TEKKEN -鉄拳-(ネタバレ) | 三角絞めでつかまえて2

TEKKEN -鉄拳-(ネタバレ)

TEKKEN -鉄拳-

三角絞めでつかまえて-鉄拳映画

原題:TEKKEN
2010/日本・アメリカ 上映時間93分
監督:ドワイト・H・リトル
出演:ジョン・フー、ケリー・オーバートン、ケイリー=ヒロユキ・タガワ、イアン・アンソニー・デイル、カン・リー、ダリン・デウィット・ヘンソン、ルーク・ゴス、ゲイリー・ダニエルズ、ミルセア・モンロー、キャンディス・ヒルブランド、タムリン・トミタ、アントン・カサボフ、マリアン・ザピコ
(あらすじ)
文明が崩壊し、巨大権力を持つ悪徳企業によって支配される近未来の世界。裏社会のトップに君臨する三島平八率いる三島財閥によって母親を殺された風間仁は、三島の開催する格闘技大会に出場し、復讐のチャンスを狙う。しかし、そのトーナメントには恐るべき陰謀が隠されていた。(以上、エイガ・ドット・コムより)

予告編はこんな感じ↓




19点


※実際に映画「TEKKEN -鉄拳-」を観て面白いと思った方は今回の記事を読むと不快になる恐れがあります。

僕の部下に“昔、「鉄拳」の全国大会に出場したほどの腕前を持つ男”がいるんですが、かなりこの映画に興味を持っておりまして。「主役が仁ということは、最後は一八と戦うのかなぁ」「空中コンボは出るんですよね?」「ポールはどんな感じなんだろ? 崩拳とか再現されるんですかね?」「キングは実写だとどうなるんでしょうね~」「クマとか木人の登場にも期待したいですな!」なんてウキウキしていて、僕もそこそこは好きなので2人で盛り上がったりしていたんですが…。ごめん、「仁が最後に一八と戦う」ということ以外、君の願望は映画に全然反映されてなかったよ。しかも、そのバトルも…。まぁ、僕がこの映画を観てすぐに記事を更新してみなさんに警告したように、彼にも電話して「ガッカリするから観なくていいよ」と伝えたので直接の被害は免れましたが、僕の話を聞いて「ふざけるな!」と心から憤慨しておりました。

そういえば、観客にも怒っている人がいましたね。上映終了後、トイレに行ったら、修羅のような顔でドアをガンガン蹴っている人がいてビックリですよ。いくら映画が酷かったからって、モノにあたっちゃダメですな。あと、男子2人組が「やっぱり『ハート・ロッカー』にしとけば良かったね…」と話していて、何か微笑ましかったり。

ううむ、非常に前置きが長くなってしまいました…。いや、この手のアクション映画を積極的に公開してくれている新宿ミラノの客足が遠のくのは可哀想なんですが、「TEKKEN -鉄拳-」は本当に酷い映画でしたよ。パンフレットでは、「鉄拳」シリーズの大ファンとして知られる皆川亮二先生が実に“大人な感じ”で頑張って擁護されていましたが、普通のファンの人にとっては結構キツい作品だと思います。近作では「ストリートファイター ザ・レジェンド・オブ・チュンリー」的な感じというか。

冒頭のパルクール・アクションはまぁまぁ悪くなかったんですけど、まずブルース・リーがモデルのマーシャル・ローを総合格闘家のカン・リーが演じていてビックリ。“ベトナム系の人”ということもあって肌の色がやや焼けている感じで、しかも肉付きが良いから、容姿がちょっと違うんですよ。怪鳥音もないし…。キャラ的には似せやすい方だと思うんだけどなぁ。


これがマーシャル・ローだ! いかにもドラゴンですな!
三角絞めでつかまえて-マーシャルロウ


ううむ、ちょっと違うような…。
三角絞めでつかまえて-カンリー


まぁ、その後に出てくるキャラクターとかは容姿を似せたりしていますが、僕的にはブルース・リー的なキャラがぞんざいな扱いをされているのはちょっと…。あと、登場キャラクターが40人以上いるゲームで「全員出せ!」というのは無理だとしても(劇中に出てくるのは15人くらい)、主役クラスのポールやキングが一切出ないのはどうかと思うんですよ。特に僕が一番好きなキングがなぜ出ていないのかと。キングはプロレスラーなんですが、彼を入れることで殺陣の差別化が図れるじゃないですか? 僕はね、「やっと実写でワンダフルメキシカンコンボを見られる時代が来たか…」と密かに期待してたのに登場すらしないなんて…。まぁ、事前に調べていなかった僕が悪いんですけど、正直、「ふざけるな」と思いました。


これが「ワンダフルメキシカンコンボ」だ! ああん、キングったらなんてカッコ良いのかしら…。




まぁ、私怨ムキ出しで非常に申し訳ないのですが、それを置いといても「登場人物たちがキャラクター固有の技を全然使わない」とか、あまり愛を感じられない作りにイラッとしたり。レイヴンなんて忍者要素ゼロでしたよ。で、何よりも酷かったのがラスボスの一八でして、1ミリも強そうに見えない上に三島流喧嘩空手を使っている様子なんて皆無。ラストバトルなんて、両手に斧を持って仁を襲ってました。…って、ねぇ? こんなの「鉄拳」じゃないですよね? 作った人はバカじゃないの? バカなんじゃないの?


