さよならテレビ(ネタバレ) | 三角絞めでつかまえて2

さよならテレビ(ネタバレ)

※本作は間違いなく「ネタバレを知らないで観た方が面白いドキュメンタリー」なので、未見の人は観てから読んで!










さよならテレビ



2019/日本 上映時間109分
監督:土方宏史
プロデューサー:阿武野勝彦
撮影:中根芳樹
音声:枌本昇
音響効果:久保田吉根
TK:河合舞
編集:高見順
音楽:和田貴史
音楽プロデューサー:岡田こずえ
出演:澤村慎太郎、福島智之、渡邊雅之、土方宏史
パンフレット:★★★★☆(700円/コラムの人選が良いし、阿武野勝彦さんの「セシウムさん騒動」の証言が衝撃的でした)
(あらすじ)
潤沢な広告収入を背景に、情報や娯楽を提供し続けた民間放送。しかし、テレビがお茶の間の主役だった時代は過去のものとなり、テレビを持たない若者も珍しくなくなってしまった。マスメディアの頂点に君臨していたテレビが「マスゴミ」とまで揶揄されるようになったのは、市民社会が成熟したのか、それともテレビというメディア自体が凋落したのか。テレビの現場で何が起きているのかを探るため、自社の報道部にカメラを入れ、現場の生の姿を追っていく。(以上、映画.comより)

予告編はこんな感じ↓




90点


※本作は間違いなく「ネタバレを知らないで観た方が面白いドキュメンタリー」なので、未見の人は観てから読んで!(2回目)
※今回の記事は、「ユージュアル・サスペクツ」「ファイナル・ブラッド」のネタバレに触れているので、未見の人は観てから読んで!


Twitterを相互フォローしているsuido_morikoさんからリクエストをいただいたので、本日はなんとなく本作の記事をアップしておきますよ。1月23日(木)、仕事で横浜に行った際に少し時間が空いたので、シネマ・ジャック&ベティをチェックしたところ、ちょうど本作が始まるところでしてね。基本的に「東海テレビのドキュメンタリー」は嫌いじゃないので、チケットを購入。そそくさと鑑賞いたしました。「やるじゃないか… (`∀´;) フフ...」と思ったり。


劇場はスクリーン・ベティの方。8割ぐらい埋まってましたよ。


鑑賞後の僕の気持ちを代弁する本部以蔵を貼っておきますね(「刃牙道」より)。



今まで東海テレビが「ドキュメンタリー劇場」として劇場公開したのは本作を含めて12本であり(「司法シリーズ」を合わせると20本になる)、僕的には6本しか観ていなかったんですが、どれも攻めた作品でしてね…。しかも、今回はあの「ホームレス理事長」「ヤクザと憲法」を撮った土方宏史監督作(※本来は土方の「土」に点が付く)ということで、どうなるのかと思いきや、案の定、スゲー面白かった!ヽ(`Д´)ノ ウォォォォッ パンフのコラムで大谷昭宏さんが書かれていましたけど、テレビ関係者の間で「地上波で放送された時の録画」が「海賊版」として出回っていた…というのも、あながち大げさな話ではないなと。しつこいようですが、本作は「ネタバレを知らないで観た方が面白いドキュメンタリー」であり(3回目)、決してDVD化もされないのでね、興味がある方は即座にこんなブログを読むのをやめて、いそいそと劇場に足を運んでいただければと思います。


なんとなく東海テレビの公共キャンペーン・スポットを貼っておきますね↓




内容を適当かつ雑に書いておくと、土方監督は2016年6月から自社(a.k.a.東海テレビ)の報道の現場を取材対象にすることにしましてね。ところが、報道部の方々に猛反発されて、撮影は即中止。2ヵ月後、「マイクは机に置かない」「打ち合わせの撮影は許可を取る」「放送前に試写を行う」という取り決めをして撮影が再開されると、東海テレビのアナウンサーであり“すでにテレビマンである男”福島智之さん(37)、契約のベテラン記者で“テレビマンになってしまった男”澤村慎太郎さん(49)、派遣の新人記者で“テレビマンになろうとする男”渡邊雅之さん(24)の3人が、報道&取材の現場でもがきながらも前に進む姿が描かれるのです。


