さて、本日ご紹介するのは大塚巳愛先生の「鬼憑き十兵衛」。
〈あらすじ〉
父の命を奪った刺客と壮絶な死闘を繰り広げ、その命を落とそうとしていた十兵衛ーー。
消えゆく命を現世に引き戻したのは、この世のものとは思えぬほど美しい姿をした鬼だった。
鬼は復讐の手助けをしてやろうと十兵衛にとり憑くのだが……。
十兵衛と鬼との行く末やいかに?!
本作は日本ファンタジーノベル大賞の受賞作。
それだけではありません。
何と、大塚巳愛先生は、同時期に角川文庫キャラクター小説大賞を受賞しているそうです……。
おいおい、どんだけだよ!!
新人賞って、一つでも大変なのですよ。
私なんざ、一つもとってません。
な・の・に!
二つもとっちゃうって、そんなことあります??
いかほどのものか、その実力を確かめさせてもおうーーと大分穿った見方をして読み始めました。
結論からいうと、冒頭でこれ面白いやつだ!!と納得させられました。
そりゃ、これだけ面白かったらW受賞するよな〜
冒頭の剣戟アクションから、グイグイ引き込まれます。
ただ迫力があるだけでなく、剣術のことをよく解っています。
経験者か、もしくは相当に勉強したかーー何れにせよ、新人でこれだけ描ける人は、まずいません。
もちろん、アクションシーンだけではありません。
十兵衛と鬼である大悲の関係が、実に面白い。
二人の掛け合いはもちろん、次第に変化していく関係性も、たまりません。
ふむ。
キャラクター設定が異常に上手いですね。
キャラクター文芸大賞受賞というのも、当然の結果だと思わされますね。
もちろん、キャラクターが面白いだけではありません。
以前にも別の作品の紹介で書いたのですが、キャラクターと物語は両輪です。
キャラクター設定だけでは、絶対に面白くなりません。
本作でもっとも着目すべきは物語のうねりです。
あらすじだけだと、十兵衛と鬼が共に旅をしながら復讐をしていくシンプルな話と感じるかもしれませんが、それだけではありません。
途中、十兵衛が成り行きから異国の少女を助けたことで、物語は想定外の方向に転がっていきます。
そして、次第に十兵衛は、己の生きる意味を考えていくようになるのです。
十兵衛と鬼の行き着く先とは??
もう、気になって気になって、ページを捲る手が止まらなくなるのです。
と、半ば興奮気味に書いてしまいました。
すっかりファンですね(笑)
というわけで、角川文庫キャラクター文芸大賞をとった作品も読んでみようと思います。
「ネガレアリテの悪魔 贋物たちの輪舞曲」
「鬼憑き十兵衛」は和風だったけど、こっちは洋風なのね。
これまた楽しみ!!