カメラを止めるな!(ネタバレ) | 三角絞めでつかまえて2

カメラを止めるな!(ネタバレ)

※本作については、ヒナタカさんの解説記事を読むと良いけど、その前に劇場へ観に行って!m9`Д´) ビシッ
※ムービーウォッチメンのリンクなどを追記しました(7/15)


<この感想文を読む前に>

この世界には「ネタバレを知らないで観た方が絶対良い映画」というのが確実にあって、本作はモロにそんな感じでしてね。僕がダラダラと書いた駄文を読む前に、ぜひ劇場に足を運んでほしいのです。

まぁ、もしかすると、現在公開中の映画館では連日満席が続いている→なかなかチケットが取りづらい→「面倒くさいから観ねぇよ!( ゚д゚)、ペッ」なんて思う人もいるかもしれません。いや、実は僕も今週の月曜日に観るつもりだったのが、満席で断念してましてね。僕からすればさぁ、前評判の高さとか「町山智浩さんが褒めた!」とかも知ったこっちゃなくて(苦笑)。「テアトロコントvol.26」を観た時に本作の主演の濱津隆之さんが貧しいムードで告知していたから、「いかにも“つまらなさそうな低予算ゾンビ映画”だけど観に行ってやるか! (`∀´) フハハハハハ」と上から目線で前売り券を買っていたワケでさぁ(いろいろと失礼な文章)。要は、こっちが「観てやろう」気分だったのに、門前払いを食らわされるなんてマジで腹が立ったというか。「あの映画はすっぱいに違いない (`Δ´;) フン!」と思って観ないことにしたーー。そんなふうに考えていた時期が俺にもありました。

なんとなく達観したムードの範馬刃牙を貼っておきますね(「バキ」より)。
三角絞めでつかまえて-俺にもありました

すぐに気を取り直した翌火曜日、新宿のケイズシネマで観てみれば、「観て良かった」のひと言で、水曜日にも「生き返り割り」を活用して、池袋のシネマ・ロサで観てしまったほど。ハッキリ言って、「今年のベスト」どころか生涯ベスト級の1本であり、もし未見の人がこの駄文を読んでいるのなら、ゾンビ映画が苦手だったとしても、騙されたと思ってすぐ観に行ってほしいのです。そして、本当に「騙された!ヾ(。`Д´。)ノ プンプン!」と思ったら、本作を撮った上田慎一郎監督はTwitterをやられているので、文句はそちらにお願いいたします(酷い着地)。

ケイズシネマのロビーはこんな感じ。


撮影を許可してもらったので、出演者の舞台挨拶を貼っておきますね。


で、このチケットがあれば、別の劇場でも1000円で観られるのです ( ̄ー ̄) ニヤッ


翌日、池袋のシネマ・ロサへ。


劇場ロビーには記事の切り抜きや…。


顔出しパネルなどがありましたよ。


こちらでも舞台挨拶があって、パンフにサインをもらっちゃったというね (´∀`=) タカラモノ









カメラを止めるな!



2017/日本 上映時間96分
監督・脚本:上田慎一郎
プロデューサー:市橋浩治
撮影:曽根剛
録音:古茂田耕吉
編集:上田慎一郎
助監督:中泉裕矢
特殊造形・メイク:下畑和秀
ヘアメイク:平林純子
制作:吉田幸之助
アソシエイトプロデューサー:児玉健太郎、牟田浩二
出演:濱津隆之、真魚、しゅはまはるみ、長屋和彰、細井学、市原洋、山崎俊太郎、大澤真一郎、竹原芳子、吉田美紀、合田純奈、岩地紗希奈、秋山ゆずき、山口友和、藤村拓矢、高橋恭子、イワゴウサトシ
パンフレット:★★★★★(800円/裏表紙が劇中に出てくる台本のデザインになってる&シナリオも収録されてて、記事がネタバレ全開なのも好き)
(あらすじ)
とある自主映画の撮影隊が山奥の廃墟でゾンビ映画の撮影をしていたが、そこへ本物のゾンビが襲来。ディレクターの日暮は大喜びで撮影を続けるが、撮影隊の面々は次々とゾンビ化していき……。(以上、映画.comより)

予告編はこんな感じ↓




100点


文句なしじゃッッ!!! Σ(°д°;)


