本の背骨が最後に残る | 作家・神永学公式ブログ「担当さん、〆切り待ってください!!」

本日紹介するのは、斜線堂有紀先生の「本の背骨が最後に残る」です――。



「読まないほうがいい。虜になってしまうから」

 

強烈なインパクトの帯文ですが、帯に偽り無し!!!!

この作品は、読んだことを後悔するほどの傑作です!!!!

 

私は、最初の1ページから、ラストの1ページまで、ただただ圧倒され、才能の違いを見せつけられたような気がして、しばらく放心状態に陥りました……。

 

それくらい、凄まじい作品でした――。

 

短編連作なのですが、一話目から凄まじい。

 

「物語」を語る者が「本」と呼ばれる国――。

一冊につき、一つの物語が基本なのだが、稀に同じ物語を語る本が現れると、「版重ね」が行われることになる。

どちらの本が正しい物語なのか、お互いの正当性をぶつけ合う。その結果、誤った物語を語った本は、「誤植」として、業火に焼べられ焼き殺されるのである。

 

物語を語る者を本と呼ぶ国――もう、この設定だけで凄いのですが、同じ物語を語る者同士が、己の正当性をぶつけ合う版重ねという展開が、斬新で面白い。

理論をぶつけ合う攻防は、推理小説のラストの謎解きを読んでいるようにスリリングで、ラストでは、脳汁が吹き出るほどの爽快感がある。

 

誤植とされた本が、業火に焼かれる様は、凄惨なシーンであることは間違いないのだが、なぜかそこに美しさを感じる。

 

それほどまでに、斜線堂有紀先生の描写は鋭く、読者の脳に突き刺さるのです。

 

一話目だけで、この分量で書いてしまいましたが、独創的で、美しく、そして残酷な物語が、全部で七編も収録されているのです。

この本が、いかにとんでもない作品かお分かり頂けると思います。

 

どの短編も素晴らしのですが、私個人的には、四話目の「痛妃婚姻譚」が一番印象に残っています。

 

他人の痛みを請け負いながら、それをおくびにも出さず、優雅に踊る様は、美しくも残酷な斜線堂有紀先生の世界観を象徴しているようで、何度も読み返してしまいました。

 

全ての作品を読み終えたあと、私はしばらく放心してしまいました。

 

どうしてここまで独創的な世界観と物語が構築できるのか?? 全く理解出来ません……。

 

読者の想像力を軽々と超えてくる。

斜線堂有紀先生は、間違いなく天才です!!

 

すっかり魅了され、虜になった私は、斜線堂有紀先生のサイン会の列に並んで、ちゃっかりサイン本をGETしました!!笑