「お話その四」
大阪の道場で
「だいたい、大坂まで来て僕は何をやってるんだ?!」
と困惑している新海老人。
前回をまだ読んでいない方はこちらです。「お話その参」 》 》 》
そっと周囲の内弟子の方々の様子をうかがうと、
どうも彼らも新海老人とそう大して違わない様子です。
要するに彼らもできないでいるという感じ。
ところが誰も先生には質問しません。
無駄口をきかないのはこの手の稽古では当たり前だと思いますが、
それにしてもここは先生以外、誰も口すらきかず、ただ黙々と
与えられた課題に取り組んでいます。
後々わかったことですが、
口を利かないのはここの風潮だったのでした。
(というか、質問をしたくても質問できないという雰囲気が
ビシーッと形成されていたのでした。)
しかしワラをもつかむ心持ちで勢い込んでやってきた新海老人は、
「あの~、わからないんですけど・・・」
「これでいいんですかね?」と質問に継ぐ質問。
我ながら、「まるで軽薄な人間に見えているのでは?」
とすら感じましたが、めげてはいられない。
とにかく何かをつかんで帰りたいという気持ちが勝っていたのです。
しかし結局は何一つコツがつかめないまま
(それどころか何もわからないまま)稽古は終了。
こうして初日を終えたのでした。
肝心の体はどうだったかというと、
特に大きな変化はありませんでしたが、
何か今までとは違った感じです。
それまで固まって動かないところばかり意識して
しまっていたのが、稽古を通じて体の芯に意識を集中し、
そこを感じようとしていたのがよかったのかもしれません。
帰りは気分的に随分と楽に帰ることができました。
「僕は、自分にとって何かすごく大事なことをやっている!」
という充実感が自分の中に残って、
大阪を後にすることができたのです。
あなたもこういうことってありませんか?、
頭ではまだはっきりわかっていないことが、、
からだに注意を向けてみると自分に必要かどうかわかる感覚。
このときの僕もそんな感じで、
直感的に(衝動的に?!)大阪まできたことを、
からだも「OKですよ!」と言ってくれてるように感じました。
この続きは「お話その五」へ続く
覚技ワーク主宰 新海正彦