鑑賞後の僕の気持ちを代弁する徳川光成を貼っておきますね(「刃牙道」より)。



映画が始まると、「低予算感溢れる撮影現場でゾンビ映画を撮っていたら、本当にゾンビに襲われちゃった!ヽ(´Д`;)ノ キャー!」みたいなドラマがワンカットで展開されましてね。正直なところ、「見るに忍びない… (´・ω・`)」というかさ。主演の濱津隆之さんは「本物の映画が撮りたいんだぁー!ヘ(゚∀゚*)ノ ヒャッハー!」的な暴走監督を演じているけど、「ミズタニー」で彼のお芝居を何度か観ている僕的にはミスキャスト感があって。しかも、ところどころ変な間ややり取りがあったりするし、不自然なアップが続いたりもするし…。最近の邦画のゾンビモノでは「アイアムアヒーロー」が素晴らしかっただけに、ごめんなさい、頑張ってはいるのはわかるけど(汗)、「今どき、このクオリティで勝負するのかよ… (´Д`;)」なんて思ったりしちゃうのが人情じゃないですか。


映画スタート直後の僕の気持ちを代弁する老人を貼っておきますね(「範馬刃牙」より)。



とは言え、本作がENBUゼミナール主催のシネマプロジェクトで作られた作品=超低予算なのはボンヤリとわかっているので(そもそも主演が濱津隆之さんという時点で)、優しい気持ちで観ようと。まぁ、メタ的な脚本はそこそこ愉快だし、首が切断されるとちゃんと切り株が映るのはうれしいし、何よりも工夫を凝らしたワンカット映像は頑張ってるし…。しかも、最後に監督を殺害して放心状態になるヒロインの表情やその映像処理が実に“魔界に入った”感があったし、ヒロインが“血で描かれた五芒星”の上に立つ→「ONE CUT OF THE DEAD」のタイトルが出るオチにも少しグッときたりして、トータルすると「それなりに話題になるのも…わかる…かなぁ…?」なんて、微妙な気持ちでエンドクレジットを眺めていたんですが、しかし! ここからが超面白くなるのだッ!m9`Д´) ビシッ


このゾンビドラマは“最初の37分間”だけなのです。



場面が変わって、濱津隆之さんが演じる「安い、早い、質はそこそこ」が売りの日暮という監督が登場しましてね。そこから「なぜこのワンカットゾンビドラマが作られたのか?」が描かれていくから「そ……ッッ、そうきたかァ〜ッッ (`Δ´;) ヌゥ」と。監督インタビューによると、「GHOST IN THE BOX!!」という小劇団の舞台がヒントになったそうですが(最初の1時間でサスペンスを描いて、その後にその種明かしをする二重構造だとか)、後半では「ONE CUT OF THE DEAD」での不自然な展開や演出の理由が次々と明かされるので、前半で「ここがダメだよなぁ ( ´_ゝ`)」なんてしたり顔で観ていた場面が次々と爆笑ポイントに変わるのです。


後半は、ドラマの制作過程と撮影現場の裏側が描かれまして。


僕はすっかり烈海王気分でしたよ(「バキ」より)。
そ...そうきたかぁ〜


しかも、単に種明かしをするだけでなく、「昔は仲が良かったのに今はすっかり娘に嫌われてしまった父親のドラマ」「1つのものをみんなで作り上げていく大変さと面白さ」巧妙な伏線とともに繰り広げられるから、マジで何の文句も挟めないというか。例えば「組み体操のピラミッドの上に監督が乗って娘を肩車することにより、クレーンショットを成功させるラスト」、娘がアレを思いつくのは監督が台本に“幼いころの娘を肩車していた写真”を挟んでいたからですが、それはその前に“アル中俳優”細田が娘の写真を台本に貼っていたのを見て真似したワケで。しかも細田との場面は、彼が撮影中に酒を飲んでしまうことの伏線にもなっていたりしてね…(細田のキャラはちょっと「レスラー」のラムっぽい)。全編そんな感じでしっかり練られているから、本当に見事な脚本だと唸らされた次第。ちなみにパンフの水道橋博士さんのコラムによると、監督は三谷幸喜さん演出の舞台の影響を受けていて、「ショウ・マスト・ゴー・オン 幕を降ろすな」が一番好きなんだとか (゚⊿゚) ヘー


