ムリヴァイには私の美しい家がある
その場所は私の心から離れることがない
この家の美しい姿が目に浮かぶ
滑りやすい床があって
逃げ出したあなたは誰の子
大きく厚い雲の塊の目の中には稲妻
誰がそれを喜ばないだろうか(誰もが喜ぶ)
たくさんの鳥たちに囲まれて
私の想いはそこへといざなわれる
鳥たちが喜び集うその場所へ
お話は語られた
ムリヴァイには私の美しい家がある
チャールズとダニエル・ポキパラの二人によって書かれたこのメレは、アラワイ河口の近くにあった、彼らの家について歌っている。
その家の床は磨かれ、きれいに掃除がされた心地よい家だったのだろう。
どうも居心地のよいこの家に人々はたくさん集まってきたようだ。
ところで、ムリヴァイという言葉は何を意味するのだろうか?
辞書を引いてみると、「川、河口:(高潮で砂州の後ろ側などに海水が入り込んで大きくなった)、河口近くの淵」(『ハワイ語の手引き』千倉書房)とある。
ハワイ語では、ワイという水が島の斜面を流れ落ちていく間のそれぞれの場所で、それぞれ細かく名称をもっている。
まず、水源は「ポオ(頭)ワイ」と言い、山の斜面を流れる水は「カヘナ(流れる)」または「カハワイ(小川、流れ)」と呼ばれ、水路となる。
両側の堤防は「カパナ(はずれ、へり、境界)・ワイ」、または「カエ(淵)・ノ・カ・ワイ」、もしくは「イカナ・ワイ」と呼ばれ、川の中を流れていく水は「ホロモク(急流)」、または「イヒアカラ(激しい流れ)」という。
そして、水が海にゆるやかに流れ込む場所がこの「ムリ(遺跡)ヴァイもしくはワイ(水)」なのだ。
ムリヴァイが海に接するころが、「ヌク(嘴)・ムリヴァイ」、カワハイの河口は「ヌク・カハワイ」と呼ばれる。
崖の上から流れ落ちるのは滝、「ワイ・レレ(飛ぶ)」、落下中に水が分れる場合、「ワイヒ(聖なる血)」、「カスケード(小さな滝)」と呼ばれる。
崖を越えて、落下中に水が吹きあがるような「クル(ぽたぽた流れる)・マカリイ(小さな)」の場合は「フナ(きわめて小さな)ワイ・レレ」、または「ワイ・プヒア(吹かれる)」、「ワイ・エフ(水しぶき)」と呼ばれる。(サミュエル・カマカウとケパ・マリー、ハワイの歴史家)。
ハワイのムリヴァイには二つのタイプがあり、ひとつは河口であり、もうひとつは地表に流れが無いが、地下水の湧出が多い場所である。
河口、湾、港、入り江、ラグーンなど、多くの呼び名があるが、ムリヴァイとはマウカ(山側)とマカイ(海側)、森と海という2つの主要な生息地をつなぐ移行地帯のことなのだ。
ここは、陸地にある小川と海の間にある汽水域のことで、さまざまな種類の魚や鳥、植物などの生物多様性を育み、小川が海に流れ込む前にろ過する役割も果たしている。
海が荒れて漁船が出られなくなると、ハワイの人たちはそこで、アワ(サバヒー、ミルクフィシュ)、アウア(むろあじ)、アホレホレ(ハワイ固有種、ハワイアン・フラッグテイル)などの魚を獲っていた。 (マリー)
「家族は小川やムリヴァイでオオプ・ナケア(固有の淡水魚)やアク(カツオ)、オパエ(小エビ)を漁った。ムリヴァイにはオオプ(カワアナゴ科、ハゼ科、イソギンポ科の魚の総称)がたくさんいて、頭はこのように大きかった(握りこぶし大)。
若いアワ、ボラがたくさんいた。」 (チュン、デイビス; マリー)
このような河口生態系の身近な例としては、オアフ島のカーネオヘ湾、マウイ島のケアリア池、ハワイ島のワイピオ湾、カウアイ島のワイニハ湾などがある。
ハワイの人々にとって、ムリヴァイとはずいぶん身近なものであったのですね。
ポキパラ・ファミリーの話に戻るが、ムリヴァイで獲った魚を美味しくお料理するお母さんがいて、人々はそれも楽しみに集まってくるのかも、と妄想は膨らむ。
♬ Muliwai by Na Palapalai
Muliwai, Images of Old Hawaii, by P Young