陳さんのこと | 西尾浩史のブログ

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元kamekichihiroこと西尾浩史と申します
先祖の産土から採ったペンネームです
簡単な経歴を申し上げておきます
中部地方某県生まれ
学歴は以下の通りです
国立大学附属小学校、同中学校卒
地元高校進学後、国立大学卒業
経済学学士、土壌医
元金融機関職員です

陳さん、久しぶり

 

おぅ

元気かね

 

毎日暑いね

死にそうだよ

たまには様子を伺いに行かなきゃと思ってね  

 

ハイカーイーだ

あいかわらずだよ

 

だけど陳さんもよくやるね−

正月以外休み無しで

365日朝から晩まで

信じられないよ

 

にんにくのお陰だよ

毎朝一個

必ず食べてるよ

 

習近平、すごいね

あんなに、もうだめだだめだと言われ続けて

まだ生きてるよ

にんにく食べてるのかね〜

ふう〜

とりあえず、餃子と紹興酒ロックで

 

はい

わかりました

典子さん

この方に、お絞りとお冷を持ってきてください

 

こんにちは

お久しぶりです

どうぞ

 

どうも

お元気そうで何よりです

 

 

実は、先々月に店に寄った時陳さんの体調が明らかに悪そうで、ずっと気になっていたのだが、今日こそは行かなければと思い寄ったのだ

 私の眼の前ではいつもの通り、手際よく中華鍋を操る年老いた男の姿が映っていた

元気そうだった

 

 

陳さんは戦前大陸で中国人の父親と日本人の母親の元に生まれ、戦後親子で日本に移り住んだ一家の長男である

高卒で横浜に修行に出て以来、父親の生まれ故郷の四川料理をメインに腕を振るっていたが、地元で妻になる女性と知り合ってからは自分の店を持ちほぼ休み無しで一年中店を開けてきたのだ

 

 

実は、最初私がこの店に寄ったのは食事をするためではなかった

確か今頃の真夏の晩、近くにあるはずのジャズライブの店の場所が分からずに迷った末、道を訊きに立ち寄ったのだ

実はその時、私が店の引き戸を開けたまま道を訊こうとして陳さんに怒鳴られている

せっかくエアコンを付けているのに、すぐ戸を閉めろと言われたのだ

その時お詫び代わりにラーメンを食べたのがこの店に立ち寄るようになったきっかけだった

もう、十年近くだろうか

思えば不思議な縁である

 

本当の所、私が陳さんに会いたくなるのは、この人と交わすたわいない会話が楽しいからだ

駅前の路地裏で店を開け今まで何万人のお客さんを迎えたか知れないが、この人の人を観る眼の確かさには驚かされる事がある

加えて、奥さんを呼ぶ時にでさえ必ずさん付けで呼び、他人を見下す姿勢を全く見せない人柄にも魅了されている

 もう何回通ったのか分からないが、互いの過去について探るような会話は避けながらも、いつの間にかポツリポツリと打ち明け話をするようになっていた

 

 

陳さん、この前気がついたんだけど

陳さん、って人前で呼んじゃ悪かったのかなぁ

今まで気安く呼んでたけど

 

いやぁ、そんなこたぁ無いよ

この歳になって

今更、そんなこと気にならねーよ

 

そうか

中国人はたくましいなぁ

羨ましいよ

 

 

 

店を出て駅に向かう道すがら、奥さんがキャベツを買って戻る自転車とすれ違った

 

 

あ〜

どうも

 

どうかお二人ともいつまでもお元気で