濱津隆之さん演じる父親と…。


真魚さん演じる“昔は父親に憧れていた娘”のドラマがまたグッとくるというね。



劇中の登場人物は役者さんたちを当て書きしたそうですが(ほとんどの役名が本名を少し変えただけになってる)、そこら辺も上手かった。濱津隆之さんは“気弱な監督&父親”がピッタリで、だからこそ急遽代役として“監督”を演じることになった時の“怒りの爆発”には腹を抱えて笑いましたよ。あと、「ワンカットで生放送のゾンビモノなんてありえないだろ」とは思ったものの、プロデューサーのおばちゃんをスゲー適当に描くことで、「コイツならやりかねんな (`Δ´;) ヌゥ」という妙な説得力を生み出していて、そういうバランス感覚も絶妙だったのではないでしょうか(ドラマ後半、ヒロインの顔がずっとアップになっている不自然な場面はさすがに文句を言うだろと思ったら、おばちゃんにスマホをいじらせていたのは心底感心した)。その他、思ったことを雑に書いておくと、「秋山ゆずきさん演じる女優の『よろしくでーす』の台詞がムカついて最高!」とか「舞台挨拶後、カメラマン助手を演じた岩地紗希奈さんに『走っている場面でズルッと転ぶシーンは演技』と聞いてビックリ」とか「主題歌の『Keep Rolling』も良かったので、つい買っちゃった♪ (´∀`=) ウフフ」とか「パンフで水道橋博士さんが書かれていた「『「三谷幸喜監督の映画が芝居ほど面白かったら良いのに」……という、邦画ファンの見果てぬ夢を既に叶えている』という文章はスゲー笑った」とか「シネマ・ロサの舞台挨拶で“出演者同士がケンカする小芝居”が繰り広げられたけど、『童貞。をプロデュース』舞台挨拶騒動を連想して不穏な気持ちになった…」とかとかとか。


竹原芳子さん演じるプロデューサー(右端)がまた素晴らしいのです。



なんて言うんですかね、僕はまず「キツツキと雨」的な「みんなで何かを作る」系映画に弱い上に(アレもゾンビモノでしたな)、本作の“父と娘”要素がとにかくストライクでしてね… (ノω・、) グスン 娘の真央を演じた真魚さんが不機嫌な顔ばかりしていただけに、ラストの笑顔がまたスゲー最高でさ、思い出すだけで今も涙が止まらない感じ。しかも、超低予算&役者さんたちだって無名の人ばかりなのに連日超満員になってさ、パンフによると、ラストの組み体操シーンは何度やっても上手くいかなくて、本番当日にやっと出来た15秒だった…なんてエピソードも胸に刺さってくる。別に僕なんぞ大した人間じゃありませんが(苦笑)、こういう“素敵な奇跡”を見せられるとね、「頑張れば、僕にも何かできるのかな」なんて、少しポジティブな気持ちになったりもして。僕的には文句のつけようもなく100点の映画であって、これが長編デビューという上田慎一郎監督の作品は今後絶対チェックするし、出演者&関係者には本作をキッカケに全員幸せになってほしいし、また「生き返り割り」を利用して観に行くつもりだし(すべてわかってから観るとまた愉快なのです)、ソフトがリリースされたら購入する予定でございます。おしまい。

※宇多丸師匠によるネタバレを防ぐための新しいカタチの時評がアップされているので、ぜひ読んで! つーか、時評を聴いて思い出したんですが、最初のドラマパートでカメラに血が飛ぶ→指で拭くシーンを観て、「この後にメタ的な展開が始まるのかな?」なんて考えたんですよね、そう言えば(ただ、ホラー的な枠組みだと思ってた)。あと、エンドクレジットのメイキングがまた超素晴らしかった…ということを書き忘れてましたよ、すみません (´∀`;) エヘヘ




山本真由美さんによる映画の主題歌。メインテーマも売られております。



ちょっと連想した沖田修一監督作。僕の感想はこんな感じ



上田慎一郎監督が影響を受けたという三谷幸喜監督演出の舞台。ちょっと興味あり。



最近観たゾンビ映画で一番良かった作品。僕の感想はこんな感じ



“超低予算映画の奇跡”繋がりで思い出した入江悠監督作。大好きです。