【新たな旅立ち】5
数日が立ち、以前の約束どおりMr.Nさんの持っていた不動産の物件を借りるかどうかの検討を視野に入れて、子供達を学校へ見送った後、Mr.Nさんはそのエリアまで連れて行ってくれた。回りは、静かな一戸建てが並んでいた。環境も良いが、ただ回りには何もなく住宅地から買い物に行くには、車で大通りまで どの位あるかわからなかったが、近所という訳ではないように感じた。家の中を見せて頂いて、私としては前のアパートの部屋の方が、遥かに敷地があり部屋の広さも大きかった記憶を元に、ただ部屋を静かに見ていった。私の置かれている立場も良く理解はしていたが、やはりこのような、誰も回りの事を知らないという状況事態は、わずらわしくなく良いとは思っても、Mr.Nさんしか、私達の場所を知らないという点が、引っかかっていた。お借りした後、Mr.Nさんが遠い事をいい事に、通うようになっても、私は困るからだった。ここまで、して頂いておきながら、なんとも、まあ勝手な想像だとは思うが、Mr.Nさんの置かれている状況を知った今となっては、やはり その事が気になっていた。Mr.Nさんの、傷を「信仰の友」として癒し、前向きにお互いに人間として成長しながら、時を待ち、もう1度 Mr.Nさんの置かれてる環境を改善出来たらと考えていたからだ。その日は、借りるかどうかについての話はしなかったが、もっと、買い物が近くで出来る所で探したいとだけ伝えると、Mr.Nさんは快く受け止めてくれたのだった。その優しさが、また さっきの私の失礼な思いとあいまって、申し訳なく感じてしまった。その後もMr.Nさんは、私と子供達の住む所についても検討すべく、お惣菜をもってアパートに来てくれた。そこで、ランチを食べながらの話となった。その日は、私の要望どおり経済的にも大変になる事を見越して、食材が安く手に入る事で知られているスーパーのすぐ近くのアパートを見つけて来てくれた。さっそく、そこに入ると、家の中が、なにかじっとりとしていて落ち着かず、広さは、私と小さな子供だけには、丁度良い環境だった。ただ、人通りが激しく、私は車のよく通る道路沿いというのが、小さな子供を育てて行くので、カゾリンの匂いやホコリなどの事も考えた。そして、ひっそりと子供と暮らしていく事を考えると、ここは知り合いに会う可能性があると嫌な気がした。私は、失礼ながらも本音でMr.Nさんにその事を伝えると、Mr.Nさんは『へえー結構、環境にこだわるんだね、サークルのメンバーって、普通、過酷な環境でも平気なんだけどねー あなたは、感性がちがうんだねー』と言われてしまった。それで、その場は見ただけにしアパートに戻った。Mr.Nさんの仕事は、夜遅くまでやっていて、その日は、最後の集計や点検に戻るだけだという事で、一旦、私のアパートに戻って、その日 見て回ったアパートの話や、私と子供のこれからの事などを話し合っていた。ここでは、Mr.Nさんが来てくれた日の事を、続けざまに書いているが、実はそんなに頻繁に来た訳ではない。2週間に1度ぐらいで、家探し以外は1時間居なかった事の方が多かった。Mr.Nさんは、レストランをまかされているので、とても忙しい人だったからだ。それなのにも関わらず、30分もハイウェイを飛ばして来てくれていた事が、本当に感謝だった。一人じゃないというのは、本当に心強く、色々話し相手にもなってくれたり、一人だと、自分の為にご飯を作ることも、精神的な思い煩いがあり出来なかった私のことを、気にかけてくれて、一緒に食事をしてくれたりと、Mr.Nさんのお陰で、私は食事が喉を通る事にも,身体も少しづつ慣れて来たし食事の量も少しづつ増やせるようになっていた。それだけじゃなく、Mr.Nさんと、たわいのない話で笑ったりと精神的にも回復していった。その日、夜になって時を忘れてMr.Nさんと話していたが、外に光る車のライトが窓を照らした。