ということで、唐突ですが聴いてください、石原慎一さんで「仮面ライダーAGITO」




福島さんは「東海テレビの顔」として重責を担いつつも、過去に「セシウムさん騒動」を体験しているだけに、自分の表現に対して超慎重になってまして。上がらない視聴率との狭間で苦しんで、自分と「殺処分されそうな猫」を重ねたりしてね。ベテラン契約記者の澤村さんは「企業やスポンサーの要望に応える“Z=是非ネタ”」をこなしつつ、「権力を監視する」というメディア本来の目的を果たしにくい現状に苛立ちを隠せない。派遣という立場の渡邊さんは、彼なりに頑張るも確認作業を怠って企画が飛んだりして。上司に怒鳴られてションボリしつつも、好きなアイドルの現場に通って元気をもらう…ってな調子。社員、契約社員、派遣という異なった立場の3人を通して見る「テレビの世界」はなかなか刺激的で(年齢も30代、40代、20代とバラバラ)、時間が経つのがあっという間でしたね〜。


東海テレビのアナウンサー、福島さん。「セシウムさん騒動」の時の人だったとは… (`Δ´;) ヌゥ


ベテラン記者の澤村さん。自宅の本棚が良い感じでした。


派遣記者の渡邊さん(右の人)。鑑賞中はずっと彼を応援してましたよ。



で、何に驚かされたかってラスト。福島さんはメインキャスターを下ろされつつもレポーターとして「今までになかった引き出し」を開けるようになって、渡邊さんは東海テレビとの契約を打ち切られるも別のテレビ局で再スタートして(グルメレポートの上達振りが泣ける!)、どことなく「オレたちのテレビはこれからだッ!ヽ(`Д´)人(`Д´)人(`Д´)ノ」的なムードで終わるのかと思いきや! 澤村さんが土方監督に向かって「こんなヌルい結末でいいんですか? テレビの闇って、もっと深いんじゃないですか!? ( ゚д゚)」なんて問い掛けると、本作が「筋書きのあるドキュメンタリーだった」ことが次々と明かされていくからビックリですよ。要は「アナタが見てきたものだって信用できないんですよ?」といった「ドキュメンタリーは嘘をつく」的なメッセージを突き付けられるというね。


最後の最後に監督の暗躍(?)が明かされるのです。



まぁ、「ウソかな、本当かな ( ̄ー ̄) フフッ」的なオチを持ってくるドキュメンタリーは今までも「なくはない」んでしょうけど(森達也監督の「FAKE」とか)、ここまでちゃぶ台を返す作品は初めて観たというか(って、劇中で描かれてきたことを全否定するラストではないんですが)。どことなく「ユージュアル・サスペクツ」「ファイナル・ブラッド」のオチを連想いたしました。僕的に興味深かったのが、契約を切られて金に困った渡邉さんに土方監督がお金を貸しているシーンで、「ホームレス理事長」の時は頑なに断っていた監督が成長した…というよりは“変化”を感じた次第。まぁ、何はともあれ、スゲー面白いドキュメンタリーだったのは間違いないです。


「ホームレス理事長」の借金申し込みシーン。この映画も見事なので、機会があったら観て!
借金の申し込み


って、ベタ褒めですけど、大きな不満があって。なんて言うんですかね、最後の「ヤラセだったー!」的な種明かし展開は確かに楽しかったものの、ごめんなさい、「そんなこと分かってるよ (゚⊿゚)」と思っちゃう僕もいたというか。今どき「ドキュメンタリーには撮影者の思惑が反映されている=絶対的な客観性は存在しない」なんてことは、B.B.クイーンズが「そんなの常識〜 川`∀´)`∀´) タッタタラリラ」と歌い出すレベルであり(苦笑)、それをドヤ顔で提示されても…ってのは意地悪ですかね。つーか、そもそもこの文章を読んでいるアナタは「このブログも信用できない」ってことが分かっていますか? 例えば、主要登場人物が3人だとつい「仮面ライダーアギト」を重ねがちなだけで、上記の“テレビマン〜”云々の例えは本作の内容と合っていないし、大体、本作を観たのは「仕事で横浜に行った際に少し時間が空いたから」なんかじゃない(この日、横浜で仕事なんてなかった)。

