★(800円/スーダン事情が分かる解説記事、コラムが助かります…)

(あらすじ)
1956年のスーダン独立後に海外で映画を学び、スーダンで映画を製作してきたイブラヒム、スレイマン、エルタイブ、マナル。1989年には、スーダンに映画文化を根付かせるため「スーダン・フィルム・グループ」を設立するが、同年に誕生した軍事独裁政権によって言論の自由が奪われ、映画は発禁処分、彼ら自身も国外への亡命を余儀なくされた。それから20年以上の時を経て、映画産業が崩壊した母国スーダンで再会した4人は、「映画を再びスーダンの人々のもとに取り戻したい」というスローガンのもと、一夜限りで映画館を復活させるため行動を開始する。(以上、映画.comより)


予告編はこんな感じ↓

 

 


70点


基本的にはバイオレンスムービーを好む僕ですけれども、もうすっかり「ヒューマン・マーク47」(a.k.a.47歳のオッサン)なのだから、「教養として真面目なドキュメンタリー映画を摂取しておこう!(`・ω・´) キリッ」と思う気持ちもありましてね。さらに、リアルタイムで長州力選手天龍源一郎選手を観てきたプロレスファンとしては「革命」という言葉に弱いのもあって、つい本作の前売り券を購入。ただ、せっかく公開されたのに、なかなか劇場に足を運べなくて、気が付けば都内での上映は終了していた…ということで! 仕事をササッと片付けた8月21日(金)の昼下がり、片道約2時間&交通費約1600円かけて、いそいそと深谷シネマまで足を運んできました。とても良い映画体験でしたヨ (´∀`=) ヨカッタワー

 

 

前売り特典は「『映画を運ぶ』特製ステッカー」でした。

 

 

例によって、事前情報を入れないで鑑賞するタイプの人間なのでね(苦笑)、勝手に「過疎の村で『よーし、シネマで革命を起こすぜ!ヘ(゚∀゚*)ノ レッツビギン!』と、映画を撮影することで地元を活性化させる」といった「初期衝動で映画を撮る話」かと思っていたら、「軍事政権の独裁により、ほぼすべての映画が上映禁止になっているスーダンにて、平均年齢70歳オーバーの4人組『スーダン・フィルム・グループ(SFG)』が、なんとか公共の場で映画を上映しようとする」という「映画を劇場公開することすら大変な国のお話」だったから、スムースにビックリいたしました。で、一応、オチを書いておくと、「SFG」の4人は古い屋外劇場を借りて「革命(サウラ)」と名付けると、そこで「ジャンゴ 繋がれざる者」を上映しようとするも、結局は政府の許可が下りずに断念。ちょっと落ち込んだりもしたものの、地域で非公式の上映会を開いたり、メガホンを銃に見立ててぶっ放したりして、映画は終わってたんじゃないかしらん。

 

 

最後はこんな感じでしたな。
 
 

そういえば昔、好きな音楽を演奏することすらままならない状況の若者たちを描いた「ペルシャ猫を誰も知らない」なんて映画を観ましたが、本作では独裁政権のせいで「映画を撮ることも劇場公開することもできない」というのだから、クソみたいな国ってのはたくさんあるもんだなぁと。上映許可をもらおうとするも、政府のあちこちの部署をたらいまわしにされるシーンは、「日本でもあるある!(°∀°)b」と共感しながらも、結構不快でしたねぇ…(しみじみ)。ただ、本作が面白いのは、映像制作集団「SFG」の老人4人がとてもチャーミングだということ。彼らは困難にぶつかっても「まったく大変ですな ┐(´ー`)┌ ヤレヤレ」とユーモアを忘れないので、状況的にはなかなか酷い“市民への弾圧”が描かれているにもかかわらず、意外とホッコリしながら観られるんですよ。名著「いとしのおじいちゃん映画 12人の萌える老俳優たち」を出したナイトウミノワさんなど、「おじいちゃん萌え」の方は、絶対チェックした方が良いと思ったり、思わなかったり (・ε・) ドッチダヨ

 
 
例えば映画冒頭は、いきなり老人4人が「サンセット大通り」の撮影ごっこを繰り広げてましてね。

 

僕的には「何なのだ、これは…!?」と驚きつつ、ホッコリもした次第(「刃牙道」より)。

 
 
鑑賞後にパンフを読むと、79年生まれのスハイブ・ガスメルバリ監督が「SFG」の4人と出会って本作を撮る経緯や、過去から現在に至るまでのスーダン事情が書いてあったんですが、それがまた非常に面白くて。正直なところ、そこら辺もテロップやナレーションなどで反映してくれれば、もっと作品の背景がわかって楽しめたのに…と思わなくもなかったんですけれども(ちょっと「世界でいちばん貧しい大統領 愛と闘争の男、ホセ・ムヒカ」を観た時の印象に近い)。とはいえ、それこそが監督の狙いというか。要は、本作の原題「Talking About Trees」は劇作家ベルトルト・ブレヒトの1939年の詩「のちの時代の人々に」の一節から採られていて、元々の意味は「こんな時代に木々について語るなんて犯罪のようなものだ! それは恐怖や悪を前に沈黙するのと変わらない」ということなんですが、でも、本作はあえて「老人や市民たちが“木々について語る”」ことで“彼らがいる世界の背景”を浮かび上がらせているんですよね…という「GQ JAPAN」の篠儀直子さんの記事のPA-KU-RI!m9・∀・) ダイナシッ あと、本作の公開後、スーダンでは本当に革命が起こって30年間続いた独裁政権が倒されたというのは、偶然にしてもスゴいと思いましたよ。
 
 
 
その他、思ったことを書いておくと「途中で挟まれるイブラヒム・シャダッドの映画が面白そう」とか「やたらとアクション映画を推す男が好き」とか「映画の前説をしていたら、礼拝時間を知らせる放送に邪魔をされるくだりに笑った」とか「バースデーを祝う老人たちに萌え!」とか「編集のネリー・ケティエは本作の完成度に大きく貢献したのでは?」とかとかとか。映画が面白かっただけでなく、初めて訪れた「SR サイタマノラッパー」の聖地・深谷で、初めて深谷もんじゃを食べて、深谷シネマで初めての映画を観られたのも楽しかったし、お土産に買った「ふっかちゃんの深谷ねぎ味噌にんにく」も超旨かったし、トータル的にとても良い映画体験でしたヨ (´∀`=) ヨカッタワー 往復約4時間&交通費約3200円かかったものの、「映画館で映画が観られるって幸せなことなんだなぁ」としみじみ実感しつつ、今後も劇場に足を運ぶし、また深谷シネマに行こうと思います…往復約4時間&交通費約3200円かかりますがー。

 

 

深谷に行った日のgif。帰りは人身事故の影響で、赤羽から野方までバス移動したんですけど、ついラーメンを食べちゃったのでした。


 

おしまい (´∀`=) ヨカッタワー
 
 
 
 
「スーダン・フィルム・グループ」がスーダンで上映しようとした映画。僕の感想はこんな感じ。
 
編集のネリー・ケティエが関わっている作品。僕の感想はこんな感じ。
 

こちらは自由に音楽ができない若者たちのお話。僕の感想はこんな感じ。