殺されたミンジュ(ネタバレ) | 三角絞めでつかまえて2

殺されたミンジュ(ネタバレ)

殺されたミンジュ

殺されたミンジュ

原題:일대일/One on One
2014/韓国 上映時間122分
監督・製作総指揮・脚本・撮影・編集:キム・ギドク
出演:マ・ドンソク、キム・ヨンミン、イ・イギョン、チョ・ドンイン、テオ、アン・ジヘ、チョ・ジェリョン、キム・ジュンギ
パンフレット:★★★(700円/監督インタビューがわかりやすくて良かったです)
(あらすじ)
5月のある晩、ソウル市内の市場で女子高生ミンジュが屈強な男たちに殺害された。しかし事件は誰にも知られないまま闇に葬り去られてしまう。それから1年後、事件に関わった7人の容疑者のうちの1人が、謎の武装集団に拉致される。武装集団は容疑者を拷問して自白を強要。その後も武装集団は変装を繰り返しながら、容疑者たちを1人また1人と拉致していく。そして容疑者たちの証言により、事件の裏に潜んでいた闇が徐々に浮かび上がっていく。(以上、映画.comより)

予告編はこんな感じ↓




75点


※この映画に関しては、なめブログさん映画批評的妄想覚え書き/日々是口実さんの記事が良かったので、そっちを読んで!

具体的な内容はわからないものの、「少女が殺される」「R18指定」ということで、娘がいる身としてはキツそうだなぁと。キム・ギドク監督作は「嘆きのピエタ」しか観たことがないんですけど、あれも超ヘビーだったから、そのままスルーするつもりだったんですが、しかし。仕事が暇になった2月上旬、「サウルの息子」を観てゲンナリした後、続けて3回目の「クリード」を観たら、超テンションが上がりましてね。ポスターが「ケルベロス」っぽくてカッコ良く見えたのもあり、なんとなく「お父さん、ついでにキム・ギドク監督作も観ちゃおうかな (`∀´) ケケッ」なんて心境になったので、いそいそとヒューマントラストシネマ有楽町に戻って観て来ました。「ナイス直球!m9`Д´) ビシッ」と思ったり。


このポスター、「ケルベロス」っぽいですよね?
殺されたミンジュを観ました

生ハム&トマトのフォカッチャを買っちゃった…。ちなみに場内は結構埋まってました。
生ハム&トマトのフォカッチャ


映画が開始早々、制服を着た少女ミンジュが男たちの集団にガムテープをぐるぐる巻きにされて、殺害されまして。この時点ではスゲー腹が立っていたんですけれども。事件の1年後、謎の集団(パンフには「シャドーズ」と書かれてました)が呑気に暮らしていた実行犯たちを1人ずつさらって拷問にかけ始めると、「あっ、これ大好物じゃん!(*゚∀゚)=3 ムッハー」とテンションはガンガンズンズングイグイ上昇! 釘を打ち込んだ棍棒での殴打とか水責めとか鎖で体を引っ張ったりとか電気とか、とにかく愉快なんですね。まぁ、もう少しグロい方が好きだし、「基本的には殺さない」のは残念だったものの(罪を自白させて調書を取るだけ)、なかなか楽しく観られました。


冒頭で殺されたミンジュ。韓国語で「民主主義」という意味らしいですが、劇中で名前の説明はナシ。
殺されてしまった少女

そして1年後、殺害に関わったクズどもが次々と囚われる→拷問されるのです。
尋問される犯人たち

僕は「徳川光成から最大トーナメントの開催を聞かされた範馬刃牙」のような心境になりましたよ。
サイコーじゃないっすか!


クズどもを拉致するシャドーズは軍服を着ていたりして、相当スゴい組織なのかと思いきや! 最初に拷問されて、何とか一矢報いたいと思っていた容疑者①(キム・ヨンミン)が探ってみると、恋人のDVに苦しむ女、客の料理にツバを入れるウェイター、部品を勝手に売りさばく自動車修理工、アメリカに留学したものの就職できないニート、奥さんの手術代のために闇金から借金をした人、詐欺に遭って全財産を失った人など、社会的には「負け組」と揶揄されるような人たちで構成されていたことが発覚。リーダー(マ・ドンソク)がネットで呼びかけて集まった彼らは、軍隊や警察のコスプレをしながら日ごろの鬱憤晴らしとして社会正義を遂行していたのでした。ここ、現代のネット社会の比喩かと思ったんですけど、間違っていたらゴーメンナサイヨ! ( ゚д゚) ゴーメンナサイヨ!


シャドーズの正体を突き止めようとしたら、簡単に判明! 実は社会的弱者たちでして。
正体を突き止める!

例えば、メンバーの1人は、こんな場所に住んでいたりするのです。
こんなところに住んでます

容疑者①は「最大トーナメントで敗退した奴らが向かってきた時の範馬勇次郎」のような気分になったというね(勝手な文章)。
負け犬どもがハネッ返りおって


早速、容疑者①は同じような拷問を受けた容疑者③を訪ねて「復讐しよう!ヽ(`Д´)ノ レッツビギン!」と誘うんですが、容疑者②が良心の呵責に耐えきれずに自殺したこともあって、③も「オレたちはそうされても仕方なかったよ… (´・ω・`)」とあきらめムード。納得がいかないので、容疑者①は単身、シャドーズを追うんですけど、実はシャドーズの方も女性メンバーが「暴力はやっぱりダメよ!(・д・し イクナイ!」なんてつまらないことを言い出したりと、内部が分裂気味になってまして。そんな日和った奴らにイライラするリーダーの暴力性はエスカレートする一方で、とうとう容疑者グループの偉そうなジジイを射殺! ゲンナリしたメンバーが抜ける中、最後の容疑者である超お偉いさんを拉致→拷問をスタートするんですが…。


