以前より何度となく書いているが
私はネットで怪談を聴くのが趣味
である。 今日もパソコンの前に寝
転び、軽く目を閉じて怪談を聴い
ていた。 趣味と呼べるほど聴い
ているので、知っている怪談も多
くなったが、初めて聴く話に当たる
と、まるで宝物を見つけたかのよ
うな喜びを覚える。 この日、聴い
ていた怪談は初めての話で、しか
も怖い。 私は、喜びを噛みしめ
つつゾクゾクしながら聴き続けた。
話しも後半に差し掛かった時であ
る。 突然、私の左側、耳のすぐ近
くで、ギ、ギギ・・・、バチッ！ という
大きな音がした。 慌てて目を開け
音の鳴った方へ視線を向けると、
ギターが立てかけてある。 音は
ギターから鳴ったようだ。 傍らで
寝ていたサビを見ると、目を丸くし
後ずさりしている。 サビにも聞こえ
たのだ。 パソコンからは怪談が流
れているが、もはや私の耳には入ら
ず、私はギターを凝視した。 そして
恐る恐るギターの弦を1本ずつ指先
で触れていった。 すると、3弦目が
切れていた。
ギターを弾いていて、細い1弦目
が切れることはあるが、触れてもい
ないギターの3弦目が切れることが
あるのか・・・。 いや、ある。 ある
だろう。 私は初めての経験だが、
世界は広い。 ひょっとすると、触れ
ても無いギターの、いちばん太い
6弦目がボインッ！ と切れたとい
う経験をされた方もいるかもしれな
い。 要はタイミングである。
怪談を聴いている時に、稀にある触
れてもいないギターの弦が切れた
というだけである。
私は、恐怖心を抑える為、こう思う
ことにした。 そして、さらに恐怖心
を抑える為、サビを見た。
サビは、先程から音の鳴ったギタ
ーではなく、ここから怪音がした気が
する・・・、という表情で、ギターの前
に置いてあるダウンケットの下を警
戒しているのである。 サビのボケっ
ぷりには呆れることが多いが、こうい
う時はホッとする。 そんなサビの姿
に私の緊張の糸も、ボエンッ！ と
切れ、そこじゃないここだ・・・、と、声
をかけた。 サビは、へ？というよう
な顔をしていた。
私は、ネットでギターの弦を注文し、
この日は怪談を聴くのを止め眠りに
ついた。 午前4時の出来事。
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こちら → 「タイミング」
亀久
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