アマチュア棋士は大きく2つのタイプに分かれます。すなわち、「体で覚えた将棋」と「本で覚えた将棋」です。この言葉、聞いたことがありませんか?
「本で覚えた将棋」のタイプは、定跡に明るく、筋が良いといった特徴があります。一方、「体で覚えた将棋」のタイプは定跡はそれほど詳しくはないが、(将棋の)腕力があり、終盤の競り合いに強いといった特徴があります。
この2つのタイプのアマチュア棋士同士が対戦したとします。棋力は同程度だったとして、勝つのはたいてい「体で覚えた将棋」の方です。なぜだと思いますか?
私は、両者の差は「大局観」にあるのではないかと感じています。「本で覚えた将棋」は、定跡形には力を発揮できるのですが、ひとたび定跡形から外れると、どう指したら良いのかわからなくなってしまいがちです。また、定跡自体を忘れてしまうことだってあると思います。一方、「体で覚えた将棋」は、定跡形だろうが何だろうが、直感が働き、指し手が自然に急所のところへ行くようなところがあるのです。実戦は千変万化で、事前に想定していた手順で進むことは少ないのです。そうした未知の局面で、どう対応していくのが良いのか?それを自力で解決していかなければならないわけです。
今回のテーマについては、非常に参考になるお話が、元・プロ野球選手で世界の盗塁王であった福本豊さんの動画チャンネルで展開されていました。対談の相手は落語家の笑福亭鶴瓶師匠です。長い動画ですが、私が皆さんに見ていただきたいのは29分54秒~34分37秒のところです。福本さんが「らくごのご」という番組で落語に挑戦することになり、一生懸命練習して、セリフを覚えたものの、お客さんの前に出てお辞儀をしたところで頭の中が真っ白になってしまったという思い出を語っています。これに対して、鶴瓶師匠は、覚えようとするから忘れるのだというようなことを言っています。そして、プロの落語家はセリフを体の中に入れるようにしているので、どんなアクシデントがあっても対応することができるのだと言っています。これって、「体で覚えた落語」と「本で覚えた落語」の違いということではないでしょうか?
ぜひ、ご覧ください。
以下、つづく・・・。