射殺したジジイの死体を処理すると、何人かはシャドーズを抜けてしまうのでした。
シャドーズ


最後の拷問で明らかになるのが、実はリーダーはミンジュの家族だったということ(写真を見せるだけなので、娘なのか妹なのか親戚なのかは不明)。だったら、裁く権利は大アリということで、「やっちまえ!ヽ(`Д´)ノ」って感じになるのかと思ったら、日和ったメンバー2人が超お偉いさんの口車に乗せられて、リーダーを拘束しちゃうから「なんだそりゃ ( ゚д゚)、ペッ」と。さらには「超お偉いさんを助ければおこぼれに預かれるかも…」なんてことまで考えるありさま。そこで、リーダーは「ドジョウの水槽にライギョを入れると、ドジョウは逃げ回って元気になる→弱者にとって権力者の横暴は必要悪なのかもしれない」なんてことに気付くのでした(ちょっと「ウォッチメン」を連想しました)。


リーダーが持っていた写真にはミンジュが…。彼は大事な人を殺されていたということで!
妹だった!?

誰もがこの範馬勇次郎のように「(私刑にする)権利が大ありだぜ」と思う展開だったんですけどネー (・ε・) チェッ
権利が大ありだぜ


その後は、もう1人のメンバーにリーダーは救われるも、もう彼に復讐する気はナッシング。ただ、その様子を端から見ていた容疑者①が、あまりに傲慢な超お偉いさんに腹が立ったので、ミンジュを殺した時のようにテープでグルグル巻きにして殺害しまして。ラストは、「ケルベロス」っぽい格好に身を包んだ容疑者①が、高台で座禅を組むリーダーを釘付きの棍棒で撲殺して、終わってましたよ、確か。


「さっさと救え!」なんて偉そうにするから、案の定、殺されてざまぁな超お偉いさん。
お偉いさんを殺せ!

最後はリーダーが撲殺されて、エンドクレジットに突入してました。
撲殺されるリーダー


ミンジュ殺害に絡んだ人たち全員が「上からの指示に従っただけ」と答えて彼女の死の真相が明らかにならなかったり、容疑者①を演じたキム・ヨンミンがシャドーズのメンバーたちを抑圧するキャラクターを演じていたり(なんと1人8役!)と、非常に寓話性が強い内容でして。DV男と女の生々しいセックスとか、弱者であるシャドーズが権力側のコスプレをしたりとか、弱者側も決して善人ではなかったりとか、そういう要素にもちゃんと意味が込められている感じ。ただ、決して難しくはないどころか、ラストは長い説明台詞をかますほどにわかりやすくて。映画を作った人の社会への怒りと失望がストレートに伝わってくる作りには、素直に好感が持てましたね。


1人8役をこなしたキム・ヨンミン。大したもんですな(偉そうに)。
1人8役をこなしたキム・ヨンミン


クライマックスにリーダーを拘束するメンバー2人の日和見振りはマジで頭に来るんですが、例えば、いくら僕が何かに反対する立場だったとしても、何らかの利益が発生するならコロッと寝返ることがないとは言い切れないワケでねぇ(突然、偉そうに)。そもそも「少女を殺す」とまではいかなくても、仕事だと割り切れば社会倫理的にダメなことでもミルグラム実験ライクに折り合いをつけて実行しそうな自分もいるし…。いろいろと己に置き換えて考えさせられて良かったです。

一応、不満も書いておくと、キム・ギドク監督自らが撮影したせいか、どうにも画面が安っぽいなぁと。まぁ、それがまたこの映画に奇妙な雰囲気を漂わせているとも言えるんですがー。あと、これはそういうジャンル映画じゃないから仕方ないんですけど、権力者どもは散々苦しめてから殺してほしかったです。特にあの超お偉いさん、ガムテープグルグル巻きで窒息なんて生ぬるいというか、せっかく設備が揃っているんだから、もっと「96時間」のブライアン級に裁いてほしかった…というのは筋違いでしょうか(確実に筋違いな文章)。


「96時間」の白眉である電気の拷問シーン。
三角絞めでつかまえて-感電死するマルコ(アーベン・バジラクタラジ)

少女を誘拐しては売り飛ばすクソ野郎マルコが必死に懇願するも…。
懇願するマルコ

ブライアンったら容赦なくスイッチをオンにして退場! ああん、ここまでやってほしかったYO!ヽ(´Д`;)ノ
容赦しないブライアン


ということで、拷問描写の数々や、メッセージの内容&直球振りが結構ツボに入って、鑑賞後の後味はヘビーながらも、料金分は全然楽しめました (・∀・) ヨカッタ! 正直、「母親が息子のチンコを切っちゃった映画」はイヤすぎてとても観られませんが(汗)、他のキム・ギドク監督作もチェックしようなんて思ったりしてね。何はともあれ、気になる人は観ても損はしない気がします、たぶん。




僕が唯一観ていたキム・ギドク監督作。感想はこんな感じ



ちょっと気になるキム・ギドク監督作。さぞ悪いんでしょうなぁ(バカの文章)。



母親が息子のチンコを切ってしまうキム・ギドク監督作。超キツそうでございます。



全然関係ないけど、最後に96点の映画を貼っておきますね。