アウェアネス~「動」のなかの深い静寂 | 覚技ワーク~注意の行き届いた自然体★新海正彦

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覚技(かくぎ)とは、さまざまな心理療法に、武術や音楽やシャーマン的テクニックを取り入れた、こころとからだに目覚めをもたらすトレーニング・メソッドです。

アウェアネス~「動」のなかの深い静寂

北米大陸のネイティブアメリカン達のあいだで、
現在では「アウェアネスの技術」と呼ばれている
伝統的な狩の方法があります。


心を平静な状態に保ち続けながら、視界を広く大きく広げ、
聴覚、嗅覚、体感覚などすべての感覚器官を繊細なレベルで
フル活用することによって、わずかな状態の変化から獲物の
位置や天候といった生命の維持にダイレクトにかかわる
大きな状況の変化を読み取っていたそうです。

この技術はたとえば動物の足跡一つから、
その動物の種類はや大きさはもちろん、
その地点を通った時の動物の
精神状態や健康状態まで読み取って
しまうほど繊細だったそうです。

すごいですねえ。

わたし達がこのアウェアネスの状態になると、
周囲への注意力がより高まったり、気持ちが落ち着いたり、
何かの気づきを得たり、危機的状況に陥ったとき冷静さを
保ちながら咄嗟の判断力を高めたり、などなど、
いろいろな可能性をもたらしてくれます。
だからぜひ身につけたいところですね。



アウェアネスを高めるワークは今はもうたくさんありますが、
その中の一つに「センサリー・アウェアネス」というワークがあります。

フロイトの弟子のウィリヘルム・ライヒや、
ゲシュタルト療法のフリッツ・パールズ、
そしてフェルデンクライスというボディワークの創始者達なども、
この「センサリー・アウェアネス」の影響を受けているようです。


このワークの内容はとてもシンプル。
歩く・立つ・座る・人と触れる・ものに触れるなど、
日常生活でごく当たり前に意識もせずやっている所作を、
改めてていねいに繊細に経験してみるというワークです。
要するに、感覚のおよぶ範囲を細かいレベルにまで
拡げるための練習をするわけです。

僕も以前、このワークを学んだことがあるのですが、
僕がやってきた武術に近い感覚を、また違う形で
味わうことができ、とても深い学びになりました。



参考までに、アウェアネスを高めるワークの一例をちょこっとご紹介すると、
もっともシンプルな方法のひとつとして自分の呼吸に注意を向けるワークがあります。

深呼吸しようとか、腹式呼吸をしようとかしなくてもOKです。
ふだん自分がしている呼吸の様子をこまか~く観察してみるだけです。


呼吸のワークって、もう本当によくいわれることですね。
呼吸なんて放っておいても自然にしているものだし、やろうと思えばすぐできる。
呼吸するなというほうが不可能です(死んじゃいます 笑)。

なのに、「呼吸」と言われた瞬間、「正しい呼吸法」というのが頭をよぎって、
身体が緊張しかえって深く息を吸えなくなって息苦しさを感じるようになってしまう。
これって本末転倒ですよね。

でもアウェアネスを高める呼吸のワークは、
今も言ったようにあくまでふだん通りの呼吸の様子を
観察するだけですから、緊張する必要はありません。
思い出したとき、いつでも気軽に試してみるといいと思います。