私は、もしかして夫が来たのかもしれないと思い、窓の外を見た。見慣れた車が駐車中なのを見て、私は慌てふためいた。Mr.Nさんは、夫の元、上司だった。わざわざ、そんな人が家のアパートに来てくれて居るのを、秘密主義の夫が知れば、当然、極秘に夫が進めていた離婚の事が知れたとわかるだろう。夫の口癖は、『サークル会のメンバーに一切、余計な事を言うなよっ!』だった。何を後で言われるかわかったものではない。私は、只でさえ精神的に弱っているのに、こんな状況を見せたら、何を勘ぐられ、それをいい事に、夫が自己正当化をしかねないと思った。誤解とは言え、Nさんのご家族にも、なんと申し開きをすれば良いのか、そんな事が、私の頭の中を、素早く通り過ぎた。私は、Mr.Nさんに夫が今、下まで来ている事を告げると、『あっ、そう。Aくん帰って来た?』とのんきにしているではないか。私は、トラブルを避けたい一心で、Mr.Nさんの玄関にあった靴を自分の部屋に入れ、Mr.Nさんには、このまま私の部屋で待っていて頂く事にした。何か、申し訳なかったが、仕方がない。そして、夫が入って来た。 いつもどうり、娘は夫に絡み付いていた。夫は、笑顔で娘と戯れた。軽く、フルーツなどを出し、夫は口を付けた。以前は、夜食まで作って出していたが、もう私の感情は途切れてしまったのだ。そんな事、私がしなくても、夫は弟Rの家に同居させてもらっているのだから、そこですませばいいと思ったからだ。30分もして、夫は帰っていった。私は、Mr.Nさんに申し訳ない思いで、急いで自分の部屋のドアをあけた。「あれっ?」一瞬、人が消えたと思ったのだ。入り口に座っていたはずのMr.Nさんが居ない…。何処かに、隠れたのかとおもったが、勝手に女性のクローゼットに入るなどとは、考えられないと思いながら、なんとなくフッと前をみた。私のベッドが、こんもりしていた。まさか…クローゼットどころではない。そっと、布団をめくってみると、予想道り Mr.Nさんだったのだが、『すみませんでした!』と声をかけても、Mr.Nさんの返事はなかった。Mr.Nさんは、疲れていたらしく、すっかり寝てしまっていた。私は、『うそだあ~』と小声でいいながら、笑ってしまった。この人は、全然飾らない人なんだなあ~、っと思うと、さらに 微笑ましかった。夜が更けていくので家に帰らないと行けないと、私は 可哀想だが、Mr.Nさんを起こした。完全に、熟睡しきった表情でMr.Nさんは上半身を起こした。時間にしたら、30分ぐらいの事だったが、余程、疲れていらっしゃったに違いなかった。『なんか、俺、勝手に、ここお借りしてしまってごめんねっ!』と寝起きの顔でMr.Nさん。そして、Mr.Nさんはベットから降りて、カーペットのテーブルの席に座った。私は、『何だか、色々すみませんね、Nさんを、すっかり巻き込んじゃって。』とMr.Nさんに伝えると、自分の部屋の祭壇に向かって、手を合わせた。『N家のご先祖様は、何ておっしゃるかなあ?』と私は言った。Mr.Nさんは、『ちょっと、聞いてみてくれない? 俺は、このままじゃダメだろうから、やっぱり離婚を切り出すしかないのかな…』そして、私は祭壇に向かって手を合わせ目をつぶり、心の状態を整えていった。しばらくそのままで居ると、おそらく私にしか聞こえていないのだが、何処からか、ザワザワとした賑やかさを感じ、そのうちにその一部が声になって聞こえてきたのだ。その声は、こう言っていた。『柱が来たっ! 柱が来たっ!』そう言って 何やら喜んでいらっしゃる感覚が、伝わって来た。大勢が、解放の日が始まったとばかり踊りを踊っているように感じられた。それを、そのままMr.Nさんに伝えると、Mr.Nさんは興味があるように、目を大きく開けて、『えっ! 何それっ? どういう意味なの?』と聞いてくる。