ファラオの密室 | 作家・神永学公式ブログ「担当さん、〆切り待ってください!!」

さて、本日紹介する本は、白川尚史先生の「ファラオの密室」です――。

 


いやはや……これは、とんでもない作品です!!

 

何がとんでもないかって、あらすじを読んで頂ければ分かると思います――。

 

<あらすじ>

紀元前1300年代後半の古代エジプト――。

死んでミイラにされた神官のセティは、心臓に欠けがあるために冥界の審判を受けることが出来なかった。

審判を受けるために、地上に舞い戻ることになったセティだったが、与えられた猶予は三日間――。

ミイラのセティは、自らの心臓がなぜ欠けているのか調査を開始するのだが、先王のミイラが密室であったピラミッドの玄室から消失したという難解な事件にも巻き込まれていく。

やがて、それらの事件は、エジプト全土を危機に陥れることになる。

セティは謎を解き、エジプトを救うことが出来るのか??

そして、審判の行方は??

 

ねっ!!

とんでもないでしょ!!

 

エジプト神話に準えた独特の世界観の中で、欠けた心臓を探すために、ミイラとなった神官が自らの死の真相を追う――というだけで、もうめちゃくちゃ面白いのです。

 

ただ、それだけに留まることなく、先王のミイラがピラミッドの玄室から消失したという、新たな謎を加えることで、物語の謎はさらに深まり、加速度的に面白さを増す。

 

密室からの消失は、ミステリ好きにとってこの上ないご褒美ですからね。

 

ここまでで、ミステリとして100点満点の仕上がりなのですが、さらに、それらの事件がエジプト全土を覆う危機に発展する展開は、ミステリという枠を飛び出し、壮大なスペクタクルへと変貌していく。

 

前半は、これまでにない設定でありながら、本格的なミステリの展開に驚嘆させられ、後半になると、息をも吐かせぬスリリングな展開に手に汗握る。

 

一冊で、二重、三重に面白い作品なのです。

 

それだけでなく、登場人物たちの心情も瑞々しく描かれていて、読後に大きな感動を呼ぶ。

詳しく書くことは出来ませんが、セティと父親の関係などは、読者の心に深く突き刺さる。

 

ラストの謎解きも「お見事!!」と拍手したくなります。

 

読んでみたいけど、古代エジプトとか、よく分からないしな……と思った方もいるでしょう。

 

安心して下さい!!

私も、古代エジプトに関して全くの無知だったのですが、そういう人であっても、抵抗なく作品世界に没入できるように描かれています。

 

あまりに巧みな描写だったので、著者の白川尚史先生は、以前からエジプトを研究されている方だと踏んでおりました。

 

推理作家協会の懇親会で、お会いする機会があったので、「エジプトについて以前から研究されていたんですね」と訊ねてみたのですが、白川先生は朗らかに「いいえ。作品のアイデアを思い付いてから調べまし」と……。

 

嘘だろ????

 

しかも、白川尚史先生は、これがデビュー作なんですよ……。

 

くっ……化け物か!!!!

(褒めてます)

 

きっと、白川尚史先生は、これからのミステリ界を席巻していくことでしょう。

 

興味がある方は是非!!