感染拡大を防ぐためにも、ウィルスについてよく理解して、納得し、協力しながら効果的な対策を取る必要があります。
九州大学大学院理学研究院教授・持続可能な社会のための決断科学センター長 矢野徹一教授の記事がわかりやすく書かれています。
以下、記事の抜粋です。
■ウィルスは増えて、進化する
ウィルスは例えると「不完全な生物」、「増える」「進化する」という生物らしい特徴を持っている。
武漢で動物から人に感染した新型コロナウイルスについては、世界各地ですでに300以上のゲノム配列が決定されている。
新型コロナウイルスが急速に多様化し、日本にはこのうち少なくとも3つの系統が進入し、進化している。
■解熱剤を使って発熱を下げると免疫の作用を弱める
ウイルスに感染した場合、私たちの体内ではさまざまな免疫反応が起き、約3日で抗体が作られ、ウイルスの増殖を抑え込む。
発熱は、抗体生産に至るまでの免疫系の反応速度を上げるための仕組みであり、
したがって、発熱した場合に解熱剤で熱を下げれば、免疫の作用を弱めてしまう。
ウイルスの増殖を抑え込むうえで、近代医学は免疫系の力に遠く及ばないので、
発熱した場合、3日間は原則として自宅で安静にするほうが良い。
高齢者の場合、
「免疫力の低下」が起きていることが多く、その場合には医学によって何らかの治療が必要。
■多くの予防法を併用して防ぐ
◯「石鹸」で手洗い
石鹸の分子には、水に親和性が高い部分(親水基)と脂質(油)に親和性が高い部分(疎水基)があります。このため、水と油を混合し、物体の表面から油がはがれやすくなる作用を持つ。
コロナウイルスの遺伝物質(RNA)は脂質二重膜で覆われており、石鹸の分子は脂質分子にくっついて水と混合してしまうので、この作用によって脂質膜が破壊される。
◯エタノールで拭く
エタノールには脂質を溶かす溶媒としての作用があり、この作用によってウイルスの脂質膜が溶解する。
しかし、手が汚れている場合には効果が低いと考えられている。
簡単に入手できる点でも、石鹸による手洗いを励行するのが最善。
■多くの予防法の併用が感染リスクを減らす
しっかり手洗いをしても、手についているウイルスをゼロにはできない。
マスクをしても、口や鼻から体内に入るウイルスをゼロにはできない。
うがいをしても、のどについたウィルスをゼロにはできない。
しかし、これらの方法を併用することで、感染リスクを大きく減らすことができる。
仮に、手洗い、マスク、うがいに、体内に入るウイルスを半分に減らす効果があると考えてみると、これら3つの方法を併用することで、体内に入るウイルスは8分の1に減る。
感染予防は、複数の方法を併用すべき。
■感染拡大を防ぐために
「人と人が至近距離で会話する場所やイベントに行かない」こと、「軽い風邪症状でも外出を控える」ことが重要。
また、時差出勤や自宅でのテレワークは、感染の機会を減らすうえで有効。
これらの感染防止対策に加えて、よく睡眠をとる、バランスのとれた食事をする、適度な運動をする、
生活のリズム(食事の時間、起床・就寝の時間など)を守る、深酒をしない、という健康管理をしっかり行うことで、仮にウイルスが体内に入った場合もウイルスの増加を抑制できる。
■ストレスをためない
ウイルス感染をおそれて神経質になり、ストレスをため込めば、かえって感染のリスクを高めることになる。
■感染拡大を許せば死因の上位になる可能性もある
現在の死亡原因は1位ガン、2位心疾患、3位肺炎
このまま新型コロナウイルスの感染拡大を許せば、第3位の肺炎をうわまわる脅威になる可能性がある。
■市民の協力行動で、感染リスクを減らす
感染拡大を防ぐには、多くの市民の協力行動がとても重要。
みんなが少しずつ感染リスクを減らせば、集団全体の感染リスクは相乗的に減る。
いたずらに不安にとらわれず、自分自身への感染リスクは十分に小さいことを冷静に理解し、
そのうえで感染拡大に必要な協力行動をとることが、いま私たち市民に求められている課題。
『「不安」は大敵、科学的知識で感染リスクを減らす。』
〜新型コロナウイルスから身を守る本当に正しい撃退方法〜