昨年、せっかく「ラスト・ムービースター」の前売り券を買ったのに、都内上映中は足を運ぶ余裕がなくて。このまま無駄になっちゃうのかな…とアンニュイな気持ちでいたら、なんと「1月からシネマ・ジャック&ベティで上映される」ことになっていたから、横浜まで行く気マンマンになりましてね。で、せっかく遠出するのだから他にも何か観ようかとチェックしてみれば、本作も上映されることになっていて、「そう言えば『バラいろダンディ』で水道橋博士がオススメしてたっけ (・ε・)」と鑑賞決定。1月23日(木)に行ったのは、1100円で観られるメンズデーを利用するためだったのです!(本作を観た後は「ラスト・ムービースター」をハシゴ→新宿で「リチャード・ジュエル」を鑑賞) …って、ごめんなさい、本作に倣って「実は真実はこうだったー!Σ(゚д゚;) ゲェーッ」的な展開を僕なりにブログで再現してみようと頑張ってみたんですけど、いろんなことが思い通りにいかなかったな…浅はかだったな… (ノω・、) アタシッテホントバカ


なんとなく1月23日のgifを貼っておきますね。


ここまで読んだ方の気持ちを代弁する範馬刃牙を貼っておきますね(「範馬刃牙」より)。



ううむ、例によってバカな文章を垂れ流しちゃいましたが(汗)、とは言え、ラストに不満を感じたのは本当なんですよ。だって、本当の「テレビの問題」は「既得権益」じゃないですか。不況やらグローバル化やらとさまざまな要因が重なって「パイ」が狭くなり、どんなに努力しようとも昔のようには稼げなくなっている現在、広告収入などの売上げが減ったら、お偉いさんの給料やら待遇やらはそのままに、「下請けの予算を削る」。「働き方改革」をせざるを得ない状況になったら、社員にはちゃんと反映させるけど、「派遣を雇って酷使&使い捨て」。要は、今まで散々チューチュー吸ってきた「甘い汁」が最近は吸えなくなってきたから、なりふり構わず是非ネタやイベント開催に力を入れちゃうし、そのためなら別に公共性や外部スタッフが犠牲になっても仕方ない…って姿勢こそが「テレビの問題」なんじゃないでしょうか。

まぁ、劇中でも澤村さんや渡邊さんを取り上げることでその問題に触れていたし、パンフでプロデューサーの阿武野勝彦さんが「外部スタッフの弁当の米の色が黄色(古米)だった」といったことを書かれていたりと(「その恨みが『セシウムさん騒動』に繋がった=テロだったのでは?」という雰囲気)、もちろん製作者サイドもそんなことは分かっているんでしょうな。大体、これって決してテレビだけの話じゃなくて、結局、日本社会全体の問題なだけにどうにもならなそうだし…。ただ、あんなわかりやすい「衝撃的なラスト」で終わることで「肝心の問題」を誤魔化されてしまった気がして、驚きつつもあまり乗れなかった…って、伝わりにくかったらゴーメンナサイヨ ( ゚д゚) ゴーメンナサイヨ


なんとなく在りし日のアンディ・フグを貼っておきますね↓




とは言え、トータルすると超楽しんだし、あらためて東海テレビのスゴさを思い知ったというか、「やるじゃないか… (`∀´;) フフ...」と感心した次第。今のところ、今年のベスト10には入るぐらいに好きな映画でございます。東海テレビ&土方宏史監督にはこれからも挑戦的なドキュメンタリーを作ってほしい…なんて、それっぽい文章を残して、この感想を終えたいと思います。おしまい。




ちょっと思い出した森達也監督作。僕の感想はこんな感じ。



ちょっと連想したジャン=クロード・ヴァン・ダム主演作。僕の感想はこんな感じ。