仮想世界 | 架け橋人の会―韓日翻訳グループ

架け橋人の会―韓日翻訳グループ

ミレ韓国語学院が主宰する韓日翻訳グループ。メンバーはTOPIK6級合格以上。

 

「架け橋人の会」の秦です。

 

 私は、生来ののんびりした気性もあいまって、昔ながら馴染みのあるものや、ほっとするものが好みです。小説やドラマもほっこりするものが好きですが、最近、どこか物足りなさがありました。

 

 架け橋人の会に入る前に、韓国語の原書を読み始めるなかで、日本語に翻訳されていて評価の高いものから読むことにしました。そのなかでキム・チョヨプさんの「わたしたちが光の速さで進めないなら」を読みました。

 

 そのとき、これは「私にとってまるで『コロナ禍』のようだ」と、もやもやとした刺激を受けました。SF小説や映画、バーチャルゲームなど、それまでまったく縁がなかった未知のものから受けた刺激というより、主人公がずれた時空間に前触れなく立たされる設定に、自粛生活のなかで移動することのない生活をしていたときの感覚につながるものを感じました。

 

 ライブ配信、オンデマンド配信…空間を超えて時間を共有し、ときには録画保存して時間をも超えていく。時間と空間を変えてしまう仮想世界には、自粛生活のなかの恐怖の背後にある手ごたえのなさ、ふわふわした感じと通じるものがあって、私は、この作品を通じてSF作品の未知の面白さを知ることになりました。時空間が変わってしまい、目の前が通用しないことだらけになってしまった苦しみや哀しみを、想像力が自由にしてくれる面白さにはまってしまいました。

 

 今年に入って、玄関の鍵のひとつが、鍵穴のなかで折れてしまい外から開錠できなくなってしまったとき(修理不可)に、一方の鍵を、指紋認証式のお手軽なキーロックに疑心暗鬼ながら変えてみました。すると、施錠の感覚がすっかり変わってしましました。

 

 不慮のトラブルが起きるまで、家族全員が指紋で玄関を解錠するなんて、ましては、そんな機械が翌日にはアマゾンで簡単に手に入り自分で設置できるなんて、思いもしませんでした。数か月経った今も、少し慣れない感覚が残っています(笑) 以来、ドラえもんの世界が、SFに登場するガジェットが、数年後、現実化する未来を想像して、子供のようにわくわくしています。

 

 最近は、アマゾンの「Upload」にはまっていますが、やはりテーマは命…生きる…愛…。限りのない命を生きる仮想世界から反対に、限りある現実世界を生きる心地よさが投影される醍醐味があり、しばらく、韓国語学習のベクトルもSF作品に向いていくことになりそうです。