聖なる鹿殺し キリング・オブ・ア・セイクリッド・ディア(ネタバレ) | 三角絞めでつかまえて2

聖なる鹿殺し キリング・オブ・ア・セイクリッド・ディア(ネタバレ)

聖なる鹿殺し キリング・オブ・ア・セイクリッド・ディア



原題:The Killing of a Sacred Deer
2017/イギリス、アイルランド 上映時間121分
監督・製作・脚本:ヨルゴス・ランティモス
製作:エド・ギニー
製作総指揮:アンドリュー・ロウ、ダニエル・バトセック、サム・ラベンダー、デビッド・コッシ、ニッキー・ハッティング、アミット・パンディヤ、アン・シーアン、ピーター・ワトソン、マリー=ガブリエル・スチュワート
脚本:エフティミス・フィリップ
撮影:ティミオス・バカタキス
美術:ジェイド・ヒーリー
衣装:ナンシー・スタイナー
編集:ヨルゴス・モブロプサリディス
出演:コリン・ファレル、ニコール・キッドマン、バリー・コーガン、ラフィー・キャシディ、サニー・スリッチ、アリシア・シルバーストーン、ビル・キャンプ
パンフレット:★★★(600円/高橋諭治さんのコラムがわかりやすかった)
(あらすじ)
郊外の豪邸で暮らす心臓外科医スティーブンは、美しい妻や可愛い子どもたちに囲まれ順風満帆な人生を歩んでいるように見えた。しかし謎の少年マーティンを自宅に招き入れたことをきっかけに、子どもたちが突然歩けなくなったり目から血を流したりと、奇妙な出来事が続発する。やがてスティーブンは、容赦ない選択を迫られ……。(以上、映画.comより)

予告編はこんな感じ↓




70点


ヨルゴス・ランティモス監督については、前作の「ロブスター」は未見だったものの、日本初公開となった「籠の中の乙女」は観てましてね。本作が同監督の映画だと知って、なんとなく興味が湧いたので前売り券を購入。公開して間もない3月上旬、横浜のシネマ・ジャック&ベティで観てきました(その後、横浜シネマリンに移動して、「霊的ボリシェヴィキ」を鑑賞)。「面白いけど、納得できーん!ヽ(`Д´;)ノ」って感じでしたよ。


前売り特典は「オリジナルクリアファイル」でした。


劇場にはこんな記事の切り抜きがありましてね。


スクリーン・ジャックの方で、劇場で売っていたカメヤのパンを食べながら観たのです。


ちなみに、シネマカリテには水槽の展示があったりして。


「鹿魚」の異名を持つ「タカノハダイ」を選んだ理由が書かれていましたが、なかなか強引… (`Δ´;) ヌゥ


タカノハダイ、スイスイと泳いでいましたよ。



まず、劇中の時系列を無視しながら適当かつ雑にあらすじを書くと、美しい妻&子ども2人と暮らす心臓外科医のスティーブンは、酒に酔った状態で手術をしたせいで、患者を殺してしまったものの、責任からは上手いこと逃れまして。ただ、負い目を感じていたので、やたらと面会を求めてくる“死んだ患者の息子”マーティンには場当たり的かつ弱腰な親切対応をしてみるも、精神的にジリジリと追い詰められた挙げ句、「自分以外の家族3人は数日後に絶命するけど、1人選んで殺せば他の家族は助かるッス (・∀・) ニヤニヤ」なんて超ハードな呪いをかけられちゃうから、さぁ大変!Σ(°д°;) タイヘーン! で、「あーだ!川`Д´)ノ キィィ!」「こーだ!m9`Д´し ビシッ」「そーだ!ヘ(゚∀゚*)ノ ホエホエ!」と家族総出で揉めた結果、最終的にはスティーブンが“見えない状態”で銃を発砲→息子が死亡。ラストは、呪いが解けて生き残った家族3人がダイナーでマーティンを見かけるも、なんとなくアンニュイなムードで終わってましたよね、たぶん。