「近未来社会で巨大企業が世界を支配するために格闘トーナメントをおこなう」というB級感溢れるストーリー自体は大好物ですよ。でも、「“鉄拳”とは秩序だ」みたいなことを言い出すのは本当に面倒くさいというか、中学生が思いつきで適当に書いた台詞感がバリバリで、「頼むからもう少し頭を使ってくれよ」というか。あと、この手の格闘トーナメントモノでは本当によく見る光景なんですけど、途中で武器戦闘ルールみたいなのが適用されたりするのはどうなのよ? 吉光が出てくるから仕方ないと思わなくもないけど、そもそも「薙刀を持って戦う仁」なんて誰が見たいんですかね? さらに途中から「死ぬまで戦うルール」に変更されるってのも実にありがちな展開ですが、そのルール変更をする一八の存在感があまりにショボくて説得力が皆無だから「もうどうでも良いよ…」としか思えないというか。


ちなみに吉光はこんな感じのキャラです。
三角絞めでつかまえて-吉光


文句ばかり言いたくはありませんが、最悪、アクションが良ければまだ許せますよ。でも、そのアクションが“良い感じだけどダメ”なんですね。いや、登場人物たちの動き自体はかなり良いし、総合格闘技的な要素を実に上手く組み込んでいて、殺陣自体はなかなか見応えはあるんです。…ですが! さきほども「登場人物たちがキャラクター固有の技を全然使わない」などと書きましたが、「キャラクターごとの戦闘方法の描き分けがあまり出来ていない」んですね(カポエイラとかは別)。だから、やっていることはスゴいのに、同じようなバトルが続くから、ちょっと飽きてしまうというか。アクションを締めるフィニッシュ技も結構おろそかだし…(原作がゲームなんだから、最後はそのキャラの必殺技で締めるべき)。アクション監督はあの「アルティメット」で超絶体技を披露していたシリル・ラファエリなので、あまり悪くは書きたくないんですが、「頼むからもう少し考えてくれよ」と思いました(ちなみにスタント・コーディネーターはエリック・ノリスで、あのチャック・ノリスの末っ子だとか)。

まぁ、とりあえず良かったところを書いてみますね。仁を演じたジョン・フーの動きとか、素晴らしかったですよ。エディ・ゴルド役のラティーフ・クロウダーのカポエイラも最高で、この2人は「トム・ヤム・クン!」からフックアップされたそうで、「良かったなぁ」としみじみしたり。カン・リーもそうですけど、ロジャー・ウエルタとかアントン・カサボフ(この人は知らなかった)といった格闘家起用も悪くなかったです。一昔前は「次のヴァン・ダムだ!」なんて紹介をされていたゲイリー・ダニエルズも頑張っていて、ちょっとグッと来たり。風間準を演じたタムリン・トミタなんて「ベスト・キッド2」を思い出して懐かしかったし(全然風間準っぽくなかったけど)、スティーブ・フォックス役を「ヘルボーイ ゴールデン・アーミー」のヌアダ王子役で株を上げたルーク・ゴスが演じていたのも良かったです(全然スティーブ・フォックスっぽくなかったけど)。ケイリー=ヒロユキ・タガワが演じた平八のビジュアルも結構好きですな(全然活躍しなかったけど)。

結局、ドワイト・H・リトル監督はアクション映画を安易に考えているんだと思いますよ。「ゲームが原作のアクション映画なんてこんな感じでいいんだろ?」と思ってそうというか(しかも自覚はしてない感じ)。まぁ、確かに殺陣はちょっと派手な雰囲気だし、ガンアクションも入っていたりするし、なぜかわざわざセックスシーンもあるし、エンドロール後には「平八が生きています」的なオマケも入ってるし、盛りだくさんでスゴかったですねー(棒読み)。僕的にはCGをバリバリ使って空中コンボなり木人なりを再現してほしかったけど、キングのワンダフルコンボとか観たかったけど、予算的に厳しかったのかなぁ…。好意的に振り返ってみると、そこそこは良いシーンもあったし、「あの『鉄拳』の映画化作品!」と考えなければ意外と楽しめる気がしないでもないので、この手の格闘アクション映画が好きな人は観ても良いのかもしれません。




同じ「ゲームの映画化作品」で、こちらも叩かれがちな作品ですが、バカ映画に徹している分、全然好感が持てます。ケビン・ナッシュも出ていて、プロレスの扱いが良いのも好き。



封切初日に劇場に観に行って激怒した記憶がありますが、こっちの方がまだマシ。キャプテン澤田も出てるしね。



同じく封切初日に劇場に観に行って激怒した記憶があります。残虐描写がないモータル・コンバットの何が面白いのかと。