年齢を重ねても美意識の高い女性が増えてきた昨今、化粧品のパッケージや美容クリニックの広告からカフェのメニューに至るまで、さまざまな場面で「アンチエイジング」という文字を目にします。肌やボディラインが老化しないよう努力している女性は非常に多いことでしょう。肌にシワができ、ヒップラインが下がるのと同じように、口の中にもエイジングサインは現れます。アンチエイジングには積極的でも、口元になると無頓着という方は少なくありません。今日は、お口のエイジングサインについて考えてみましょう。
☆★☆歯が伸びて間に隙間ができる☆★☆
☆★☆歯が伸びて間に隙間ができる☆★☆
年齢を重ねると歯が伸びてくる。そんな風に認識している方は少なからずいらっしゃるでしょう。しかしこれは、厳密に言えば間違いです。歯が伸びているのではなく、歯茎が下がってきているのです。歯茎が下がっていくことで、その中に隠れていた歯の根元の部分が露出し、長くなったように見えてしまいます。そして、歯は根本にいくほど細くなっていきますから、歯茎が後退すると歯と歯の間に隙間ができます。これはブラックトライアングルと呼ばれ、代表的なお口のエイジングサインのひとつです。では、なぜ年齢を重ねると歯茎が下がってしまうのでしょうか?その原因は、歯周病にあります。歯周病が進行すると、歯と歯茎のあいだにある隙間「歯周ポケット」に菌が入り込んで、炎症を起こします。すると、私たちの骨には炎症から逃げようとする(みずから骨を破壊・分解して炎症部分から退く)機能が備わっていますので、自然に歯を支えている歯槽骨の量が減っていくのです。そして、骨を覆っている歯茎もいっしょに下がってしまいます。つまり、歯周病にかかっていない方であれば、加齢に伴って大幅に歯茎が下がることはありません。とはいえ、歯周病は日本人のほとんどがかかる病気であるといわれており、30代の5人に1人、40代の4人に1人、50代前半では3人に1人の割合で歯周病患者が存在することがわかっています。よって結果的には、加齢によって歯周病が進行する=加齢によって歯が伸びるといっても過言ではないのです。
(出典:厚生労働省「歯科疾患実態調査」平成23年 http://www.mhlw.go.jp/toukei/list/62-17c.html)
(出典:厚生労働省「歯科疾患実態調査」平成23年 http://www.mhlw.go.jp/toukei/list/62-17c.html)
ブラックトライアングルの対策としては、まずはセルフケアと歯科医院でのメインテナンスをきちんと行い、歯周病にならないようにすることが大前提です。歯周病で歯槽骨が減ると、歯の支えが弱くなり、最悪の場合、歯を失うことにもなります。お口の機能を損なわないためにも、しっかりと予防に取り組みましょう。ブラックトライアングルになってしまった、または気になっている場合は、レジン(プラスチック製の詰め物)ですき間を埋めたり、ヒアルロン酸注射を打って歯茎を膨らませたりといった方法もありますが、これらは根本的な解決方法とはいえません。並行して歯周病治療を行い、原因解決を促すことが大切です。
☆★☆歯茎の色が黒ずんできた☆★☆
☆★☆歯茎の色が黒ずんできた☆★☆
ふと鏡を見たときに「昔はもっと歯茎が白かった気がする」なんて思ったことはありませんか?年齢を重ねて歯茎の色が気になってきたという声も、多く聞かれるのではないでしょうか。その要因としては、以下のようなものが挙げられます。
- タバコを吸うことで色素沈着を起こしている
- 詰め物の金属が溶け出している
- 寝不足、運動不足、ストレスなどで血行不良を起こしている
- 歯周病が進行している
このように歯茎の変色にはさまざまな原因があり、必ずしも年齢を重ねることによって歯茎が黒ずむわけではないものの、やはり加齢によるリスクは非常に高くなります。対策は原因によって異なりますが、有効な手段として歯茎ブリーチが挙げられます。歯茎ブリーチは、専用の薬剤を歯茎に塗布して、歯茎の表面の皮膚を生まれ変わらせる施術です。黒ずんでいた皮膚がはがれて、きれいなピンク色の皮膚が現れます。また、レーザーを照射するクリーニングでも、歯茎の黒ずみを解消できます。レーザーでメラニン色素を除去し、明るく美しい歯茎を作るのです。レーザー照射と聞くと、痛みを伴う手術を想像する方もいると思いますが、実際はほとんど痛みを感じません。ただし、金属の詰め物が原因で歯茎が黒ずんでいる場合は、残念ながら歯茎ブリーチやレーザークリーニングでは改善できません。黒ずみの原因となっている詰め物をなるべく早く交換し、それ以上歯茎が黒くならないようにしてください。少しでも気になってきたら、早めに歯科医院で相談することをおすすめします。なお、「将来、歯茎が黒ずむのは嫌」という方は、セラミックなどの金属が使われていない詰め物を選べば安心です。