私には、それがどういう意味であるのか、すぐにピンと来てしまったのだ。私は、夢で男性を“生み変える“という役割を頂いた。その男性は、明らかにMr.Nさんの事だ。神様の前で誓い、祝福された中で結婚を頂き、家庭を気づいた、Nさんご夫妻。しかし、随分前から10年以上も前から、その家庭は壊れていた。『カルマ』を重ねる夫と、信仰に没頭していく妻。 その距離は離れていき、全く違う方向を見ていた夫婦というには名ばかりの、偽りの家庭ごっこ。ご先祖様は、その偽りの愛の通っていない家庭を、同じ夫婦で立て直したいとは思っていらっしゃらず、もしかすると...。私は、思い出していた。私の夫の故郷からの初めての電話。その電話で、私は夫の浮気を初めて知るのだが、その電話が鳴る直前の私の心境を思い出していた。嫌な予感がして仕方がない一方、なんとも正反対のワクワク感。 あれは、私の思いではなかった。私は、あの時の電話がどういったものかさえ知らなかったのだから。だとすると、それは電話と共に鳴り響く、家庭再編成の合図と霊界のご先祖様達は、とらえていてワクワクしていたのかもしれないと思った。そうだとすれば、今まで起こった、数々の不思議な出来事の理由がはっきりと合致する。エンゲージリングが、娘のベビーカーの足下に落ちて来た事、それは、私に再婚を与えようと伝えたかったのではないかと解釈できるし、何処からともなく聞こえて来た、「これから、お前に大いなる恵みを与えよう!」の声、ファーストフード店で、テーブルの上に、突如コインが落ちて来た事、他の場所を含めると2度。 あれは、将来の経済は心配ないという意味ではなかろうか。 何故ならば、このままでは、私には、メモリーレスや、人と会う事にパニックがあり、スキルも無い中での、経済を得ていくのには、限界がある、2人の子供を育てるにもお金がかかるという事を考えれば、経済安泰的なニュアンスは、新しく再婚するならば、その点も合点がいくからだ。しかし、そう理解してみても、Mr.Nさんの状態はきわめてシリアスな半端な状態でもあった。 きっと、私の見解が当たっているのなら、必ずご先祖様始め、霊界は、次の変化を状況の中に見せてくるはずだ。私は、それを待とうと思った。Mr.Nさんは、霊的に私がN家のご先祖様から得た感覚を、とても驚きと新鮮にとらえていて、Mr Nさんご本人も、サークル会で学んだ経緯があるのだから当然ではあるが、霊界について話す私の話を食い入る用に聞き入ってくれた。他に、そのとき話した内容は、こういう事。全ての生とし生けるものには、「波動」というものがあり、エネルギーが出ていて、それは読み取る事が出来る。人間の思考も同じように、エネルギーを出しバイブレーションを通じて、その人の雰囲気や考え、感情などが霊的波動となって、その人の人隣がわかるというものだった。Mr.Nさんは、それを聞いて、以前、他の占い師の方にから高額で購入した木で出来た、割と大きめの丸い綴りのついた数珠を持っていて、その場で私に見せてくれた。『これは、どんな波動が出ているの?』と、心配そうに聞いてくるMr.Nさん。私は、それを手に取ると、波動としては、人の祈りの柔らかい波動と、祈っている男性の姿がみえた。それを、伝えると、Mr.Nさんはおどろいて、『すげ~、Kさん サークルのメンバーに、こんなに凄い人居たの? 何で、今まで人前に出てこなかったの? こんな凄い霊的な力があるのに?』と、まるで 表現は悪いが、宝物を見つけた子供のようにはしゃぐ姿が、余りにもクールで冷たいと噂されていたMr.Nさんのイメージを一変した。本当は、この方は純粋で素直な人なんだな~と感じた一瞬だった。そして、その日は何か二人に新しい方向性が示された気がしてならなかった。Mr.Nさんに、霊的な覚醒が始まったように感じた。そして、Mr.Nさんは帰って行きました。