父親のツケを他の家族が支払うハメになるのです。



とりあえず感心したところを書くと、「厭な不条理劇」という形容がこれほどピッタリな作品はないんじゃないかと。“信用できる映画ライター”真魚八重子さんによる「映画秘宝2018年04月号」の紹介記事によると、本作の“着想を得たテーマの1つ”がギリシャ悲劇「アウリスのイピゲネイア」だそうでして(タイトルはこれが由来&劇中で触れるシーンがある)。過去には「テオレマ」という類似したイメージの作品もあるそうな。で、僕的に連想したのは、罪を揉み消したせいでジプシーに呪いをかけられる「痩せゆく男」と、厭な少年に家を乗っ取られそうになる「魔少年ビーティー」「そばかすの不気味少年事件の巻」あたりでしてね(荒木飛呂彦先生は映画好きなので、何かの作品のオマージュの可能性アリ)。まぁ、どちらもホラーの定番的な話ではありつつも、本作はその上、「スティーブンに家族のうち1人を殺すことを選択させる(加害者自体には危害を加えない)→死にたくない家族たちが次々とスティーブンに媚びていく」という展開がフレッシュだなぁと。


奥さんが「旦那の好きなポーズ」をして媚びるシーンの痛々しさとか凄まじいのです。



つーか、ストーリーは真綿で首を絞めるようにじわじわと厭な展開に転がっていくし、映像は登場人物たちを観察しているような冷たい雰囲気にもかかわらず、どこか滑稽なムードが流れているのは、同監督の「籠の中の乙女」っぽいなんて思ったりもしましたよ。しかも、役者さんたちがまた良い感じに厭な感じであって、特にマーティン役のバリー・コーガンの不気味さは100点!m9`Д´) ビシッ その母親役で登場したアリシア・シルバーストーンの“切ないおばさんムード”も素晴らしかったなぁ。あと、「手足の麻痺→食欲の低下→目から出血→死亡」という呪いの段階も好みでしたね。


「映画史上もっとも癪に障るスパゲティの喰い方」(by 映画秘宝)を披露するバリー・コーガン。最悪でした(誉め言葉)。


アリシア・シルバーストーンの「どこか切羽詰まってる」ムードも良かったです。


目から血が出る演出って、素敵ですよね (´∀`) ウフフ



ただ、乗れないところを書くと、あまりにも不条理だなぁと。そりゃあ、監督はあえて不条理劇に仕上げているんだから不条理で当然なんだけど、ちょっと不条理すぎて、さすがの僕も不条理に感じた…って、なにこのバカな文章!Σ(°д°;) ヒィ! いや、僕がこの世でトップクラスに嫌いな言葉が「親の因果が子に報う」でしてね。ハッキリ言って、子どもの立場からすれば「ふざけんな ( ゚д゚)、ペッ」って話でしかないじゃないですか(“子どもの人生”を無視した話というか)。つーか、呪いをかける方法があるなら、解く方法だってあるだろうに、主人公が呪術的な方面での探求をしないのもイラッとしたしさぁ(外科医としてのプライドを捨てられなかったということかもしれませんがー)。ちくしょう、本作の不条理っぷりが面白かったのは確かではあるものの、「自分だったらどうしよう?」なんて考えるのは監督の手のひらで踊らされているようで、なんとなく腹が立ってしまって。鑑賞後は「面白いけど、納得できーん!ヽ(`Д´;)ノ」という気持ちに陥った次第。


僕の心境を代弁する相原コージ先生を貼っておきますね(「サルまん」より)。
納得できーん!


とは言え、こんな映画もなかなかないと思うので、トータル的には観て良かったです (・∀・) ヨカッタ! 寓話っぽい話や厭な映画が大好きな人は、絶対チェックした方が良いですぞ。おしまい。




デジタル盤のサントラ。輸入盤もあります。



ヨルゴス・ランティモス監督の前作。観なくちゃなぁ。



ヨルゴス・ランティモス監督の日本初公開作。僕の感想はこんな感じ