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世の中には“流行”という言葉では片付けられない素敵なものがたくさんあるじゃないですか。僕が作りたいと思うのは、そういう形です。

 

 

 

皆川明さんの

『ミナを着て旅に出よう』。

 

 

 

おかやま文学フェスティバルにて

広島の廿日市から出店していた

ホリディ書店さんでの購入本。

 

 

 

 

 

 

 

元「暮らしの手帖」編集長の

松浦弥太郎氏が監修していた

「仕事と生活ライブラリー」という

書籍シリーズがある。

 

 

 

「仕事と仲良く生きたい人のための」

というコンセプトになっていて、

シリーズ2冊目にあたる本書は

デザイナーの皆川明さんが登場。

 

 

 

皆川明さんといえば、

ファッションブランド

「minä perhonen」の

創業者デザイナーだ。

 

 

 

 

 

 

1967年東京生まれ。

文化服飾大学院卒業後、

「minä perhonen」の

前身である「minä」を

1995年に設立。

 

 

 

その後、2003年に屋号を

現在の「minä perhonen

(ミナ・ペルホネン)」に変更。

minäとはフィンランド語で「私」

perhonenは「ちょうちょ」の意。

 


うちのロゴにはアルファベットの上に点々がたくさん並んでいますよね。あれは自分という人格のなかにもいろいろな面があるということを表現したかったから付けたんです。それは多重人格ということではなくて、一人の人間のなかにもいろいろな個性があるということなんです。

(中略)

学校にいるときの自分も、家にいる時の自分も、どっちも自分であることには違いないんですよね。だから、ミナの洋服もそういうふうに着こなして欲しいんです。一人の人のなかにあるたくさんの個性のどこかで、ミナの洋服を着てもらえれば嬉しいです。いつもミナが好きで、常にミナの服を着ているっていうよりも、こういうシチュエーションのときはミナを着るっていうのが、僕はいちばん嬉しいかもしれない。

 



 

 


「ミナが生まれるまで」の章では

彼がブランドを立ち上げるまでの

ストーリーが語られている。

 

 

 

中学校から高校まで

陸上に夢中だった学生時代。

体育大学に進学するつもりで

長距離選手として毎日走っていた。

 

 

 

ところが高校3年生の時に

骨折をしてしまい、

体育大学への進学を

諦めざるを得ない状況になる。

 

 

 

ライフワークだった走ることが

いきなりできなくなってしまい、

じゃあ次に何をしようと考えた時

彼は旅行にでも行ってみようと

ヨーロッパへ海外旅行に出る。

 

 

 

最初に訪れたフランスで

ひょんなことから

パリコレのバックステージの

手伝いをすることになり、

洋服を作るのって面白そうと

このときに初めて経験をする。

 

 

 

その後、日本に帰ってから

文化服飾学院の夜間部に入学。

昼間は縫製工場で

同時にアルバイトを始める。

縫製工場では裁断のコーナーに

配属され、布をカットする日々。

 

 

 

正直言ってそれほど楽しくなかったんだけれど、どこかで自分としては、長く続けられることってきっと初期段階はこんなふうに淡々としているんだろうなって思っていたので、焦る気持ちも野心もなく淡々と過ごしていました。

 

 

僕は不器用だからこそ、あまり早く服の作り方を習得するのはどこか怖いという気持ちがあって、極端に言えば、10年後に洋服が作れるようになっていればいいかなっていうくらいの気持ちでやっていました。

 

 

 

学校を卒業した後は

とくに就職活動をせず縫製工場で

働き続けていたけれど、

そのうちに3人くらいの規模の

小さなアパレル会社の

パタンナーとして働き出す。

 

 

 

その会社は生地を自分たちで作り

それを洋服に仕立てて、

場所を借りて売るという

材料の調達、生産、営業まで

一貫して活動していた。

 

 

 

3年ほど勉強しながら働き、

そうして27歳の時に

自分で洋服を作ってみようと

皆川さんは独立をする。

 

 

 

とりあえず、3年やって、ミナだけで食べていけるようになりたいという次の目標を漠然と設定してスタートしました。

 

 

 

なんでも最初から

すぐにうまくいくと考えずに、

時間がかかるのは自然なこと

と捉えるところが、皆川さんは

学生時代から一貫しているようだ。

 

 

 

彼はこんなふうにも語る。

 

 

 

僕はいつもどんなことに対しても、本流に対して違う角度はないかを探しているんだと思います。それはひねくれて斜に構えているということではなくて、習慣になっていることや、決まり事のなかに埋もれてしまっていることのなかにこそ意外と大事なことがあって、それを見落としているんじゃないかと思うからなんです。

 

 

 

例えば「流行」。

 

 

 

洋服というのはとくに流行があり

毎シーズン新作が出ては

少し前の製品はセールになり、

すぐに価値が下がってしまう。

 

 

 

彼はそのことを決して

「当たり前」とは思っていない。

 

 

 

世の中の大半がその法則に

乗っ取っているからといって

同じやり方をするのではなく、

ミナというブランドのやり方を

自分で作っていく。

 

 

 

売るために新デザインを

決まったサイクルで作るのではなく

「こういうものを作りたい」と思って

新しいデザインを生み出していく。

 

 

 

僕はフッションというフィールドを選んでいるデザイナーだけれども、ほかのプロダクト・デザイナーと同じ気持ちでやっているので、もっと長く価値が持てるものを作りたいと思っています。

 

 

世の中には“流行”という言葉では片付けられない素敵なものがたくさんあるじゃないですか。僕が作りたいと思うのは、そういう形です。

 

 

 

 

公式サイトの「about」でも

紹介されている通り、

1995年のブランド創設時、

「せめて100年続くブランド」という

言葉を彼は紙に書き残している。

 

 

 

最初のデザイナーである僕は100年のうちのだいたい3分の1の、30年くらいをやって、次のデザイナーに変わって、また次のデザイナーに……と、駅伝のようなイメージでミナが続いていけばいい。陸上をやっていたから、そういう発想になってしまうのかもしれないけど(笑)。

 

 

 

100年後を見据えて活動する

皆川明さんの文章を読んでいたら、

とびっきり素敵なミナの服を着て、

ふらりと旅に出たくなる。

 

 

 

ひとびとの暮らしに溶け込み、

長く使っても飽きのこないものは

自由な美しさを持っている。

 

 

 



 

 

 

▽「仕事と生活ライブラリー」シリーズの

蜷川実花さんの『ラッキースターの探し方』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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