☆★☆歯の黄ばみが気になりだしたら☆★☆
☆★☆歯の黄ばみが気になりだしたら☆★☆
歯茎と同様に気になるのが、歯の黄ばみです。歯全体の白さのトーンが落ちて、口元が暗い印象になってしまいます。そんな歯の黄ばみは、おもに何が原因で起こるのでしょうか?それは「加齢による歯の変色」と「着色汚れの蓄積」です。歯の変色は、加齢に伴ってどうしても起きてしまう現象です。加齢によって、エナメル質の下にある象牙質という層が黄ばんだ色に変色してきます。歯の表面を覆うエナメル質は透過性が高いため、下の象牙質が変色することで口元の見た目も黄ばんで見えてしまうのです。そして、着色汚れの蓄積は、コーヒーやワイン、チョコレート、タバコなど、着色汚れがつきやすい食材や嗜好品を長年口にすることで起こります。こちらは、年齢を問わず起こる現象ですが、歯科医院でクリーニングをしていない場合、その年数が長いほど着色汚れの程度はひどくなりますので、加齢が関係するケースもあります。有効な対策は、PMTC(クリーニング)やホワイトニングを受けること。着色汚れが原因で黄ばんでいるならPMTCを、歯の変色が原因ならホワイトニングを選択しましょう。なお、ホワイトニングには大きく分けて3つの種類があります。
<<オフィスホワイトニング>>
<<オフィスホワイトニング>>
歯科医院に通院して行うホワイトニング。メリットは即効性が高いこと、デメリットはホームホワイトニングに比べて色持ちが悪いこと、高価なことなどです。
<<ホームホワイトニング>>
歯科医院でマウスピースと専用の薬剤をもらい、家でそれを装着して歯を白くします。メリットは自分のペースで好きな白さを目指せること、デメリットは効果が出るまでに数週間の時間がかかることです。
<<デュアルホワイトニング>>
オフィスホワイトニングとホームホワイトニングを並行して行います。最も効果が高く、即効性もありますが、高価なことが難点です。
なお、ホワイトニングしたいと考えているときに虫歯治療をすると、周囲の歯の色とあわせた黄色みのある詰め物で施術されてしまう場合があります。将来的にホワイトニングした際、周囲の白さとあわなくなってしまうため、ホワイトニングする予定があるときは、その旨を治療時に伝えておきましょう。
☆★☆お口の臭いにおいが気になりだしたら☆★☆
中高年の方でお口のにおいが気になったことがあるという方は、少なくないはずです。「加齢臭と同じようなもの」と考えているかもしれませんが、実はこれにもきちんと原因があり、その原因をつぶせば解決できる問題なのです。原因のひとつは、お口の中がセルフケアをしにくい環境になってしまうことです。詰め物や被せ物の治療を行った歯が増えると、どうしてもその境目に凹凸ができてしまい、歯磨きで汚れを落としにくくなります。また、ブリッジ(2本以上の歯をまたぐ詰め物)があると、フロスを通すことができなくなり、歯と歯のあいだのケアが難しくなるでしょう。すると、歯に汚れが溜まりやすくなり、嫌なにおいがするようになるのです。さらに、歯周病が悪化することでも口臭が発生します。これらの問題を解決するには、歯科医院でTBI(トゥース・ブラッシング・インストラクション=歯磨き指導)を受けるのがおすすめです。歯磨き指導では、歯科衛生士が正しい歯磨きのやり方や道具の使い方を丁寧に教えてくれます。日本人の多くは正しいやり方で歯磨きをできていないとのことです。一度プロにセルフケアのノウハウを習って、きちんと汚れを落とせる歯磨きをマスターするといいでしょう。また、歯科医院でのメインテナンス(定期検診)の頻度を上げることも欠かせないポイントです。セルフケアだけでは、どうしても100%汚れを落とすことはできません。歯磨きでは落とせない歯石も溜まってしまいます。定期的にプロに診てもらって、嫌なにおいがしないお口を維持しましょう。
※ ある程度の年齢を重ねれば、歯が黄ばんだりお口が臭ったりするのは仕方がない…。そんな風に考えていませんでしたか?適切な治療やケアをしてあげれば、若々しいお口を保つことは十分に可能です。すでにエイジングサインが出ている方もあきらめずに、ぜひ歯科医院で相談してみてください。