第8回 調略
北条は勢いに乗っている。
旧武田領を一気に呑みこもうとしていた。
上杉についた昌幸は
その裏で
信繁に密命を与えていた。
そのまま訳すとかなり抽象的な表現になってしまうと考え、ことばを補いました。
勢いに乗ったのは、神流川の戦いで滝川軍を破ったから(だけではないと思いますが)としました。
領はdomain、呑みこむは「併呑する」から探しabsorbに行き着きました。
余談ですが、どちらの単語も実は生命科学の研究室ではお馴染みのものです。Domainは、タンパク質分子などで役割が異なる部域を指しますし、absorbは溶液に含まれる物質の濃度を調べる際に、試料に紫外線などを照射して吸収(absorb)を測るからです。どの波長の光を吸収するかなどは、absorption
spectrumなどといいますし。
「上杉についた昌幸」では簡単すぎると思い、そこに到る状況(滝川の撤退)を加えました。また、意訳に過ぎますが、彼の上杉への恭順は策略の一部であることは前回語られていましたので、いくつかゴテゴテと言葉を付け加えました。
おかしな所があればご指摘ください。